連載:ECのマーケティング

第29回
ネットビジネスQ&A

 



 本誌の連載も長きにわたり、読者の皆さんからの質問が数多く寄せられた。この際、まとめてお返事をすることにしましょう。以下のQ&Aを参考にしてください。

Q1:新聞雑誌を見ていると、一方でITバブルがはじけた、一方で「ITこそ21世紀を切り拓く力だ」なんて書いてあります。一体どっちが本当なのでしょうか(食品メーカー:42才男性)

A:いきなり難しい質問ですね。マスコミ、特に新聞関係の人は「盛り上げて、いきなり盛り下げる」習性がありますから、あまりマスコミの論調を信用しない方がいいでしょう。大体某大新聞のIT記事はかなり怪しいことがあります。「これこそ日本的ECだ!」なんて書いてましたが、待てど暮せど離陸せず。一方庶民色の強い某紙は「ウチはITが弱くて、N紙のようになりたい!」なんて言ってました。

 答えですが、多分どちらも本当だと思います。アメリカのBtoCを中心とする倒産劇は、これは必然ですよね。収益構造を見れば一目で長続きしないことがわかります。金がとだえる→顧客獲得コスト掛けられず→来客減→売上げ減という単純な図式です。これでも何年かはビジネスが続いていたのですから、まあ「バブル」と言えないことはないでしょう。

 一方日本ですが、ITバブルといえるような状態はそもそもなかったのではないのでしょうか。少なくともeコマースについては、過去7年トロトロと成長しており、バブルといえるような時期は1度も到来していません。ですから、個人的には全くこれからだと思っています。eコマースはビジネスの仕組みや価値観を根本的に変える要素を内在していますから、その意味では「21世紀を切開く力だ」というのもあながち嘘ではありません。

Q2:1年半前にBtoCサイトを本格的に立ち上げました。コミュニティを切り口に、eコマースに結びつけるというビジネスモデルです。当初月商1億程度を目指しましたが、目下のところその十分の1にも達していません。投資コストがかかっているだけに、社内的には採算を問われだしています。何か良い知恵はありませんか(商社マン:32才)

A:まずはビジネスモデルがですね。コミュニティサイトでeコマースを展開するという視点で成功しているケースはほとんどありません。これは米国も韓国も共通です。コミュニティに来る人は「おしゃべり」に来るわけで、モノを買いたいわけではありません。最新技術を使って、記事の脇で「関連商品の生成」を行ったとしても、コンバージョン率(来店者対比購入者)は極めて低いのが現状です。eコマース収入はあきらめた方が得策でしょう。となると何で収入を得るかということになりますが、「会費収入」「広告収入」「コンテンツの切り売り収入」「マーケットリサーチ等収入」等になります。前2者はかなり厳しいのが実情です。後の2つは先発企業が多く、コンテンツ力のあるコミュニティサイトとないサイトとははっきり分かれてきています。というわけで、良い知恵はありません。傷口をこれ以上拡大せず、撤退のシナリオを検討すべきでしょう。

Q3:eコマースはビジネスの懐妊期間が長いことは覚悟しており、社内もその線で説得していましたが、この不景気、これ以上説得も効果をあげそうにもありません。金をかけずに見直しをする良い方法はありませんか(メーカー:45才男性)

A:はっきり言って、「進むも地獄、引くも地獄」の状況に陥っているケースは非常に多いです。見直しには相応の金がかかります。今年はeコマースサイト見直しの動きが続出で、ここをビジネスチャンスと見ている関連企業が山ほどあります。まあ依頼すると億単位の見積もりが返ってくるはずです。ほとんどの企業にとって、今億の金はかけられません。

 一般論ですが、建て直しの秘策は「オンライン経験のある人材をスカウトする」「すご腕プロデューサーに弟子入りして、一からノウハウを社内に蓄積する」かのどちらかでしょう。ウェブデザイン会社、コンサルティング会社にまかせても、恐らくはレポートの山が溜まるだけで、根本的解決にはなりません。あいにく、日本ではオンライン経験のある人材はほとんど流動していません。口コミですご腕プロデユーサーを探してみましょう。

Q4::あなたは他誌でよく偉そうにウェブサイト評価等をしていますが、何か根拠や評価基準があるのでしょうか?(28才男性:銀行員)

A:全くもってありません。サイトチェックの方法には「IT技術を駆使して診断する」「一般ユーザーの評価スクリーニングを行う」「属人的ノウハウで行う」の3つがあります。ワタシのは全くの個人的見解です。これは「3つ星レストラン」などの評価と全く共通で、「みんなが選んだおいしいレストラン」を重視するか「グルメ評論家が選んだレストラン」を重視するかと同じこと。読む人が好きな方を参照すればよいだけの話です。

