| 第9回 | |
| モールは何故うまくいかないのか カードウェーブ:98.12(A1−09) |
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| ECの大きなテーマがモールである。昨年の役所関連のEC関連プロジェクトでもほとんどがモールを構成し、そこでの実証実験を行うというスタンスで行われた。結果はといえば、こと売上に関しては「惨敗」といっても言い過ぎではない。 筆者はこの内の1つを手伝ったので大きな声では言えないが、売上が上がらない限り、決済実験もモール運営ノウハウも蓄積されないのだ。モールについてはこの連載でも1度取り上げたが、日本の状況を見るかぎり根本的な問題点は改善されていないように思われる。今回は事例を取り上げながら具体的な改善点をまとめてみた。 |
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| ●日本のモールの現状 モールは下手に作れば、売り手と買い手を隔てる単なる「壁」になってしまう。モールがモールたる所以は、「トータルな集客力」「トータルなプロモーション」「テナントへの顧客誘導」「テナント支援」「決済等インフラ整備」にある。この点はリアルの世界のショッピングセンターのディベロッパーの役割と全く共通である。これにバーチャルの世界では、オンラインならではの特有のモールノウハウが付け加わる。これはいわばテナントメリットだが、消費者側からみれば、「ワンストップショッピングのメリット」「テナントミックス、テナントコンセプトへの共感」が不可欠である。こうした点が充分満たされているかどうか、主に実証実験関係のモールを中心に見てみよう。 1)V-Mall:住友クレジットサービス、日本総研が主体となって運営しているモールである。カード会社主催であるだけに、SETによるオンライン決済が目玉である。店舗数は10/20現在43店、商品数は9600余を数える。数百の商品数でモールと称するところが多い現状からみれば、アイテム数では最も多いものの1つだ。カテゴリーはグルメ、家電、ファッション・・とジェネラル型を志向。日本的モールの典型的な形である。だがモールの原則からみれば、43店でジェネラルモールを構成するのは明らかに無理である。ましてリーシング機能が弱く、テナントの性格がまちまちであるだけに、商品カテゴリーによる濃淡が目立ち、モールとしての魅力度を薄めている。 総じてテナント名を訴求する形が強いが、ユーザーからみればテナント名から商品想起が行いにくく、それだけ購買確率が下がってしまう。イチオシ商品、人気商品といったトップ頁からのテナント誘導も一応行われているが、テーマ性、必然性、インパクトの点でプロモーションとしての訴求力は高いとは言い難い。モールコンセプトとテナントミックスの点で決してユーザーフレンドリーな作りではない。買う側からみれば、気に入りの店を見つければブックマークしておけばよい話で、モールを経由する理由がなくなってしまう。 2)J−Mall:同じくカード会社JCB主催のモールである。ソフマップ、そごう、ミキハウスなど有名どころのテナントも入っているが、テナント数は20店弱。 テナントミックスの統一のなさが目立ってしまう。テナント名を訴求されても、中の商品がイメージしにくく、購買行動への結びつきが阻害されてしまっている。モールとしての集積の意味が買う側からみればわかりにくい。オンライン決済が主眼であるとはいえ、小売集積としてみると、実験的色彩が否めない。 3)Commerce City;関西情報センターが主催するモールである。商品カテゴリーと店名をトップページで訴求する点は親切だが、やはりテナントミックスの統一性のなさが目立ってしまう。集まったテナントを商品別に分類するというだけのレベルで、買う側からみれば気に入った店を見つければモールの利用理由は消滅してしまう。ナビゲーションや商品レイアウトの統一性もなく、ユーザーからみれば回遊性、ワンストップショッピングの楽しさが享受しにくい。総じてトップ頁の言葉使い、商品カテゴリーのくくり方等がこなれておらず、いかにも小売業とは縁遠い人が作ったような印象を与えている。 4)InfoDynaMall:富士通が運営するモールである。モールとしては老舗の1つで、トプッページデザイン等の変遷をみれば、試行錯誤の後がうかがわれるモールである。現在はファッション、グルメ、ハイテク、ホビー、バラエティの5つの商品カテゴリーで統一している。ナビゲーションの統一性も確保されているが、グルメを期待してクリックしてみると、テナント数は6店程度と少なく、限られたグルメニーズしか満たすことはできない。限られた店舗数で商品をカテゴライズする限り、期待と現実の商品とのギャップは永遠につきまとう課題である。 