連載:ECのマーケティング

第30回
コンバージョン率の徹底研究-card wave 2002.04-

 



 最近コンバージョン率のことばかり書いているので、「ネタ切れなの?」とからかわれる。確かにそのキライはあるが、理由は他にもある。とにかくeコマースの根本はコンバージョン率向上なのに、日本企業は規模の大小を問わずまだまだ関心が薄い。
 そこで今回はこの「
コンバージョン率」を徹底解剖してみることにしましょう。

Q1:コンバージョン率ってなんですか?(中小オンラインショップ経営者:42才)

A:コンバージョンとは「転換」という意味です。一般的には「あるサイトを訪問した人」をベースに「実際に購入した人」の割合を計算したものです。まあ来訪者に対する購入者比率と見ればよいでしょう。この概念は広告やオークションでも使われます。ウェブ広告のジャンルでは、何らかのプロモーションで誘導してきた人が、会員登録、資料請求をした比率の意味で使われます。一般的に広告では例えばメールを配信してクリックして来訪した人の比率、バナー等であればインプレッション数(表示回数)対比クリック数をコンバージョン率と総称しているようです。
 ところでショッピングの場合は、コンバージョン率を2つに分けて考えることがあります。アメリカでは「来訪者がカスタマーになる比率」(
Customer Conversion Ratio)と「ビジット数対比オーダー数」(Order Conversion ratio)を分けているケースもあります。

Q2:なぜコンバージョン率が重要なのですか?(24才:学生)

A:それはコンバージョン率がeコマースの収益性(Profitability)そのものを示す指標だからです。コンバージョン率が低いということは、購入者、オーダー数が少ないということをダイレクトに意味しているからです。
 もう1つの意味は、優良店でもたかだか数%である、という事実です。ショッピングの1割を越えることはほとんどありません。これこそがeコマースの持つ「本質」であり、実店舗との大きな違いでもあります。

 つまりどんなに頑張っても1割に満たないコンバージョン率で勝負しなければならない、ということがeコマースのマーケティングに大きく影響しているという事でもあります。ただ、オンライン経験の豊富な優良店では1割を越える水準を獲得している店もあります。コンバージョン率向上のノウハウ後で詳しく述べましょう。
 
Q3具体的ににコンバージョン率の水準とはどの位なのでしょうか?(オンラインショップ準備中主婦:35才)

A:ショッピングサイトの場合、カストマーコンバージョン率で4%位でしょうか。たとえばちょっと資料は古いですが商品ジャンル別のカスタマーコンバージョンは次のようになっています。
・オフィス用品:8%
・フラワーギフト:7.3%
・ファッション関連:6.1%
・ペット関係:5.9%
・コンピュータ:3.6%
・家電関係:2.7%
・オンラインモール:0.6%
(平均
4.2%<Nielsen,NetRatings2000年8月>)

 これを見ると商品ジャンル別の違いがよくわかります。当初から購入予定が高い商品、リピートオーダーの確率が高い商品はコンバージョン率も高く、逆に、とりあえず「情報探索に行く」あるいは「何か探しに行く」といった性格のジャンルは低くなるということです。コンバージョン率の高い商品サービスの代表選手はいうまでもなく、予約という行為を伴うチケット関係、航空券ということになります。これも日本でも今年はANAなどはオンライン売上げが1千億円規模に達しそうで、絶好調というところでしょう。ここにきて、商品ジャンルごとに売上げ規模差が明確になってきましたが、その背景にはその商品サービスの持つ潜在的な「コンバージョン力」の要素が大きく関わっているといってよいでしょう。

 カストマーコンバージョン率は年々向上する傾向があり(1999年1.9%、2000年2.9%、2001年3.5%:eMarketer調べ)、来店者を「顧客にする」ノウハウは大分蓄積されてきたといっていいでしょう。また別の調査結果では2001年5%を越える比率をあげているところもあります。下手な鉄砲のように無駄打ちをしていた広告費を絞り、そもそも購入意欲の高そうな「ターゲット顧客」を狙い撃ちし始めたという理由もあります。
 ちなみにオーダーコンバージョンの方はアメリカの調査結果ですが
1〜3%の間位となっています。

Q4:日本のeコマース関係者はコンバージョン率をどの位重視していますか?(メーカー系ショップサイトウェブマスター:38才)