 ただ、売れるサイトと売れないサイトには根本的な違いがあります。それはウェブ上のユーザビリテイやページデザインの問題もありますが、「事業戦略が適切か」「顧客との良好なリレーションを確立しているか」「顧客満足のレベルは十分に競争に耐えうるか」といった要素です。どちらかといえばワタシはこれらの要素を重視します。何の商売も基本は同じ。「売れるものを適切な相手に、きちんと売る」ことに尽きるのですから。

Q5:よく大企業のeコマースをけなして、中小企業の事例をほめていますが、何か大企業に含むところがあるのでしょうか(55才男性:鉄鋼メーカー)

A:めっそうもない!含むところなど何もありません。ただeコマースは「圧倒的なスピード力」「特有のオンライン経験の積み重ね」「顧客主導への無条件の理解」等が必要です。これらの条件が日本的意思決定システムとは調和しないという点は否めませんね。

 大企業でも、成功している事例は沢山あります。その条件とは「生き残りをかけた背水の陣としての新規事業展開」「本社システムとは全く切り離した別会社事業展開」「担当者への徹底的な権限委譲体制の確立」等でしょう。逆に言えば、失敗しても責任を問われない「社内ベンチャーeコマース」だの、「他社が始めた以上始めざるを得なかったeコマース」などは、成功の確率はゼロに等しいということになります。

 中小企業の事例は、こんなしがらみがありませんから、コツコツ努力して次第におもしろくなってくる。これがまた客を呼ぶ。客が客を連れてくる。という好循環につながっているケースが多くあります。ただ当然この仕組みではマンパワーの限界がありますから、早晩「商店から企業への脱皮」を目指すかどうかの判断が必要ではあります。

Q6:物販の店を展開しています。ただモノを売るだけではなく、色々なサービスを始めたいと思っています。コミュニティ、メルマガ、オークション、ポイント、アフィリエイト等の仕組みがあるようですが、どれがいいでしょうか。またリンク集などはどうですか(32才:女性ウエブマスター)

A:事例にあげられた5つは、どれも役割が違いますから1つ1つ吟味してみましょう。まずコミュニティですが、コミュニティサイトでモノは売れませんが、eコマースサイトでのコミュニティは利用価値があります。eコマースの成功要件の1つは「実店舗との差別化」ですが、コミュニティはこれを端的に表現する手段の1つでもあります。「客の声をコンテンツに利用する」「客が客をサポートする」といった利用方法でサイトを付加価値化している事例が増えてきました。

 メルマガについては、一般論としては「メルマガを制するものがeコマースを制する」といっても言い過ぎではありません。ただこれは両刃の剣でもあり、これについては本連載でも何度も取りあげました。メルマガは非常に効果的ですが、「続けて読んでもらえる」メルマガを発行し続けるのは非常に大変です。始めの1〜2回はおもしろくてもすぐにレベルダウンしているケースもあります。本当に「メルマガに力を注げるか」をまずチェックしてみましょう。

 オークションですが、極めて特殊な品揃えの店を除き、一般のeコマースサイトで導入する意味はないでしょう。大体準大手モール等で導入していますが、利用者は極めて少数で、2ちゃんねるあたりで「自作自演」とからかわれていますネ。これも当然でオークションは出品点数が多ければコンバージョン率も高まる仕組みですから、もうこれはYAHOOの独壇場です。オークションのASPサービスを利用するというシナリオもあるでしょうが、個人的には販売部門に勢力を傾注したほうがいいような気がしますね。

 ポイント制はケースバイケースでしょう。中小企業の場合、「ハウスポイントシステム」の導入は事実上難しいことがあります。其の場合外部の汎用ポイントの仕組みを利用するという手はあります。ただその場合は自社のロイヤルティマーケティングとは無縁の仕組みと割り切った方がいいですね。そもそもポイントの原点とは割引替わりの販促ではなく、優良客育成の仕組みです。優良客育成の仕組みをまずきちんと考え、その他のメニューの1つとして考えるべきでしょう。

 アフィリエイトは個人的には評価しています。アメリカの小さな黒字サイトの集客方法は、バナー等ではなく、ほとんどが口コミとアフィリエイトです。絞り込まれたコンセプトのサイトで関連する商品が提案されることは利用者にとってはノイズにはなりませんから。

 リンク集ですが、これは好き好きですね。あってもよいですし、なくてもよい。あまり話題になりませんが、リンク集ほどその人、あるいは企業のセンスを反映するものはないですね。「センスの良いリンク集」には滅多にお目にかかれません。その証拠にワタクシのホームページなどを「仕事に役立つホームページリンク」に入れて頂いたりして、これは大きな勘違いというものでしょう。

Q7:ブロードバンド時代の到来が言われます。eコマースサイトの形も変わるのではないかと思いますが、どうでしょうか(54才男性:通信会社)

