| 第11回 | |
| 99ウェブショッピングトレンド カードウェーブ:99.03(A1−11) |
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| 立て続けに3回ウェブの審査会のようなものの審査員を行った。この印象であるが、とにかく強く思ったことは、日本のウェブ構築の技術やレベルは格段に向上しているが、ことECサイトに関してはレベルは最も低い。 現状はノンプロフィットサイトのレベルが最も高く、次いで企業のマーケティングサイト、最後が直接的な代金の回収を目指すECサイトの順である。ノンプロフィットのサイトの中には本当に素晴らしいものが多かった。 ECのサイトも元気がないわけではない。元気なのは2グループで、1つは既に商売になっているグループ。旅行、チケット、航空券、ホテルといったジャンルで売上げも10億〜数十億の単位に達している。パソコン販売、書籍といったウェブのキラーカテゴリーショップも同様だ。もう1つのグループがやたらに元気な月商100〜数百万円クラスの中小電子商店だ。この形のビジネスが億単位に成長していく可能性はあまりないが、ウェブの利点や特徴を最もよく理解している連中だ。大体各種の賞にはこうした連中が大挙して応募してくる。 この2グループに属さないサイトは押し並べて元気がない。特に大企業の実験サイトは、ビジネスモデルも古いものが多く、将来性を感じさせない。インターネットのトレンドからは1周遅れているような印象である。そこで今回はショッピングを中心にインターネットの1999年の10のトレンドをキーワードで予測してみよう。 |
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| 1.ポスト・ポータルあるいはバーティカル・ポータルの台頭 まず第一がこれである。ポータルとは玄関の意味らしいが、98年はこれで大騒ぎであった。とにかく機能を詰め込み、集客力で差をつけようという発想である。大手の検索エンジンやプロバイダーサイトのポータル争いが激化した。だがよく考えれば矛盾している。そもそもone to oneが特徴のインターネットで巨大ポータルとは、everything to everyoneを競い合っているに過ぎない。「専門」こそが存在価値があるウェブで「総合」争いを行っているという本来的な矛盾がある。大体サービスマーケティングの原則では「総合」で生き残れるのは上位3社までと決まっている。ポータル争いも3社までは許されるが、その他は差別化の道を歩むしかない。 そこで出てくる当然のシナリオがバーティカル・ポータルである。バーティカルとは垂直的という意味だが、この典型的な例がアマゾンで、本→CD→ギフトと垂直的なコンセプトの深化を目指している。総合を志向するのではなく、特定のコンセプトを前提としての規模の拡大のシナリオだ。アメリカには数多くの事例が出てきた。特定のジャンルに特化したスペシャルモールも1つのバーティカル・ポータルであろう。 なお余談だが、日本でもスペシャルモールの素晴らしい事例を発見した。釣りやアウトドアに特化した、Super Fishing Worldがそれである。ここは某賞に入賞。年商もパソコン、書籍以外の物販で1億を突破したおそらく初めての事例である。釣りというジャンルに限って言えば、これこそがポータルサイトである。日本の物販サイトの中では格段にレベルが高い。 2.指し値(さしね)ショッピングに注目 大体人間の購買パターンは決まっているが、インターネットはここに新しい選択肢をつけ加えてくれる。普通の人にはなじみがなかった「オークション」などはすっかり一般的な購買行動になってしまった。ここにまた新たなものが付け加わった。これが指し値型といおうか、予算指定型といおうか、とにかく「私はこれっきりしか予算がない」あるいは「私はこれだけの値段なら払う用意がある」ということを事前表明するスタイルだ。考えてみれば当たり前。人間の購買スタイルの基本中の基本である。これに目をつけたビジネスが今年注目だ。昨年創業したばかりなのに、あっという間に急成長したpricelineが好例である。 当初は希望予算を表明して航空券が買える仕組みからスタートし、自動車、ホテル、と事業を拡大してきた。ホテルに関しては、消費者は地域と宿泊日のほか、部屋のグレードと希望予算を表明して申し込むとこれを取り次いでくれる仕組みで、返答は1時間以内に電子メールでくれる。 このビジネスのすごいところは、指し値型購買行動にはあらゆる広がりがあるところだろう。大体人間の買い物には予算がつきものだ。電気製品、旅行といったジャンルは言うに及ばず、自動車保険、金融商品の金利、電話料金、月謝といったものまで予算を前提にしている。ここで希望予算にあった商品を紹介してくれるとすれば、これが受けない訳はない。 指定商品を入力するとウェブ上のショップの価格を教えてくれるサービスは実用化されてきたが、考えれみれば単なる割安情報より「予算マッチ情報」の方が情報価値は高い。 