| 第31回 | |
| BtoBマーケティングの展望-card wave 2002.06-
|
|
| eコマースなどという言葉が始めて登場したのは、1993年頃、94年になってボチボチ注目を集める。95年には日本でもショップが登場し始めた。以来BtoCを中心に見てきたのだが、ここにきてBtoBも結構おもしろいことを発見。少しBtoBの「勉強」を始めることにした。 始めたばかりで、いきなりマーケティングのコツを書くのも実にセンエツな話だが、よくよく見るとBtoCのノウハウもBtoBのノウハウもそれほど大差がないように思われる。 なお、世の中には立派なBtoB研究機関や、コンサルティングオフィスがあるので、真面目な情報を知りたい人はそちらを参照してください。以下はいつものとおり全くの独断と偏見である。 |
|
| ●BtoBっておもしろい! 何故おもしろいと思ったか、そこにはきっかけがある。日本で早くから中小製造業、要するに町工場のネットワーク化を手がけていたのが、NCネットワークだ。今では参加事業所1万1千以上、トータルの従業員数40万人、総売上げは5兆円近くに達する。これが自社資源、ノウハウ、技術、商材をオープンにし、巨大なデータベースを構築している。つまりここにきて検索すれば、どの工場と組めばいいか、どこに依頼すればいいかが、一目瞭然。そこから商談が始まる。BtoBというと、どうしても大企業の「調達」や「EDI」の話を想像するが、NCネットワークはB with Bという表現が適切かもしれない。 話はいきなり替わるが、ネットでは一般論だが、テナント数、参加事業所数、コンテンツ数が数千を越え始めると、その存在感が変質し始める。まずは、一種の自己増殖作用が始まり、テナント等はますます集中するというわけ。楽天のテナント数が好例だ。NCネットワークも目下は自己増殖中のようで、毎日10数件ずつ参加企業が増えている。 どのように変質するか、の話だが、データベースとしてとんでもない意味が出てくるのだ。BtoCの世界では例えば、レシピ(調理法)というものが大はやり。大概の食品メーカーは消費者に直接売るものもないので、サービスコンテンツの1つとして、レシピを載せている。だがその数は多くて数百程度。中身もありきたり。最近はIT家電なるものが有望だとかで、家電メーカーは、「多彩なレシピが送信」されたり「在庫管理が可能」な冷蔵庫などを開発中。在庫管理なんて、扉を開けて目で見た方が確かだ、と思うけどネ。「多彩なレシピ」を家電メーカーの冷蔵庫から貰おうなんて思う主婦の数も限定されるだろう。 一方CookPadというレシピ専門サイトがある。掲載数は4万点。それも全部会員(消費者)が投稿したものばかり。4万というのは本当に巨大。例えば、キャベツを目の前にして、頭を抱えているアナタ!ここにいけば、少なくとも数百のキャベツレシピがゲットできるのだ。中華か、子供向けか、本格料理か、など大概の希望別に出てくる。大食品メーカーのサイトではせいぜい「ロールキャベツ」が関の山だ。 そこでNCネットワークに戻るが、ここはエミダスという名前の工場検索エンジンを持っている。この参加企業を対象に「エミダスホームページ大賞」なる意欲的なイベントを実施した。ワタクシは何と審査イインチョウに任命され、BtoBの世界に足を踏み入れたというわけ。BtoB初心者をイインチョウに任命するというのも大胆な話だが、そういう細かいことにこだわらないところがイイ。 感想だが、BtoBっておもしろい。だがこれまでも例えばeマーケットプレースであるとか、一応見てきたのだが、おもしろいと感じたことは1度もなかった。アメリカ発のビジネスモデルに飛びついて、そこにただ鉄だの、ポリエステルだの、商材を当てはめただけの感じ。商社などは一応「社内eビジネスコンペ」だの、「企業内起業家」などの募集を経て、行っていたところもあったが。大体「企業内起業家」などという言葉自体マヤカシである。本当にベンチャー精神があるなら、外に出ろって! 今回おもしろかったのは、多分参加者が町工場のオヤジさんたちであったからだと思う。BtoCもそうだが、eコマースのBest & Brightestはトヨタだの松下だのNTTだのIBMだのJRだの、シンクタンクだの、銀行だの、官庁だの、ついでにセブンイレブンだの、商社だのには、まずいない。こつこつ育ててきた中小ショップの現場にポツポツといる。読む人は、「またいつものワンパターンの大企業批判か!」とうんざりするかもしれないけどネ。 さて、この大賞の結果は既に公表されている。中小製造業のホームページの目的は実に明快で、いかに「受注に結びつけるか」である。これは正解だ。