A:ここは見解が分かれるところですね。BB時代の到来で、販売方法は動画や音声を駆使したものになるとの意見には賛成できません。これはユーザー環境がいかに向上しようと、人がモノを買うという行為と、画面を介してのプッシュ型のマルチメディア情報とは相性が悪いと思うからです。ただ、購買確率の向上の仕掛けとして、あるいは返品率低下の仕掛けの1つとしてサブシステムとして導入する意味は否定しません。まあ選択肢の1つ、という意味合いでしょう。

Q8:eコマース向きの人材には何か特徴がありますか。また社内で養成するにはどうしたらいいでしょうか(41才男性:銀行)

A:適性や養成方法についてはあまり明確な答えはありません。ここでは「売れない店」あるいは「魅力のないコマースサイト」を運営している店長、担当者の特徴を取り上げて答えに変えさせてください。

1)他力本願:すぐ人に答えを聞く。コンサルティング会社等にすぐ頼みたがる。中小企業の場合は「アクセス数を高めるにはどうしたらよいでしょう?」などと自分で考えずにすぐ質問する。
2)
顧客感度が悪い:リスポンスが遅い。その場で判断できない。顧客意見等をサイト改善に導入する柔軟性がない。
3)
体験しない:某外資系ベンチャーの社長ですが、eコマースの重要なシステムを販売し、かなり話題を呼んでいました。何かの座談会で対談したのですが、「私はeコマースで買ったことがあるのは本位です」などと平気で言っていました。案の定、ここは撤退。eコマースの何たるかを身をもって理解できない人はやはりちょっと無理だと思いますよ。

 ところで中小企業の店には、ユニークなウェブマスターが沢山います。成功店の人の共通点は、好奇心旺盛、次々に手を打ってみるトライアル&エラー主義、オリジナリティを重視するもちゃっかり人の良いところは取り入れてみるといったことでしょうか。eコマースでは「これは頂き!」とハタとひざを打つ事例が溢れています。これを見つけるセンスが重要ということでしょうか。加えて商品・サービスについての強いこだわりとプライドが不可欠ということでしょう。

Q9:eコマースやウェブマーケティングで何かお勧めの本、お勧めのサイトはありますか(24才女性:アパレル)

A:よくこれを聞かれるのですが、これは情報がありすぎて困る、というのが実情でしょう。このような場合はもうこれと決めて、他は見ない位の割り切りが必要です。ワタシは2つ位に絞っていて、1つはアメリカのドクターウィルソンという人のサイトです。(http://www.wilsonweb.com/)。ここではeコマース、ウェブマーケティングについての一種のデータベースが利用できますし、ここでの推薦本(アマゾンのアフィリエイトです)を購入するようにしています。

Q10. モバイルコマースの市場性についてはどのように思われますか(20才:大学生)

A:これはもう勝手にやってくれ、というのが正直なところです。大体最近老眼の兆しが始まったのか、imodeの画面が見にくくて仕方ありません。あんな小さな画面を介して情報を得たり、モノを買ったりするのはまっぴらです。ただ市場として真面目に考えると、PC経由にはないおもしろさがあります。CRMの仕組みと連動させたパーソナル販促のたやすさ、店誘導の即時性、限定された情報の到達の深さ、ブロードバンドとの連動等、可能性はこちらの方が高い位でしょう。ただまあオジサン、オバサン世代には向かないかもしれませんね。

Q11:一頃話題になった女性サイトは一体どうなったのでしょうか(22才女性:百貨店)

A:うーん、差し障りがあるので即答できませんが、一部黒字転換したところを除き、大苦戦でしょう。黒字転換したところは、雑誌編集者集団の集りで、コンテンツレベルが極めて高いところです。そうでなく話題性、広告収入期待、eコマース収入を狙ったところは苦労しています。大体、この種の質問をしてくる女性自体、自分ではほとんど女性サイトを利用していないようです。ネットには他にもっとおもしろいところが沢山ありますからね。

Q12:内緒でいいですが、カード会社のウェブについてはどう思われますか(54才:カード会社企画部長):

A:これはオフレコにしましょう。カード会社はネット戦略に大分苦労しましたね。当初はヘンなモールを作っていましが、これはどうみても成功確率ゼロ。時代の役目を終わったなどと弁解していましたが、ちょっとマーケティング不足でしたね。今では、会員サービス、加盟店支援に焦点を合わせていますが、会員サービスの方は結構おもしろい事例もあると思います。一方加盟店支援目的で、「商品比較サイト」等を作っているところもありますが、ちょっと専門の競合サイトに比べると完成度が低く使いにくい印象があります。eコマースのインフラ企業という役割もありますが、まずは自社ウェブマーケティングのためのスキル向上の余地はあると思います。



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