|

|
|
|
|
第2回 |
|
バーチャルモールの生き残り策
カードウェーブ:97.10(A1−02) |
|
|
|
日本では消費者向けECというと、バーチャルモールの構築とそこでの決済実験が主流となっている。企業側でもモールに参加することが1つのECへの手がかりとの認識が見受けられる。果たしてこれが正しい道なのか、そこにはいくつかの問題がある。
今回はモール問題を取り上げてみよう。 |
|
|
|
●モールに対する誤解が目立つ
日本と米国とでの認識の大きく異なるものがこのモール問題である。アメリカの調査結果を見ると、ショップにとってのモールとは、ネットプレゼンスを高めるための1つの手段でしかない。バナー広告、検索エンジンへの登録といった要素と並んでモールが位置づけられている。特に売れているショップにとってはモールとは1つの広告でしかなく、逆に売れないショップとは1つのモールのみに登録している店であることが多いのだ。
少なくともモールはショップ、あるいは企業にとっての手段でしかなく、目的ではない。
この点日本では大きな誤解がある。特にカード等金融関連の業界では、何らかの決済システムを開発し、それを売り物に「加盟店」を集めさらには「会員」を集めるという手法をサイバースペースでも実施しようとしている。結論からいえばこれは明らかな間違いである。 これはリアルの世界での手法であってもバーチャルでそのまま通用する手法ではない。事実この種の手法を推進しているところは、加盟店はそこそこ集まっても、会員はそれほどは集まらない。何故ならば、決済システムの共通性を軸に店舗が集合しても、それはほとんど意味がなく、小売り集積としても魅力が薄いからだ。まずはこの点の認識を改める必要がある。
●ウェブのビジネスモデルとモールの必要性とは
全く個人的見解であるが、筆者は将来的にはウェブの場でのモールの必然性は低いと考えている。少なくともモノを売る場としてみれば、他に様々な形がある。ショッピングモールとしての存在価値は、コンセプトが明確、かつ機能が特化した一部の形になると見ている。
お断りしておくが、これはウェブショッピングの可能性を否定しているのではなく、その受け皿としてのモールの役割を限定的にとらえているに過ぎない。
そこでまずウェブをビジネスのフィールドとした時のビジネスモデルを見てみよう。ここには3つの種類がある(図)。
(1)単独モデル
まず第一は単独型である。ここで商圏のないウェブという場の特性を考えて頂きたい。売り手と買い手がダイレクトに結びつくのがサイバースペースの特徴ではあるが、それは一体何を手がかりに結びつくのか、という点である。売り手は今のところ日本では4千数百店である。一方ユーザー数は600万人弱である。この数はすぐにでも1万店対1千5百万人位にはなるだろう。だが売り手と買い手の数が増えれば増えるほど、お互いがハッピーに結びつく確率は低減してくのだ。これがウェブの本質である。今のところお互いの出会いをサポートする仕組みとは、検索エンジンかモール位しかないからだ。無数に増えつつある売り手と買い手の数に比べ、それを結びつける仕組みづくりが圧倒的に遅れているのが現状である。この単独モデルがいくら増加しても、ビジネスとしての飛躍的な成長は難しいだろう。
だが逆説のようだが、ウェブビジネスの市場が飛躍的に拡大するとすれば、この単独モデルの成長如何にかかっている。
例えば人は「そろそろ秋になったから長袖のシルクのブラウスが欲しい」といった商品ニーズを持つ。このニーズに基づく商品探しを「サーチ&ファインド」と呼ぶ。このニーズにウェブが応えられるようになれば市場は飛躍的に伸びる。具体的にはこれは単独モデルの売り手と買い手との間に、「商品ファインダー」が介在すればよい。買い手が素直なニーズを入力し、それを「商品ファインダー」がウェブ中の店をかけめぐって探してくればよいわけだ。結果的に長袖のシルクのブラウスがどこに売っていて、それはいくらであるかがわかることになる。もっともこれは売り手が自分の商品の商品情報を入力するという前提付ではあるが。
既にこのシステムは「ギフトファインダー」という名称でトライアルが行われている(デジタル・ビジョン・ラボラトリー:http://cm.dvl.co.jp)
とにかくこのシステムが普及してくれば、出会いの場としてのモールの必要性は低減してくることになる。
(2)マッチングモデル
ウェブのビジネスの形として最も有望なのがこのマッチングモデルである。売り手と買い手とをつなぐ仕掛人が介在し、それが商品やサービスの橋渡しを行う。具体的には仕掛人は売り手の商品をデータベースに入力する。一方買い手は、自分のニーズを素直に入力し、それにマッチするものがデータベースを通じ、提供される仕掛けである。
