| 第12回 | |
| ウェブマーケティングとは何か―その1― カードウェーブ99.4 |
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| 日本企業のウェブの利用目的はECが前面に出ているが、実際にはECに直接関係する企業は少ないものだ。多くの企業にとってウェブは、オンラインでの決済の完結を目指す直接的な金もうけの場ではなく、自社マーケティングを付加価値化する場である。これをウェブマーケティングというが、今回はこの内容をまとめてみた。概してECと口にする企業ほど、実は自社のウェブマーケティングは限りなく下手だったりする。始めに金もうけを志向するのではなく、自社としてウェブをどう活用するのか、既存のマーケティングをどう活性化するのかを検討する必要がある。 | |
| ●企業のホームページのトレンド ことECに関しては日米格差は著しい。昨年のクリスマス商戦では25〜35億ドルの売上げが上がったと喧伝されているが、日本に関しては某百貨店で歳暮期に1千万円の売上げがあったという寂しいニュースが目に付いた程度である。この位市場の盛り上がり度合は異なっている。 だがウェブマーケティングに関しては、日米企業の差は縮小しつつある。といってもこれは日本の先端企業のそれが、米国企業のそれに追いついてきたということである。日本では先端企業とその他企業との格差は月とすっぽんほどにあるのが実情だ。今のウェブマーケティングの流れとは次のようなものである。 1)広報宣伝から本業販促へ 2)情報のてんこ盛りから絞り込みへ 3)デザイン性重視から情報性重視へ 4)情報発信から情報収集へ 5)広報主導からマーケッター主導へ 6)総花的な展開からテーマ性の付与へ もちろんこの他に、デザイン、ナビゲーションといった基本的なレベルの向上は著しい。今のウェブマーケティングとは、いかに本業販促へ貢献させるか、といったテーマが焦点になり始めた。ここに気づき始めた企業と相変わらず旧態依然の企業との格差が激しくなってきた。 例えば旧態依然の企業とは次のようなケースである。 ●Aビール会社;トップ頁の情報性は少なく、内容も商品紹介、会社紹介、グッズ販売、レストラン紹介、ご意見・ご質問・・と極めて平板。メーカーとしての顧客情報入手の仕組みも弱く、第一世代のウェブそのままのスタイルである。 ●損害保険業界;保険業界の一部は特にカタカナ系生保を中心に、ウェブを顧客候補獲得の場として活用し始めた。だが多くの損害保険業界のサイトは極めて平板である。例えばS海上のケースでは、トップ頁は、プレスリリース、保険商品案内、女子柔道部の案内、会社概要・財務情報・・・と10数項目が羅列してある。自社として何をウェブで主張したいのが不明確で、誰にでも、何にでも・・といった作りである。女子柔道部の紹介も結構だが、マーケティング的には価値の低い設計だ。これも広報主導型の第一世代の設計思想である。多くのカード会社もこれにかなり近い。 一方ウェブのマーケティング活用を本格的に狙い始めた企業では、てんこ盛りスタイルを止め、テーマ性、目的性が明確になり始めた。例えばつぎのような事例が見受けられる。 ●花王;月刊情報誌形式(Peony)で情報発信と情報収集に特化。商品開発を中心とする顧客情報の収集、あるいはモニター層の裾野の拡大に焦点を絞っているフシが見受けられる(http://www.kao.co.jp/peony/)。 ●アートネイチャー;Aで始まるカツラメーカーの内の1つだ。テレビCMに膨大なコストを投下しているが、両社競ってのCM量が増えれば増えるほど、消費者はどちらの会社がどちらだったかわからない自己矛盾の状態に陥ってる。 また商品の性格上、実店舗には堂々と入りにくいが、ウェブであれば知られることなく好きなように情報入手や相談が可能だ。ライフデザインサロンというテーマのサイトで、ヘア診断を行いこの情報は、既存の販売チャネルで見込み客候補として活用される仕組みだ。成約2割という噂もあるほどで、テレビCMでフサフサとかクログロとか電話番号を連呼してみてもコンマ以下の顧客獲得率であることに比べれば格段の効率性だ。 (http://www.artnature.co.jp/) ●ウェブマーケティングのメリットとデメリット 一口にウェブマーケティングといってもその内容は様々である。だが既存のマーケティングに比べ、そこには圧倒的なメリットがある。例えば次のような点である。 1)ECに比べ低コスト;ECでは注文1件あたりのマーケティングコストは26ドルという調査結果がある。これに対して一般小売業では2.5ドル程度と言われる。また再投資率は65%で、一般小売業の4%に比べると圧倒的に高い。つまり当面は高コスト構造が持続するということなのだ。これに対しマーケティング活用の場合は、ほぼ10分の1のレベルである。例えばアンケート調査1つとってみても、リアルの場では1500万程度かかったものが、バーチャルでは同程度のサンプルを確保して150万程xでできるケースもある。 2)スピードが格段に早い;例えば週末の役員会の資料のために、月曜にインターネットアンケートを依頼し、回収後収集分析するといったことも不可能ではない。 