A:残念ながらほとんどのウェブマスターはあまり関心を持っていません。ある調査では、ウェブマスターの重視点としてあげているものは、「ページビュー」「ユニークユーザー数」「サイト訪問の参照元」等です。コンバージョン率をあげる人はほとんどいませんでした。まだまだ「とにかく店に来てもらう」というレベルなのです。もっとも今後重視することとして「リピーター確保」とならび、「コンバージョン率向上」「滞留時間向上」をあげる人も目立ち始めました。eコマースの運営視点は、「新規客獲得」「顧客数確保」から次のステップ、つまり「リピーター創造と育成」「客単価向上」「チャンスロスの低減」といった本来の「商売のノウハウ」へやっと向かい始めたといった状況です。

 eコマースサイトには、まだアクセスカウンターが付いているケースが目立ちます。これなどは「アマチュアウェブが犯すミス」にあげられている位で、eコマースの成功要因とはおよそ無縁な代物でしょう。まだ付けている人はとっとと引っ込めましょう

Q5:コンバージョン率向上のためには、どのような方法がありますか。(ベンチャー企業役員:23才)

A:詳しい方法は後で取り上げるとして、ここでは基本的な考え方をあげておきましょう。シナリオは3つです。

1)とにかく顧客総数を増やす:つまりコンバージョン率が数%であるなら、分母であるところの「来訪者」を増やせばよいという考え方です。2年ほど前までのeコマースではこの考え方が主流でした。確かに千人来店者がある店より1万人来店する店の方が購買者は10倍です。ですがこのシナリオの欠点は金食い虫であること。アメリカのBtoCの倒産劇は千円の売上げを上げるために倍のコストがかかり、そのほとんどが顧客獲得コストであった、ということでした。いかに大赤字でも「一番になればよい」という思い込みがあったのです。従ってこのシナリオは原則としてボツでしょう。

2)購買者数を高める:もっともオーソドックスなシナリオです。購買者を増やし、結果的にコンバージョン率を高める。ただこれが難問で、コンバージョン率向上は店の運営の全てに関わってくるのです。そう簡単には向上しません。

3)非購入者の満足度を高める:これについては何度も書いた記憶があります。買わないで帰ってしまう9割の人の満足度を高め、再来店と口コミ効果を狙う、というシナリオです。これはまだ有効ですが、「あの店っておもしろいな!」という印象を持ってもらうには相当の努力が必要、ということになります

Q6:コンバージョン率の高い店にはどのようなものがありますか?

A:コンバージョン率は個人のアクセスログを詳しく分析する必要があり、ページ構造が異なるサイトを一概に比較することは難しいようです。アマゾンは構造が複雑でよくわからない、という話ですが、7〜8%説が流布しています。
 アメリカのカタログ通販企業ランズエンドのサイトはコンバージョン率
12%以上と言われています。カタログビジネス企業は軒並みウェブでも高い成果をあげていますが、中でもトップクラスの実績といえます。理由は「早くからのオンライン経験の積み重ね」「無駄のないページデザイン」「パーソナライゼーションによる購買率向上」といったところでしょうか。またアパレルの場合、パソコンの画面を通じても質感が伝わるか、といったことがチャンスロスを低減させる重要な要素になります。この点での気配りにも優れた店といえます。もっとも日本版の店もありますが、こちらの方は色の再現性等、本国サイトに比べるとやや見劣りするといった印象です。別に手抜きをしたわけではないでしょうが、外国企業の場合、本国と日本のレベル差が目立つケースが多くあります。

 なお、ランズエンドのケースのように、コンバージョン率向上の重要条件が「オンライン経験の積み重ね」です。こういってしまうと身もふたもないのですが、オンラインの商売の「要諦」がコンバージョン率向上に結集されている、といっても言い過ぎではありません。ネット専業(ピュアプレイヤー)は今では「絶滅種」扱いのビジネスモデルですが、トップ企業(トップパフォーマー)だけは例外です。例えば書店でいえばアマゾン、オークションでいえばe-Bayといった人たちです。アメリカのオンラインリテイリングの調査レポートによれば、トップパフォーマーのオーダーーコンバージョン率は2.7%。これに対しオンラインリテイリング全体では2.2%という差がついています(Online Retailing4.0)。トップパフォーマーの多くが創業が早く、オンライン経験が蓄積されていったという要素も無視できません。これが「早い者勝ち理論」の背景でもあります。

Q7:コンバージョン率向上の具体的方法を教えてください。(オンラインショップマスター:40才)

A:これはeコマースのマーケティングの根本であるだけに、とてもここでは書ききれません。まず次の5つのシナリオがあることを理解してください。

1)大数の法則に基づきとにかくデカクなることを目指す
2)顧客リレーションシップマーケティングの徹底
3)コンバージョン率のそもそも高いターゲット設定を行う
4)サイトユーザビリティ向上
5)トップページ問題の解決
6)店内購買行動におけるチャンスロスの低減
7)プロモーション戦略の再構築
以下具体的に説明していきましょう。

