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第1回 |
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間違いだらけのEC議論
カードウェーブ:97.8(A1-01) |
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通産省関連のEC実験もいよいよ始まり、その他の官庁プロジェクトも目白押しである。 一説にはこれらの役所関係の報告書は1プロジェクトあたり1〜2メートルにも及ぶのだそうで、予算に見合ったレポートとは電話帳15冊分位が指定されているそうだ。報告書の分量が受け取った予算で決まるとは、ちりがみ交換も顔負けのシステムではある。
全くの私見ではあるが、今のままの体制や視点でECを推進しても成果は恐らく期待できないだろう。そこには誤解や間違いがあまりにも多すぎる。ことインターネットのウェブに関する限り、日本は世界の孤児のように見受けられる。ウェブの世界で当たり前になってきたノウハウ、マーケティングの類が全く活かされていない。実験も結構だが、まずはECのマーケティングのマスターが先決であろう。 |
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本連載は主としてウェブのサイバースペースを前提にそこで必要なマーケティングについて述べることとしたい。そこでの議論とは
・リアルマーケティングとサイバーマーケティングとの違い
・ウェブ特有のマーケティングとは何か
・サイバースペースで重要なプレゼンスのマーケティングとは何か
・サイバースペースではどのようなマーケティングミックスが重要か
・ウェブ向きのビジネスモデルとは何か
・ウェブリテイリングの成功要件とは何か
・メイクマネー以外のマーケティング活用のシナリオとは何か
・サイバーマーケッターに必要な資質とは何か
等々にわたる予定である。
始めにお断りして置くが、筆者のスタンスは次のようなものである。
・ECに関して「いけいけどんどん」組を右側、「否定組」を左側とすると、筆者は真ん中からやや左に属する:いけいけどんどん組はEC推進の当事者であることが多いので、その話を聞いてもあまり役に立たない。一方否定派はただのヘンクツであることが多いので、話としては筆者のようなやや左翼のスタンスがもっともまともである。
・バーチャルは選択肢の1つに過ぎない:あたかもバーチャルがリアルを凌駕するような議論が蔓延しているが、バーチャルとはあくまで選択肢の増加であるととらえている。オンラインショッピングがリアルショッピングを凌駕するようなことはまず想定できないし、それであるなら、それなりの差別化の軸が必要である。
・ECのマーケティングとは心理学そのものである:ウェブのようなサイバースペースは本来的にユーザーフレンドリーな場ではない。アクセスするのは面倒だし、階層構造を有することも利用阻害の一因となっている。ここでの成功要件の大きなものの1つがサイバースペースでの購買心理のマスターであるのだ。この点でマーケティングと心理学は融合し始めた。
・決済屋、技術屋、セキュリティ屋が引っ込まないと、ECは進展しない:多くの関係者には怒られるだろうが、これらの当事者にはすぐにでも舞台裏に引っ込んで、側面援助に回って欲しいものだ。今の日本は彼らが全面に出すぎである。そのマーケティングセンスのなさ、マーケットセカンドの視点が、日本のECの順調な発展を妨げているといっても言い過ぎではない。ついでにいえば行政の関与も世界のインターネットの動きとは逆行している。
・ネットワーク社会の大原則はスモールイズスマート、スペシャルイズスマートである:今の日本のウェブでビッグであるところの大企業は結構間抜けな展開をしている。その証拠にECの旗振り役の1つである総合家電メーカーのホームページは一部を除いてはいずれも精彩がない。大体乾電池から原子力までを扱うような巨大企業が1つのトップページから情報を枝分かれさせていくことなどは、しょせん無理な話である。リアルワールドではそれなりに大事な「総合」や「ビッグ」はバーチャルの世界ではあまり光輝かない。こうしたネットワーク社会の大原則を日本の企業はほとんど理解していない。
・アメリカの事情は日本にはあまり通用しない:ことサイバービジネスに関しては、アメリカモデルのほとんどは日本では通用しない。ネットワーク社会の進展状況、市場の質等があまりに違いすぎるからだ。
以上の視点は日本ではかなり少数意見であるので、読みたくない人は始めから読まないことをお勧めする。
●ウェブに蔓延する誤解とは何か
それでは今回はまず日本のEC関係者に蔓延する誤解を整理してみることにしよう。ここが払拭されない限り、ECも絵に描いた餅であるからだ。
・ネットコミュニティ論の誤解
ウェブに関する誤解の最たるものがこのネットコミュニティ論である。一部のシンクタンクや広告代理店はこのネットコミュニティ論が大好きである。それは要約すれば次のような論理から成り立っている。