これが大企業だと、「広報」「IR」、「マーケティング」などと目的は分散する。しかも客は法人も消費者もいる。さてどうしましょう?と大概のところは悩んでいる。仮に社内を説得して「マーケティング」に絞ったとしても、開発部門、営業部門、宣伝部門、と目的はまた散逸する。もっとも最近では見事に切り分けして成果をあげている事例もあるが。 さて大賞を受賞したのは第一プラスティックという企業。「硬質、発砲体、複合多層素材、薄版から厚板まであらゆる素材をあらゆる形」にしてくれる企業らしい。これが何かは素人のワタシにはわからないが、見る人が見ればわかるというわけ。大体BtoCと異なり、用がない人は始めからサイトに来ないわけで、関心の高い来訪者にいかに的確にサイトコンセプトを伝えるかが、成功要件の第一である。この点レベルが高い。中の情報も充実。しかも自社の特徴の全てを少ないクリック数で見せるユーザビリティの高さも秀逸。introduction movieというコーナーでは「真空成型・圧空成形」なるものを動画で見せていた。これもブロードバンド時代を先取りして、その精神やヨシ。個人的には動画情報は大嫌いで、特に最近はやりのBtoCでの動画ショッピングの出来の悪さにはウンザリなのだが、これだけ目的が明確だと、動画の意味も生きてくる。レベルの高いサイトであった。 凖グランプリは日本クロス圧延という会社。これまたワタクシにはチンプンカンプンであるが、その圧延なるものが一体何であるかが、トップ頁で明快にわかる。urlもatuen.comでわかりやすい。「試作や少量対応」といった自社ならではの対応や自社技術の特徴が明確に打ちだされる。要するにネットの基本中の基本「3秒ルール」がきちんと満たされている。これがBtoCであると、「ここは何を売っているところかな?ここはワタシ向きかな?、ワタシはここでウェルカムかな?」に要する判断時間のこと。BtoBでは「何をしてくれるところかな?、我が社との接点はあるかな?」ということの判断時間である。こういう見せ方は、「総合家電メーカー」などを標榜してしまうとまず出来ない。ネットでは総合よりスペシャルの方がエライのだ。 技術コンテンツ賞という賞を獲得したのは三和メッキ工業という会社。ここの情報内容はすごい。メッキに関しては、業界団体も大学もかなわない、という位の感じ。故に「技術コンテンツ」賞であったのだ。ただ最後まで議論になったのは、トップページのきれいな葉っぱ。デザイン的には美しいが、情報的には意味が見いだせない。製造業と環境対応との関係をイメージしている、と言われても、3秒では思いつかない。 だがとにかく情報はスゴイ。コンテンツリッチとはこのことである。これは何度も書いたが、ブロードバンド時代になればなるほど、ユーザーはまず「ネットに聞く」「ネットで調べる」ことが第一選択となる。サイトのマーケティング的意味とはとにかくcome to learnへの対応なのだ。これが消費者向けにブランディングの意味を持つ、あるいは何か直接売るものが見つかった、等の役割を持つサイトなら別である。扱っている商品は消費者向けはほとんどなし、直販も不可能、エンドユーザーへのブランディングも必要なし、といった企業はどうするか?ということだ。この答えの好例が製薬会社の万有製薬。売るものはないはずの消費者に対し、実に深い情報を提供している。逆に大衆薬で有名な某社(ファイト、一発だったかな?)は実にコンテンツプアだ。「福岡支店新社屋完成」が重要ニュースとしてトップページに掲げられるような体質だ。 またまた話がそれたが、要するに、得意分野に関して圧倒するようなコンテンツリッチなサイトを作る。これは町工場に限らず、戦略的には大正解の手法なのだ。ただ企業規模が大きくなればなるほど、何に特化するかの選択に悩むということである。 3ちゃん賞という一見ヘンな賞を獲得したのがイワセという会社。旋盤加工屋さんらしい。ここのトップページが愉快で、たずさわる3ちゃん(実際には5人)が全て顔を出している。BtoCの成功ノウハウの1つが「顔の見える店づくり」ということで、文字通り店主やウエブマスターが写真で顔を出す。これは一種のブランディングや信用保証のしかけでもある。この製造業版だ。作り手、生産者の顔を見せるという点では正解で「いかにも技術力のある工場」という安心感を与えている。情報もしっかりしており、楽しいサイトだ。 ところで中小製造業におけるホームページもこれからはブームになりそうだ。これはこれでIT革命本番といったところで、すごくいい動きだと思う。ちなみにアメリカのデータだが。BtoBのサイトで「ビジネスソリューション」を具体的に達成している、企業規模別の結果を見たことがある(Net Impact Study:2002.1)。