<大数の法則>
 大数の法則とは「数が大きいほど
エライ」という法則です。よくカード業界でも使われましたね。枚数が多い企業がエライというヤツです。同じことがネットでも言われます。日本のeBayは撤退してしまいましたが、アメリカのeBayはシェアおよそ64%。2位以下を大きく引き離しています。まあ1人勝ちといってもいいでしょう。コンバージョン率はeBayが22.5%、2位以下は11%、8%、4.4%と続きます(Nielsen/NetRating2001年5月)。もうおわかりですね。シェアの大きいところに商品が集中し(商品が集中するからシェアが高いということもあります)、結果的にそれがコンバージョン率に反映しているのです。つまり規模、シェアの大きさとコンバージョン率の高さとは比例するということでもあります。まずとにかく大きさで勝負する、ということですが、これが出来る人は限られています。

<顧客リレーションシップマーケティングの徹底>
 CRMもそうですが、ネットの商売は顧客対応マーケティングが決め手ということになってきました。これも当然でもはや顧客総数では勝負ができず、結果的に1人の人から長く、沢山購入してもらい、かつ友人たちへも影響力を及ぼしてもらうというのが勝利の方程式だからです。このリピーターづくりの法則は「ネットにおける顧客維持の法則」というテーマで昨年本欄でも取り上げています。そちらを参照してください。

<コンバージョン率のそもそも高いターゲット設定を行う>
 これは商品と顧客両方の話です。商品により見込めるコンバージョン率が異なる以上、予定購入、リピートオーダー確率の高い商品ジャンルを狙うということです。オフィス用品などが好例でしょう。旅行、チケット関係も同様です。

 一方「コンバージョン率の高そうな顧客」とはどういうことでしょうか。1つには「誰でもウェルカム」ではなく「あなたに来店して頂きたい」とすること。ターゲット設定が明確であるということです。前者の戦略はもはや成立しません。ユーザビリティの権威Jacob Nielsen博士のお勧めは「直リンク」です。トップページから正しい製品ページにたどりつくのいかに困難であるかを紹介した上で、「あなたの商品にダイレクトに関心を持つ顧客に来てもらう」ことを勧めています。これがアフィリエイト等による「直リンク」というわけです。まあ始めから内部誘導を目指すということでもあります。

 倒産劇の主役たちの倒産理由は「派手な広告合戦」と「膨大な顧客獲得コスト」、一方小粒ながら黒字になっている企業のマーケティングは「口コミ」と「アフィリエイト」と言われており、いかにそもそも関心のある顧客を低コスト、かつ高効率で集めるか、ということになってきます。

<サイトユーザビリティとトップページ問題>
 これはもうeコマースの原点に関わる問題ですね。ユーザビリティについては、もう散々語られています。金のかかる大規模な調査をしてくれる企業も増えてきました。これも結構ですが、ユーザビリティテストはほんの数人による「定性調査」でも十分成果があがります。いくつかの課題を設定し、具体的に店内を動いてもらえばいいのです。つまずいた箇所1つ1つをチェックしていくだけで大きなヒントが得られます。金もかからず、たいした手間もかからないこんな基本的なことでも、行っていない店がなんと多いことでしょう。結局はショップマスターが「
近視眼」に陥っているのでしょう。

 トップページはにぎわい、やる気が感じられない、といった第一印象の悪さ、情報デザイン(情報を関連するまとまりごとに整理する技術)が稚拙、中にもぐるための「手がかりの設計」が下手という3つの要素に分けられます。客は一目でこれを見抜いてしまう、という危機感を持つべきでしょう。

<チャンスロスの低減>
 eコマースは一見誰でも参入でき、話題性もあり、政府によれば「21世紀を切り拓く力」のように見えます。しかし実態は
地雷原のようなもので、あちらこちらに落とし穴があります。何も工夫しなければ購入率は高まらない、客単価は上がらない、購買中止率は低下しないのです。この実態については「ネットビジネスにおけるチャンスロスの構造」というテーマで本連載でも(3回位前です)取り上げました。そちらを参照してください。

<プロモーション戦略の再構築>
 まずはターゲット顧客に絞ったオンライン広告の実施が前提です。いざサイトに来たなら、衝動買い、客単価アップを狙うような販促、インセンティブの類いが十分か、ということをチェックしてみましょう。売れない店はやはり販促が下手です。店のにぎわいもなく、たまたま立ち寄った人を内部へ誘導する力もない。「今日はどんなことをしているかな」という次回来店の確保にもつながっていません。これも基本中の基本。結局コンバージョン率向上とは
基本のキでもあるのです。

 「
たかがコンバージョン、されどコンバージョン」です。この際徹底的にチェックしてみるとよいでしょう。



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