3)インターラクティビティ;双方向性の構築が限りなく低コストで可能である。 4)パーソナライズの容易さ;本来的に one to oneの視点を内在しており、リアルの手段に比べパーソナルタッチのアプローチが低コストで可能だ。 5)プル型であること;ウェブの本質は原則顧客側が主体的に情報を集めることだ。これがプル型であると言われるゆえんだが、結果的にアクセスされるサイト側からみれば、当初からの高関心層のアクセスを期待することができる。 もちろんデメリットもある。次のような点である。 1)個人情報の信頼性、代表性が確保されない;ウェブアンケートといったものが流行っているが、これはたまたま関心のある人が回答してくるといった形式だ。調査の基本である「代表性」(どのような層を代表しているのか)は全く確保されない。 また個人情報を記入する場合でも、その情報が正確であるかどうかの保証は全くない。事実自社情報はプアな癖に、顧客情報だけを欲しがるようなサイト(金融サービスに多い)では、名前と住所だけは正確に記入するが、あとは年齢20才、子供15人といった情報を入力している(筆者のケースです)。 また景品やおまけをエサに顧客情報を集める手法が流行っているが、景品やおまけに反応する消費者が、自社にとって良い客候補となりえるかという根本的な問題がある。 2)チャネルフリクションの発生;余程チャネルの了解や協力を確保しない限り、特にメーカーの場合は既存のチャネルの反発が大きい。 3)顧客間インターラクションの発生;ウェブは確かに企業と顧客との間のインターラクティビティを効率的に構築する手段だが、企業側にパワーがないと、顧客は勝手に分派活動を始めてしまう。例えば企業側がサービスとしてチャットやフォーラムといったコミュニティ機能をウェブで展開しても、盛り上がってくると、勝手に自分たちで新しいものを作ってしまったりする。 4)オープンであること;本来企業のマーケティング活動とはマル秘で展開されるものだが、ことウェブでの活動は全てばれてしまう。このようなことは既存のマーケティングではほとんど考えられなかったことだ。 5)情報過多;例えばウェブマーケティングの手段の1つである、電子メールによるDMにしても、既にジャンクメール化しつつある。折角のone to one機能も情報洪水の中では大きなお世話になりかねない。 ●ウェブマーケティングの内容 それではウェブマーケティングの内容を具体的に見てみよう。次のような視点からまとめることができる。 1)顧客情報の収集 2)リテンションマーケティングの展開(顧客とのリレーション強化、固定化に役立てる) 3)ブランドマーケティングの展開 4)インセンティブマーケティングの展開 5)チャネル支援 以下この内容を見ていこう。 1)顧客情報収集にウェブを活用 図1は顧客情報を集める手段とその情報性を図示したものだ。例えばウェブでは機能としてcookiesといったものが備わっている。またfree stuffs & sweepstakesとは、「○○をあげます」といった景品攻めの手法である。 こうして集めた情報を何に活用するかであるが、大きくは ・開発や自社マーケティングの調整 ・見込み客開発 の2つに分けられる。前者では前掲の花王の様に、モニター情報の裾野の拡大の意図をもたせつつ、商品開発やマーケティング調整のための情報を入手する視点である。当然、情報の代表性や信頼性には限界があるが、高関心層のリスポンス、低コスト、スピード性という視点からある程度割切って展開しているところが多い。 今話題は後者の方である。前述のカツラメーカーもそうだが、比較的高額商品でかつ人的営業がフォローできる形式のビジネスでは、ウェブを見込み客情報収集ルートとして位置づける視点が急速に台頭してきた。しかも既存の手段に比べかなりの高リスポンスが確保できており、こうした企業では目の色が変わり始めたのだ。 例えば自動車メーカーは日産、トヨタを始め外資系各社はいずれも見込み客情報の収集をウェブ上で行っている。日産が行っているのは「パスポートクラブ」という1種の会員組織入会スタイルだが、現状7万人強で、この内ディーラーへの見積もり依頼に結びつくケースが月100件弱。この内成約率は1〜2割だと言われている。 生命保険ではソニー生命の展開がおもしろい。「人生の達人」という名前のサイトだがシミュレーションを前提に学資保険等の具体的商品との連動を狙っている (http://www.sonylife.co.jp/)。 一方日本の生保では「コンサルティング&保険設計依頼書」といったページで情報入手を狙っているところもあるが、単に記入を強制され驍うで、しかもコンサルティングとはいいつつも、実は自社商品のカタログ請求にしかなっておらず、レベルとしては初歩的だ。 なお顧客情報の収集手段として最近「ウェブアンケート」に注目が集まっている。これはメリットもデメリットもある手法なので、また次回あたりに別途取り上げよう。 2)リテンションマーケティングへの活用 リテンションマーケティングとは「上客の創造」「顧客維持」、およびその前提としての「安定的な情報ソースの確保」を狙うマーケティング手法である。 