「企業のホームページに関心のあるユーザーがアクセスすることにより1つのコミュニティが形成される。これが資源となり、オンラインショッピング等のサイバービジネスの展開が可能となる」
これは一見もっともらしく、代理店等が企業から法外な予算を獲得するためのへりくつとしてはなかなか説得力がある。だがネットコミュニティの形成とサイバービジネスの成功とはまず無関係であると断言する。
まずアクセスしてくる顧客によりコミュニティが形成されるという議論自体矛盾がある。
先般日経リサーチが発表した調査結果ではインターネット利用者がホームページを見る目的は次のような順位になっている。
1位:懸賞・プレゼント
2位:趣味
3位:製品・サービス
4位:ニュース
5位:データベース
6位:ショッピング
この結果は実に意味深長である。利用目的のダントツは懸賞やプレゼントであり、日本ではアクセス数狙いの無益なプレゼント攻勢がウェブの利用目的をねじ曲げてしまっている。結果的にプレゼントや懸賞狙いでアクセスしてくる利用者が自社の顧客資源として意味があるかということになるわけだ。顧客として価値が無いとは言わないが、それは決して歓迎すべき顧客層ではない。これらの利用者集団とのコミュニティを形成してもほとんど意味がないのは自明の理である。
仮に百歩譲って何らかのコミュニティなるものが形成されたとしよう。これがビジネスの資源となるかはこれまた別問題である。何故ならウェブのショッピングを例に取れば、それはダイレクトマーケティング以外の何物でもないからだ。
ダイレクトマーケティングとは顧客リストを基盤とするビジネスである。そこでの成功要件とは「自社でモノを買ってくれるアクティブハウスリスト」をいかに集めるかである。プレゼント狙いのリストは顧客リストとしては価値が低く、ビジネスの基盤にはなりにくい。またアクセス顧客とモノを買ってくれる顧客とは一致しないことが多い。その証拠に月間アクセス数が数百万人を超えるモールは数多くあるが、肝心のショップの売り上点数は1日数点程度であるところも多い。
アクセス数からみれば立派なコミュニティが形成されているようにも見えるが、それとビジネスの成否とはほとんど無関係であるのだ。まずはネットコミュニティなる訳の分からない理論に振り回されることなく、ビジネスの成功確率を高めたいのなら、アクティブハウスリストをこつこつ集めることに視点を移した方がよい。ウェブでの商品販売とは単なる「ネット通販」以外の何物でもない。ネットコミュニティ論も結構だが、まずは小売業、通販としての形をきちんと整える方が先決であるはずだ。
・アクセス数至上主義の誤解
アクセス数が以外と意味がないのは前掲のとおり。アクセス数を競い合うより、顧客として意味のある層とのリレーションの構築を目指すべきである。インターネットとは従来の価値観がかなり逆転する世界であり、スモールイズスマート、スペシャルイズスマートなどはその好例の価値観でもある。
ところがことアクセス数に関する限り、質より量の議論が前面に出てしまい、従来のマスマーケティングの視点が幅を利かせている。アクセス数は広告収入の算定基盤にはなるが、その他の意味はないと見るべきだ。ましてアクセス数の多寡とビジネスの成否が相関しない以上、アクセス数至上主義は弊害をもたらすことの方が多い。
・ビジネス効率に関する誤解
サイバースペースはリアルワールドに比べ、ビジネス効率が悪い場であることを前提にすべきである。それは次のような理由による。
・商圏がない→あらゆる小売業の前提は商圏から成り立っている。商圏があるから、多店舗展開も可能となる。ウェブでは多店舗展開は原則不可能で、そこでの規模の拡大には限界がある。今をときめくアマゾンコムも年商100億円程度が1つの限界であろう。ここをブレークスルーするシナリオが今のところみつからない。
・アクセス数対比購買確率が低い→アクセス数とは店の前を流動する流動顧客数のような位置づけである。だがこれが来店客となりさらには購買客となる歩留まりが非常に悪い。 これは今のところ、店側の売る力が弱く、吸引力が弱いことも原因である。まずは小売業の基本に立ち返り、店のパワーをつけることが先決だが、それにしても購買確率の低さを何とかしないと、リアルビジネスに比べての効率の悪さが際だってしまう。
・リピーターになりにくい→ウェブでのビジネスがダイレクトマーケティングである以上、そこでの成否は「自社に金を落としてくれる顧客をいかに作るか」に集約される。そしてリピートオーダーカスタマーを作ることこそ、商売の基本である。
今の日本の状況は、ビギナー向けのこけおどかしのような3Dや動画の技術がてんこもりのモールがもてはやされたりしている。だがこの種のものはリピーターにはほとんど価値がないものだ。1度購入した顧客をいかにリピートさせるか、リピーターが使いやすいシステム(親切な検索、素早いナビゲーション・・)をいかに作るかが、先決なのだ。さらにはリアルの世界では当たり前なFSP(フリークェントショッパーズプログラム)といったものも必要だろう。