5)Supermall:フジサンケイグループが中心となっているモールである。システム運営をIBM系のpeopleに移管しリニューアルした。だが内容は相変わらずだ。フジサンケーグループのメディア力を活かし、メディアミックスと、集客を狙う意図があるものと思われるが、肝心の商品力が弱く、テナントもフジサンケイグループが中心である。通販会社ディノスも加わっているが、本業の通販顧客とのターゲットの違いから、商品力を活かす展開にはなっていない。この種のグループモール、コーポレートモールは極めて日本的発想で、サイバービジネスでグループ企業を結集させても、ユーザーにはそれほど魅力的には映らない。また目的商品にたどりつくまでの階層が長く、購買意欲を阻害してしまう点が弱点の1つであろう。 6)タカシマヤバーチャルモール 実験組とは異なり、既存の流通業が運営している数少ないモールの1つだ。そもそも百貨店の中ではダントツに通販ノウハウがある企業だが、それがバーチャルな世界で活かされているかとうい点では課題が残る。真面目に取り組む姿勢は評価できるが、ナビゲーションや商品提示の方法などバーチャルショップ特有のノウハウの構築は今後の課題だ。ただしオリジナルブランド以外で参加しているテナントやブランド名に訴求力がある分、前掲のモールのテナント構成よりは格段にユーザーフレンドリーではある。トップページの情報性や内部吸引力が弱いのが課題だろう。 ● 日本のモール御三家 ところで日本のモールといえば、今のところ「楽天市場」「御愛想上手」「ippin!」が御三家ということになっている。いずれも報道先行で誉めすぎのキライもあるが、少なくとも順調に店を増やしそれなりに商売が成り立ってきた点、かつ実験臭が少なく商売のセンスがかいま見える点では評価できるモールである。 1)楽天市場:らくてんいちばと読む。モールといえばここが取り上げられ、今のところ成功例とされている。大企業の実験モールの弱点を研究して運営しているとかで、確かに元気があるサイトである。店舗数220店、商品数18000点と多く、この位の規模になってはじめてジェネラルモールは成立する。トップページのデザインはかなりダサイが、情報量が多く、商品選択への誘導が親切だ。商品分類の頁も簡潔だがナビゲーションに無駄が無い。他のモールがハイテク・ローコンテンツなのに比べると、ローテクだがハイコンテンツ、かつテナントフレンドリーな作りである。モール運営側のサポート体制が日本では充実しておりテナント料の取れるモールとなっている。 2)御愛想上手 ソニーのブランド戦略はサイバースペースでもかなり巧みである。そのソニーコミュニケーションネットワークが運営するモールである。プロバイダーが主催するモールの中ではダントツの出来栄えだ。商品カテゴリーページの紹介が親切で、テナント特性がよくわかる。テナント自体こだわりショップが多く、商品を見てみたいという気持ちにさせる点が秀逸だ。「専門性」「こだわり」というテナント誘致方針がうかがえる。決済システムSmashとの連動がポイントだが、始めに決済ありき、でないところがカード会社とは異なる点だろう。 3)ippin!:既にインターネットで商売を始めたショップが集まって作ったモールである。サイバースペースは「スモールイズスマート」が実現される場だが、その見本のような元気のよい中小企業のサイバーショップの集合体である。彼らは既にちょっとした有名人ばかりである。元気が良いこと、商売人でること、小回りが利くことなど中小企業の利点を遺憾なく発揮している。もっともippin!グループは取材も多く様々な賞を貰ったりと若干誉めすぎのきらいもある。「人の気配のする店づくり」「充分なコミュニケーション」「商品へのこだわりと情報提供」「泥臭さ」等それなりの店作りのノウハウは一貫しており、サイバーショップの1つの方向性を示した点で苦戦する大企業が見習うべき点は多い。 ● 日本のモールの弱点は何か 店舗数は1万店に満たず、一方ユーザー人口も1千万人を超えた段階に過ぎない日本では、まだモール自体の存立も困難さがつきまとう。これが1モールで3万近いショップのリンクが成立するアメリカとの大きな違いでもある。モールのトレンドは ・ 規模と親切な検索性を武器とする巨大なジェネラルモール ・ 専門性と幅の深さを売り物にするスペシャルモール に二極分化しつつあるが、この点日本ではこのどちらもまだ成立しにくい。だがそれ以前の問題として日本の大企業モールには共通する弱点が見受けられる。次のような点である。 1) モールコンセプトのなさ: モール全体のコンセプトが不明確である。ただのテナントの集合体に過ぎず、雑居ビルの域を出ていない。