現在ウェブ上で展開されている手法には次のようなものがある。 1.アフィニティクラブ;カード業界ではアフィニティカードというものがあるが、その会員組織版である。特定の関心ジャンルに絞った会員組織だ。これは「顧客組織化・会員化戦略」という名前のもとに、リアルの場でも散々行われてきた手法である。だがリアルの場で考えると、数万人程度の会員組織でも運営費は億単位でかかってしまう。情報伝達には会員誌等が不可欠であるし、またイベント等の参加型のサービスが伴うからだ。 これをウェブ上に置き換えるケースが増えてきた。運営コストは圧倒的に安く、かつ e-mailを活用すれば企業と会員とのコミュニケーションが取りやすい。しかも高関心層を当初から会員化しやすいというメリットもある。資生堂といった化粧品会社や食品会社での事例が目立ってきた。 2.ユーザーズクラブ;自社顧客に向けた専用のサイト運営の形式である。例えばソニーは自社のデジタルカメラ「サイバーショット」用の専用会員サイトを展開しているし (http://www.so-net.ne.jp/sony/cs-club/ index.html)、自社顧客向けに専用ホームページと専用アドレスを提供している自動車メーカーもある。例えば自動車であれば、次の買い替え時期までの数年間の間、既存のディーラーチャネルで顧客とのコミュニケーションを保持するのは不可能に近い。顧客接点の現場での営業マンのサービススキルは低下しているし、また家庭を訪問してもドアも空けてもらえない。この点ウェブを活用すれば、既存ユーザーに対し十分な提供とコミュニケーションの構築が可能だ。いわばウェブを活用し、ユーザーのCSを向上させブランドスイッチを防ぐ戦略だ。 3.リコメンデーションの様々な手法;顧客固定化や維持のための最大の手法の1つがリコメンデーションである。あのアマゾンコムはエキスパートシステムを駆使した7種のリコメンデーションシステムを有している。三石さんという人が、マーケティングの本を買っているなら、類書を勧めたり、マーケティング本購入者の同時購入確率の高い本を勧めたりしている。同様のことがメーカー等のマーケティングサイトでも実施されるようになった。アメリカの食品メーカーのクラフト社では、「インターラクティブキッチン」という名称のサイトを運営しているが、ここでは個人のニーズに応じた各種のメニュー提案や個別情報がリコメンドされている。 一般的にリコメンデーションとは次の手法を用いることが多い。 ・ルールベース方式(企業側の担当者が一定の経験則やルールに基づいてリコメンドする方式) ・チェックボックス方式(利用者が自分でニーズ等をチェックする方式) ・リコメンデーションエンジン方式;情報技術を駆使し、大量の顧客情報から一定のパターンを抽出し、リコメンドする方式最近はこのエンジンがブームとなる兆しがあり、日本にも何社も進出し始めた。 4.画面カスタマイズ、パーソナルウエブ;画面を個人の好みに応じてカスタマイズしたり、パーソナルなウェブを作成し、前掲のリコメンデーションと組み合わせて提案を行い、よりパーソナルタッチであることを売り物に顧客維持を狙う。 また始めからウェブのサイトを顧客プロフィール別に分けてしまう手法もある。例えばCDショップであれば、クラシック愛好者と演歌愛好者とで、始めからウェブを分離してしまうような方法だ。ゲートウェイコンピュータの手法も同様で、SOHO、企業ユーザー、ホームユーザー・・といった具合に、利用者のプロフィールに応じたウェブが選択できるようになっている (http://www.gw2k.co.jp/index_content2 .htm)。 5.フリークエンシープログラム;リアルの世界でロイヤルティマーケティングが浸透してきたように、バーチャルの世界でもリテンションマーケティングの戦術はFSPである。これは企業が単独で行う場合もあるし、第3者のFSPプログラムを利用する仕掛けもある。FSP自体はショッピングのみに適応されるわけではなく、企業サイトの場合は、アンケートに答える、顧客を紹介する、チャットに参加する・・といった行動ごとに得点が加算される仕組みである。 6.e-mailマーケティング;ウェブ上におけるリテンションマーケティングにおいては、電子メールの活用が戦術的には最大のテーマである。この内容はまた別途取り上げるが、 ・メールマガジンの活用 ・ニーズに基づき生成する個別電子メールの活用 ・電子メール広告の活用 ・リマインダー、アラート機能の活用 等様々な手法がある。ダイレクトマーケティングの世界では、オプトイン(受け入れを許可する)という視点とオプトアウト(拒否しない限り送り続ける)という視点があるが、言うまでもなくe-mailマーケティングでは前者の視点が前提となる。遠からず単なる電子DMはノイズになることを予測しておくべきだろう。なおブランドマーケティング、チャネル支援、インセンティブマーケティング等の具体的内容については、次回引き続き取り上げる。 |
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