・購入単価の低さ→今のウェブはファッション販売には向かないメディアだ。解像度はぼけたテレビレベルで、また質感やディテールの再現にも限界がある。だがファッションが売れ始めなければ市場は伸びない。さらにファッション販売では当たり前のコーディネート販売、関連販売が行いにくい。さっきのブラウスとこのスカートといった当たり前の購買行動が行いにくいのだ。米国の優れたカタログビジネス企業は関連購買の実験を必死になって行っている。こうしたノウハウはファッション商品をマルチメディア的に見せることよりはるかに重要な課題である。こうした基本的な商品プレゼンテーションのノウハウ、客単価を高めるノウハウが構築されなければ、ビジネスの効率は低いままである。日本企業はこの点での考察が実に甘い。
・決済問題の位置づけ
これに関しては言うまでもないだろう。決済問題は重要な課題であるが、すべてではない。一部にはウェブのビジネス、とりわけオンラインショッピングの成長には「決済の安全性の確率が不可欠である」との議論が見受けられる。これは明らかに間違いである
人は買いたいものがあれば何とかして金を払う物だ。決済システムの確立は利便性を増大させる重要な要素ではあるが、財布が開くこととは別問題としてとらえるべきだ。情報サービスやデジタルコンテンツの販売には決済問題の解決は不可欠で、それはビジネスの成否を決める重要な要素である。だがリアルの世界に物流を依存するショッピングでは、決済の完結性はそれほどのメリットにはなりにくい。結果的にそれは決済方法の選択肢の多様化の中でとらえるべきであり、顧客サービスの1つでしかない。その前に検討すべき課題がたくさんある。
またICカード議論が盛り上がっているが、これも考えてみればおかしな話である。ブラウザーでの対応が基本になりつつある中で、外部デバイスであるICカードがネットワーク決済の主力であるとのシナリオは描きにくいはずだ。もしICカードが主役となるのなら、それはリアルとバーチャルをつなぐ決済ツールとしての位置づけが確立することでしかない。それにはまだ時間がかかると見るのが妥当だろう。日本では思惑もからみ、決済問題が前面に出すぎ、それが市場の順調な発展を妨げている。
・双方向性の活用度合い
ウェブビジネスの成功要件は次のようなものであろう。
・サーチプロセスがわかりやすいか
・双方向性の活用度合いが高いか
・サイバースペースならではの新しい価値を創造しているか
このサーチプロセスに関しては別の機会に取り上げるとして、双方向性についてはあまりに誤解が多い。ウェブといえばその優れた双方向機能が話題になる。だが本当に活用している企業はごく少数である。日米の企業のホームページを比較して最も力に差のある部分でもある。日本企業のホームページは双方向性こそウェブの本質であるとの認識に立っていない。結果的にそのバリエーションも少なく、双方向のリレーションの程度も表面的でしかない。
はやりのone to oneにも誤解がある。one to oneの本質は実はパーソナルタッチの実現である。無理矢理画面カスタマイズを行うようなメカニカルなone to one(ブロードビジョンが代表例である)は実は精彩がない。 双方向性をどう演出していくのか、今のところアクセス数狙いの懸賞やプレゼントが前面に出てしまい、ウェブの本質が見失われている。
・日米の市場構造の差
一部のシンクタンクでは、インターネットユーザーの調査を行い、「消費者として魅力的な層である」と結論づけているが、これは希望的観測であろう。どうみても今の日本のインターネットユーザーは、一般市場をリードするような層で構成されていない。それは
・理科系オタク(時間、金、センスともに無し)
・女性のキャリアウーマン層(全体の1〜2割:購買力はあるが、マーケットとしての広がりがない)
・SOHO(筆者のようなグループ。時間はないが金はややあり。ただしまだマーケットが小さい)
・一般層(主婦、シルバー、学生等。急速に拡大しつつあるが、まだビギナーマーケットを構成している)のように類型化される。一方アメリカのインターネットユーザーは女性比率が既に4割を越え、一般市場の構成に近づいている。その層は
・理科系オタク(存在するが既に少数派)
・SOHO(一説には4800万人のホームワーカーが存在する)
・マージナルリッチ
に分けることが妥当だ。最後のマージナルリッチとは変な言葉だが、最近アメリカでは金持ちマーケティングがはやっており、金持ちをスーパーリッチ、ミドルリッチ、マージナルリッチに分けている。マージナルとは底辺のことで、金持ち層の下位グループなのだ。とはいえ年収は10万ドル程度で、奥さんも職を持っていることが多く、2人合わせれば20万ドル程度の年収もざらである。彼らは消費者としてスタイリッシュで、かつ時間は金で買うタイプだ。これがアメリカのウェブユーザーのコアとなっている。
このコア層が日本には存在しない。この質の違いを理解せずに、アメリカの後追いでコトが進行すると思っている人があまりに多すぎる。
以上ECをとりまく誤解の一端を取り上げてみた。あまりに無理、無駄が多く、マーケティング不在であることがおわかり頂けたと思う。次回以降各論を取り上げるが、素直にマーケットファーストで考える視点がとにかく必要となっている。 |
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