この具体例は、リクルートが行っているビジネスで、「住宅情報」「旅行情報」「中古車情報」「求人情報」といったものがそれに当たる。アメリカでは有名なauto by telの事例があり、自動車流通のネット移行を促進した立役者でもある。auto by telでは例えば「新車で、ボルボのワゴン、色は赤」といった希望を入力する。するとこのニーズに見合った商品とディーラー名が提示され、本当に商談の意思があればその旨伝える。するとそのディーラーから電話がかかってきてここからが商談の始まりである。
このマッチングモデルは最も有望であるものの、少なくとも物販に関しては日本では既存の流通システムのフリクションが避けがたい。中古市場、サービス市場でまず実用化している形でもある。
(3)モールモデル
モールモデル又はハブモデルである。仕掛人が様々なハブ機能を提供することが前提である。モールに必要なハブ機能とは様々で、その一端は図表2に示すとおりである。このハブ機能が存在することが、サイバー空間でモールがモール足り得る理由でもある。
単に決済システムを具備しただけでは、それは条件の1つを満たしているに過ぎず、消費者にとっても、恐らくはテナントにとっても魅力の薄いものになる。
●日本型モールのエラー
(1)無目的な企業集合
日本のモールは世界的に見るとかなり特異な形をとっている。それは次のような内容である。
・本来個別企業の単独の展開の場であるウェブで、モールに入居することが目的化している
・欧米のモールはかなり現実のショッピングモールと手法が接近しているが、日本は小売業としての視点が不在
・企業の無目的な集合を「モール」と称する傾向が目立つ
・消費者のニーズとは関係なく企業グループの集合、系列企業の集合といったコーポレートモールが目立つ。
・専任のマーケッター、アートディレクターが不在で、マーケティングセンス、デザインセンスに欠ける
日本では原っぱのような空間に企業の看板が無目的に集合しているいわば「原っぱ型」あるいはビルのような空間に企業名が提示された「雑居ビル型」をモールと称している。またコーポレートモールに至っては、うれしいのはグループ企業だけであり、およそ消費者ニーズとは無縁の存在である。事実日本を代表する通信企業のモールは、子会社の花屋等のショップで構成されており、社員とてうんざりするだろうと思われるような出来映えである。
(2)デザインレベルの低さ
良いモールの条件を
・トップページでの情報性の高さ
・目的商品への最短経路の提供
・親切なインターフェース
・わかりやすい商品区分
・近道(検索)の提供
・シーカー(目的志向の人)、サーファー(ネットで遊びたい人)双方への吸引力の提供
とするならば、日本のほとんどのモールは落第である。検索が使いにくいこと、企業名主義であることから内容がわかりにくいこと、最短のナビゲーションで目的に到達しにくいこと、等の弱点を持つ。希望場所を見つけさえすれば、それをブックマークしておけば、人は簡単に次回からはそこにアクセスできる。となると下手なモールとは、売り手と買い手を隔てる「障壁」になりかねないことを理解すべきである。
(3)3次元仮想空間の矛盾
3次元仮想空間をサイバー上に構築し、そこでの「出会い」や「そぞろ歩き」を」売り物にしているモールもある。これも過渡期の姿の1つであろう。何故わざわざサイバー空間を歩かねばならないかの説明が付きにくい。また利用者がサーファーからシーカーへ移行しつつある中で、この種のモールはビギナーへの手がかりの提供の役割は担うにせよ、継続性に乏しいのが弱点でもある。技術が素晴らしいことと、人の購買行動、心理とマッチすることとは別問題なのだ。
(4)情報依存の弊害
モールの中には、テナントの意味ある集合形態を志向することを諦め、モールのハブ機能を「情報」に特化しようとする動きもある。フレッシュな情報で客寄せ、アクセス数確保を狙い、結果的にそれをテナントに「送客」しようとの発想である。
これも一見モールの方向性のように思えるが、モールの目的が情報発信であるならばともかく、テナントの売り上げ確保に置くならば、効率の悪い方法である。リアルのショッピングセンターや百貨店で「イベント」や「情報」が主役になることはないのだ。顧客政策の視点からみれば、情報目当ての客とショッピング目的の客との客層は違うととらえるのが常識である。
●モールの生き残りのシナリオ