結果的に出店者、利用者双方にとって魅力のないものと映ってしまい悪循環に陥っている。概してジェネラルモール志向が強いが、その割にはテナントが不十分で、「シャビーな田舎の百貨店」の印象を与えてしまっている。サイバースペースでは巨大モールを除いてはジェネラルモールの展開は最も難しいものの1つである。 2)テナント集めが下手 : テナントを選別する力が概してない。というよりそれ以前の段階である。グループ内や資本系列の関係で無理やりテナントになったような事例が目立ち、商業集積としての意味がない。 3)テナント料が取れない モール運営機能が弱く、テナント側にとってみれば金を払って出店する意味が見いだせない。うわさでは有料にしたとたんテナントが半減したモールもあったほどで、ディペロッパーとしての役割をほとんど果たしていない。 テナント料が取れない以上、ビジネスとしての布石が打てず、永遠に実験志向がつきまとう。 4) 小売業の知識が乏しすぎる: 概して小売業の知識、センスに欠けている例が多い。商品カテゴリーのくくり方、言葉づかい等、物を買ってもらうレベルに達していない例が目立つ。また小売業としての基本であるマーチャンダイジングの知識が伴っているケースが少なく、ただ商品をテナントまかせで並べているだけの事例が目立つ。 5) トップページの作り方が稚拙: トプッページは店頭の役割を果たし、まして階層構造を有するウェブショップではその意味は重要である。ここがかなり無神経に作られており、単なる表紙になってしまっている。トップページの役割とは以前にも書いたかもしれないが、 ・ 内部へのナビゲーション誘導 ・ シーカー(目的買いやリピーター)への最短ナビゲーションの提供 ・ サーファー(はじめての客、たまたま立ち寄った客)へのアイキャッチの提供 ・ トップページプロモーションの展開 ・ テナントへの顧客誘導 等である。この意味を理解して作られているケースがほとんどない。 6)プロモーションが展開されず; 現実のモールであれば、プロモーション、イベントの類いは不可欠である。特にトップページプロモーションによる内部誘導は重要だが、この点の工夫が見受けられない。画面も単調で、再アクセスする理由に乏しい。 7)商品へのナビゲーションに工夫がない 上手な店、モールでは階層構造の中いかに目的商品に早く到達させるかが、1つのノウハウになっている。この点、トップページから商品ページへのナビゲーションが長く、かつ無駄な事例が多い。 8)集客力がない: モールがモールである理由の1つは全体としての集客力であるが、これの努力がほとんど行われていない。モール全体としてのイベント、トップページプロモーション等が本格的に企画されている気配がなく、ただ店を集めただけの段階にとどまっている。 9)モール名称が陳腐である: ○○モールであるとか、スーパー○○等名称が陳腐である。すでにこの段階で消費者の選択肢からはずれそうである。バーチャル、サイバー、スーパー等とモールとの組み合わせに過ぎず、いかにも実験臭い。この点はモール御三家の発想を見習うべきである。 10)向上心がない: これを言っては気の毒だが、既にここに書いたようなことは2年前から言っていることである。だが役所の実証実験を経ても、あるいはそれ故に、依然として解決されていない。向上心がないのか、マーケティングセンスがないのか、あるいはその両方かもしれないが、これは致命傷である。 ただこの傾向は大企業型ウェブショップに共通する点である。成功例としてもてはやされるK書店のインターフェースは賞を受賞以降ほとんど替わっていない。注文すれば商品はばらばら届き、アマゾンのように入手方法を選択することもできない。注文画面は絶えず検索と連動しており、書評や新聞の書籍広告を切り抜いて注文するような人にとっては限りなく使いにくい画面設計である。競争が厳しいアメリカと異なり、1度誉められるとその後の向上心が見受けられない。この点、ippinn!グループの連中は賞を貰った後も研究を怠らず、この点は中小企業を見習うべきだ。 11)アメリカの事例を研究していない: ことインターネットでは「模倣は創造の母」である。先例の良いところはすぐに取り入れることが出来るのがインターネットのよさでもある。アメリカには上記の弱点を克服したすぐれたモールが沢山有る。何故これらの事例を研究しないのか不思議だ。例えばモールコンセプトに即したテナントミックスの点ではVirtualemporiumの例が参考になる またトップ頁の構成やプロモーションからのテナント誘導の方法はimall の事例が良いだろう。 いずれにせよ、モールの現状は日本のECの底の浅さを今のところは象徴しているようだ。 |
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