この結果では次のようになっていた。 つまり千人以上の大企業ではそれなりに達成効果有り。一方201〜千人程度の企業ではイマイチ伸び悩み。100人以下の数字がわからないのが残念だが、恐らくは成果は2分。成果のない企業とある企業に二極化しているだろう。後者の達成率は大企業並に高いことも予想されるのだ。 もう1つ、中小企業のオンライン受注という調査結果があった。この場合の中小企業とは従業員25人以下。月当たり1〜9件が24%、10〜25件が19%、25件以上が10%という結果。もっともゼロ件も4割。この解説では中小企業はまだノウハウがないので、ゼロ受注が多い、となっていたが、3割は月10件以上の受注をネット経由で得ているという読み方をすべきだろう(Dun & Bradstreet,2001) さてざっと参加企業を見ただけでノウハウを語るのはおこがましいが、仮にサイトを受注獲得に利用するのであれば、いくつかのポイントはあるようだ。 1)特徴、強み、狙い、とは何か:これはサイトづくり全ての基本だろう。しかも3秒、長くて8秒で判断できるだけの絞り込みが欲しい。誰にでもわかる言葉で、自社の特徴を3行以内に表現できるか、言語訓練をしておいた方がよい。 2)関心〜探索〜問い合わせ〜受注に至る一貫性:いかに情報探索目的を達成してもらうのか、それをいかにアクションに結びつけるのか、といったこと。例えば問い合わせフォーム自体にも優劣があった。もちろんネットで商談が完結するわけはなく、その後の人間系の対応が勝負を分けることは言うまでもない。これはよくAIDA,AIDMAの法則と言われたが、注意→興味→ニーズの発生→アクションに結びつくステップのこと。ネットの初期にはこの話しがよく持ち出された。何より実営業の世界と違い、それぞれのステップが分断されない。このメリットをいかにデザイン上活かしているか、ということである。受賞企業はいずれもこのプロセスの流れが上手であった。 3)コンテンツリッチの模索:受賞企業とそうでない企業との差はやはりここだと思う。いかに来訪者の関心を満たすコンテンツ(情報)をきちんとわかりやすく提供するか、ということである。この受け皿づくりは並大抵のことではない。ここでしか見れない何か、があるかないか、の違いが大きかった。 4)技術に語らしめる:BtoCと比べての感想だが、コンテンツリッチは必要だが、一方でBtoBの世界には「技術の力」がある。それは見ただけでわかるスゴサ、言葉を使わなくても伝わるsomethingであったりする。BtoCは冗舌で、アカシヤサンマの世界。BtoBはケンさんの世界、なんちゃって。でも自社製品の写真1つ。下には定規が置いてある。これだけですごさが伝わる世界とは日ごろBtoC ばかり見ている目には新鮮であった。 褒めてばかりいるが、ヘタクソな事例も多かった。一般論としていえば、サイトデザイン、ユーザビリティのレベルは中小企業のBtoC対比2年遅れという感じだ。 まずは余計な情報が多い。トップページの富士山の絵に自社社屋。風呂屋じゃないんだから、この種のデザインは無駄である。意味のないアクセスカウンター。8000人しか来ていないアクセスカウンターに何の意味があるのか、再検討が必要だ。 情報デザインのレベルも気になる。情報デザインとは情報を意味のあるまとまりでくくって、わかりやすく提供するノウハウのこと。これが混乱していて見る側を混乱させている。言語能力も気になる。「技術に優れた」であるとか「信頼のある技術力」といった表現は引っ込めよう。何に対してどう優れているのか明記すべき。 フラッシュを駆使したような無意味なウエルカム画面、マスコットや可愛い人形がチカチカするようなアニメも引っ込めた方が良い。歌舞伎町や錦糸町のキャバレーみたいだ。どうでもよい社長挨拶も引っ込めたほうがよい。トップは自社の特徴をトップの言葉で明確に語るべきだ。 とはいえ、この種のことは、1種の流行の要素が大きい。先日ショッピングセンター(駅ビル)業界のサイトをチェックする機会があったが、フラッシュによる無意味はウェルカム画面のオンパレードにはびっくり。この種のことは1社が始めると、しかもそれがそれなりに業界内で有名な企業であったりすると、皆追随してしまう。おまけにトップのレベルが低いことが多く、「ウチもどうしてアソコみたいに、恰好いい動く画面がないんだ!」などと言うわけだ。担当者としてはこれが無意味なことが分かっていても反対できないというわけ。中小企業はこんなしがらみがないはずだから、目的達成を最優先に考えたページを作るべきだ。もちろん大企業も同様である。 |
|
|
|