ウェブとは本来的に顧客志向でないと成功しない場だが、その意味では究極の顧客志向型ビジネスでもある。 3.強者連合が進む 1999年は新たなウェブ上のネットワークが続々と登場するだろう。その一例が昨年末に登場している。既に有名な店ばかりが連合を組んだいわば強者連合のネットワークだ。 CDナウ、サイベリアン・アウトポスト(パソコン販売)、eトイズ、ガーデン・コム(ガーデニング)、バーチャル・ビンヤード(ワイン)といえば超有名店である。海外発送しないガーデン・コムを除いては筆者も注文したことのある気に入りの店ばかりだ。サイベリアン・アウトポストに関しては今日頼めば、海を越えて明後日届くという素晴らしい店である。 彼らが徒党を組み作ったのが「ショッパーコネクション」というサイトである。各店の紹介やプロモーションを行うサイトだが、それぞれの顧客を他店に誘導し相乗効果を狙う。 従来商業集積のネットワークといえば、モールのようにサイトを用意して、テナントを誘導する仕掛けが主流だったが、すっかりこれに見切りをつけた格好だ。日本でもウェブ上で実績のある中小商店が集まったサイトがある(ippin)が、考えてみればこちらの方がバーチャルな商業集積としては当たり前の流れである。従来型のモールモデルの終焉を予想させる動きだ。 4.ショッピングナビゲーターあるいはショッピングチャネルがメジャーな手段になる ポータルと騒いでいるサイトはいずれもショッピング機能が目玉になってきた。米国のヤフーのショッピングナビゲーターやインフォシークやAOLのショッピングチャネルがそれである。ヤフーに関しては、ショップコーナーで「ペットフード」などと打ち込むと、ペットショップを案内してくれる。いずれも決済等のインターフェースも統一されれおり使いやすい。筆者はここから日本では入手しにくい「ペットタブ」(まあ犬用のビタミン剤でしょう)を購入した。 インフォシークのショッピングコーナーではさらに各店に評価の星印がついている。ショッピングディレクトリー機能に後述する「マーチャント・エバリュエーション・システム」(店舗評価システム)が連動した形だ。いずれも日本でも早々登場が予想される形である。 大体妙なモールに出向いて希望商品を購入するのは至難の技だ。検索的なショッピング機能がもっともウェブ向きなのは誰が見ても明らかだ。ウェブショッピングの1つのスタイルとして間違いなく定着する形だろう。ただしこれらの機能は後述するHuman Filtering Agentあるいは店舗評価システムによるスクリーニングが不可欠だ。無闇に店を紹介されても、それは情報価値が低いし、ポータルでショッピング案内をする意味自体が低減してしまうからだ。 5.水平型ショッピング検索サービスが続々実用化される バーティカルを出したのでホリゾンタルというわけではないが、検索エンジンもいずれは1つに統合され利用できるようになるだろう。これが水平型のサービス統合である。大体ウェブでは似たような機能のサイトが生まれると、それを統合するようなサービスが続々生まれてくる。ショッピングをサポートする水平型検索サービスの実用化も今年予想されるシナリオだ。 既にこの事例は沢山ある。グルメファインダーでは、食品を中心に商品やアイテムを指定すると、ウェブ上の販売店や価格を教えてくれる。わずか3クリックで希望商品の販売ページに到達できる。これはインフォシークでグルメナビというサービスで展開中だ。またIBMが行っているのは「モール・パイプライン」というサービスで複数のショッピングサイトの商品データベースをくし刺しで検索できる。 またアメリカでは、人気のある複数のオークションサイトの情報をくし刺しでウォッチできるサービスが登場している(ビッダーズエッジ他)。 クロネコヤマトが始めた「クロネコ探検隊」も一種の検索サービスだ(http://tanken.kuronekoyamato.co.jp)。 結局のところ、ウェブでの購買スタイルとはストアロイヤルティを前提にするもの(例えばアマゾンファンになる等)とくし刺し型あるいはショッピングナビゲーション利用型に二極分化していくことが予想される動きである。 6.第3者のマーチャント・エバリュエーション・システムの必要性が高まる これだけ店舗数が増えてくると、それをどう選ぶのか、何らかのサポートの仕掛けが必要だ。この1つがマーチャント・エバリュエーション・システムである。有名な事例はビズレイトで、例えばサイベリアンアウトポスト等で買い物をするとレジ通過後に詳細なアンケート画面が現われる。基本的にはサービスのレベルやナビゲーション、商品選択等の項目について10段階で評価させる仕組みだ。このアンケートは実に良く出来ている。 これが消費者評価を前提にした第3者による店舗レイティングシステムである。評価後の店は星印の数でランキングされる。結局は膨大な情報の中で「何らかの基準」が求められており、その1つが台頭したということであろう。 