筆者はモール否定論を展開するつもりはない。ただモールとはウェブにおける過渡期のビジネス形態の1つである可能性もあり、それがビジネスモデルの主役になる形は予想しにくいと言っているに過ぎない。
それではモールの方向性、生き残りのシナリオとは何なのか、検討してみよう。
(1)モールの形態
大きく分ければモールは3つの種類に類型化できる。1つは単なる電話帳のような機能を持つもので、それこそ何万店ものショップが入居しているような形態である。収益源は広告であり、アクセス数の多さ、手がかりとしての役割の維持がモールの存在基盤である。2万4千店ものテナントを持つインターネットモール等の例がある(ここは自動翻訳による日本語を提供しているが、およそ使いものにならず笑ってしまう)。これをディレクトリー型と呼ぶ。
第2には現実のショッピングセンターの機能、コンセプトを踏襲するSC型のモールがある。サイバー空間で何らかの小売り集積を志向するものであるが、日本ではテナントの無目的な集合が多いので本来のSC型を志向するものは少ない。
第3にはリンクページ型のような単なるショップ案内のようなものもある。
現実的に考え、ショップ数がまだ4千店強の日本でディレクトリー型がビジネスになるとのシナリオは描きにくい。となると、いかにSC型に絞って展開するかに生き残りの道は限られてくる。
(2)小売業としてのバーチャルモール
売り手と買い手の自由な結びつきを前提とするウェブでモールの存在可能性はかなり限定されてくる。その基本はまずは小売業の場としてのレベルアップを図ることに集約される。ここでは次のような可能性を上げておく。
・パワーセンター型
強力なテナントがミックスした最強のモールでもある。おもちゃのトイズラス、スポーツ用品の強力テナント、CD店といった強力な専門店の集合体である。とはいえ日本ではかなりのマーチャンダイジング力のある流通業の参加が不可欠で、可能性は限定されてくる。
・ジェネラルモール
業種、業態を問わず様々なショップが入居しているもの。日本型にかなり近い。とはいえ欧米のトレンドとしてはサイバー空間でこの種のものは低減しており(先のディレクトリー型は例外として)、モール類型の中では陳腐化しつつある。
・スペシャルティモール
ターゲット、コンセプトを明確に絞ったもの。ゲイ専門モール、子育て中の両親にターゲットを絞ったもの、ファッション専門モール等様々な種類がある。これが数を増やしており、サイバー空間とはいえ、リアルモールのトレンドとかなり共通性がある。日本でもいくつかの事例があるが、特化の度合いが不明確で、折角の専門性が薄れてしまっているところも目立つ。
・総合アミューズメント型
情報の島、エンターテイメントの島、ショッピングの島・・・といったような総合性が売り物である。とはいえ現実的には情報やエンターテイメントにアクセスが集中し、ショッピング機能は希薄なものが多い。概してマルチメディア志向が強く3Dのウォークスルー等が散見されるが、余程のマニアや暇人を除くと、魅力が継続しにくいという欠点を持つ。将来的には淘汰される形であろう。
・専門アミューズメント型
ディズニーモールが代表例で、ディズニー情報、ディズニー旅行の予約、ディズニー商品の販売等、ディズニーファンならずとも楽しめるモールである。「専門」コンセプト野設定次第では、総合アミューズメント型に比べ市場性は高いことが予想される。
・情報特化型
いわばオンラインマガジンの付帯モールといった位置づけである。好例はタイムワーナーの行っているPathfinderのモールで、とにかくフレッシュな情報発信がイノチで、商品販売機能はその付随的位置づけである。メディア系企業にとっては、可能性のある形だが、合わせてマーチャンダイジング力が要求されるところから、日本での展開可能性は限定されてくる。
●モール運営に必要なこと
既に多くのモールが出現しているが、その方向性は必ずしもバラ色ではない。次のような点に関する留意が今後必要であろう。
1)現実の小売業のノウハウを組み入れたモール運営視点の導入
2)テナントミックスにおける明確な方向付けの必要性
3)モールにおけるハブ機能の明確化と専門化
4)決済以外のハブ機能の重視
5)マーケッター、アートディレクターのモール運営への参加
6)モール運営目的の割り切り
少なくとも最後の項目については、モールをサイバービジネスにおける主役として想定しているのでは、あまりにリスクが大きいということでもある。モール以外のビジネスモデルの台頭が予想される中で、モールの意味を限定的に捉える方が、ビジネスチャンスは大きいだろう。 |
|
|