もう1つの意味は、ウェブではこの種の第3者サービスの可能性が膨大にあるということでもある。ウェブのビジネスチャンスは今や技術面よりもこうしたマーケティングサービス開発面に移っている。その1つがこうしたエバリュエーションシステムでもある。 7.Human Filtering Agentが注目される 客観的な評価システムと同時に、Human Filtering Agent(HFA)の台頭も予想される。舌を噛みそうだが、HFAとはいわば人間の「目利き」のことである。例えばリアルの世界でおいしいレストランを選ぶ時には、何らかの情報を参考にするだろう。その時、データベース的な情報から選ぶ人もいるし、「山本益博の選んだおいしいレストラン」を参考にする人もいる。この後者がHFAである。 人間の処理能力を越えた情報が存在する時、頼りになるのは人間の目なのだ、ということである。情報技術を駆使したエキスパートシステムによるリコメンドサービスも良いが、「三石玲子氏の選ぶお笑いECサイトワースト10」といった情報の価値が高まるということなのだ。 ウェブを見るまでは、リアルの世界での評論家や批評家の役割がイマイチ理解できなかったが、ウェブの膨大な情報量を前にすると、その存在意義が実によくわかる。結局は人間の目や意見が一番参考になる、という反省の動きが今年当たり台頭するだろう。 8.ロイヤルティ・マーケティングがウェブ上で展開される ロイヤルティ・マーケティングについては本誌で何度も書いたので説明は省略するが、要するにフリークェンシー・プログラムを前提とするリピーターづくりの手法である。これはインセンティブプログラムでもあり、販促と固定化をともに狙う手法でもある。 日本でもいくつかのモールやショップでフリークェンシープログラムが導入されているが、まだ初歩的で、特に報償の設計などがパワー不足だ。この事例としてclickrewardsやMyPointsといった仕組みがあることは以前にも紹介した。clickrewardsに関しては、これ自体が特許技術として申請され既に取得されたようだ。前述のようにECの分野ではこの種のマーケティングサービスの有望性に焦点が移ってきている。アメリカ的なロイヤルティ・マーケティングをそのまま導入するより、日本市場にあったものの開発が必要であり、その意味ではここは大きなビジネスチャンスである。カード会社やカード関係のシステム技術企業などは、決済技術よりもむしろこちらの開発に焦点を移した方が良さそうでもある。 9.マイ・モールあるいはマイ・ショッピング・ポータルニーズが顕在化する ウェブはone to one実現の場だとは、耳にタコができるほど聞かされたが、実際に行われているone to oneは逆にノイズになり始めている。ショップから送られてくるe-mailはうるさいし、またリコメンドサービスと称する情報もイマイチレベルが低い。三石玲子様専用と称する画面カスタマイズも初期には感心したが、今となってみると子供だましのようだ。エキスパート技術を駆使し、7つのリコメンドサービスを行っているアマゾンの事例でも、今1つ納得できるものがない。 ウェブでのone to oneとは何なのか、再検討する必要が出てきている。個人的にはこれはマイ・モールあるいは、マイ・ショッピング・ポータル化で代替されるだろうと考えている。 例えば筆者が利用する店とは次のようなものである。CDはCDNow、書籍は洋書はアマゾン、和書はクロネコヤマトのブックサービス、Tシャツはイージー、パソコン関係はソフマップとサイベリアン・アウトポストである。マイモールにはこれらの店が登録されている必要がある。店舗情報やプロモーション情報もたまには来たほうがよい。ここには前述の串差し型ショッピング検索サービスを埋め込む。またインターネットナンバーが入力できるインターフェースも必要だ(インターネットナンバーとは面倒なURLに替わり任意の番号を入力してサイトへアクセスする仕組みである。D&Iが技術を持っているhttp://www.hatch.co.jp)。また登録店舗で買い物した場合は自動的にロイヤルティ・マーケティングプログラムへの参加が行える機能も必要だ。これが結局はone to oneのあるべき姿でもあろう。 10.モールモデルの終焉 以上書いてきたことから確実に1つ言えることがある。それは少なくとも決済の統一性を前提にして、加盟店を集めるようなカード会社型のモールモデルはほとんど将来性がないということである。各ショップをくし刺しにするサービスが台頭し、一方でストアロイヤルティを前提にするような店舗が出現する中で、場所を用意して店舗を集めるという手法自体が陳腐化しつつある。またたとえこの種の視点が生き残るにせよ、それは小売り技術が前提で決済技術ではない。カード会社がいつこれに気づいて撤退するのか、今年が注目の年である。 |
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