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インターネットの営業活用
日経アントロポス:97.2(B2−01) |
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■「インターネットビジネス」に対する関心は高まるばかりだ。だがここには2つの意味がある。1つはインターネット、とりわけワールドワイドウェブ(以下ウェブ)をフィールドとし直接的な金儲けを目指すシナリオだ。オンラインショッピングや様々な有料サービスの提供がこのジャンルである。
もう1つの意味は、インターネットをどうマーケティングツールとして使いこなすかという視点である。日本ではエレクロトニックコマースを中心に前者に関心が向きがちであるが、ウェブが本来はインターラクティブ性を特徴とする情報メディアであることを考えれば、メイクマネーの前にもっとマーケティングツールとしての可能性を検討すべきだ。ここでは特に営業ツール(売るための仕掛けや道具)としての可能性を検討してみよう。 |
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●営業ツールとしてのウェブの特質
ウェブを中心とするインターネットを自社の営業力強化にどう使いこなすか。このテーマを考えるには、まずウェブや電子メールなど、インターネットの機能がマーケティング的にどう意味を持つかを整理おかねばしてならない。それは次のようにまとめられる。
1)インターラクティブ:これがインターネットの最大の特質であることは言うまでもない。しかも特定個人とのバイネーム(個人名)によるやりとりが可能となる。マーケティング界で流行語となったone to oneが効果的に実践できる場なのだ。これの事例は後に譲るとして、インターネットをうまく活用している企業に共通する条件は、とにかくインターラクティブ性を有効活用していることにある。
2)平等
中小企業や個人が大企業に互して対等に戦える場なんてものは、これまでは事実上は存在しなかった。だがインターネットの登場はこれを一変させる。企業名やブランド名より、中身のおもしろさやセンス、アイキャッチ性等がものを言う場だ。幸いなことに(不幸なことにというべきか)日本ではこうした感性は大企業の人材より中小企業や個人に豊富である。サイバー空間では競争条件は全く平等あるいはむしろ中小に有利でさえある。ネットワーク社会の到来とは、「スモールイズスマート」(小さいほど賢い)を意味する言葉でもあり、ウェブはそれを具体的に象徴するフィールドでもあるのだ。
3)購買情報と購買行動の密着
われわれが買い物をする前には通常は情報を集めるものだ。あるいは企業側からのアプローチもある。DMがきたりチラシが配られたりするのがその一例だ。こうした情報を購買情報と名付けるなら、これが一体どの位の確率でアクション(店に赴く、買い物をする・・)に結びつくかは意外とブラックボックスである。従来のone to oneの代表例であったDMで言えば、数%成果をあげれば大成功、コンマ以下のケースも多々見受けられた。しかもDMの開封率は既に3割を切っている。
ウェブの登場はこの事情を一変させる。今では特定のブラウザーを経由してくる電子メールからはそこにウェブの住所が記入されていれば、ダイレクトにそのサイトにリンクすることが可能だ。チラシやDMをみてダイレクトに店に行くことができることを意味するわけだ。一方で電子DM公害も言われているが、購買情報が購買行動のダイレクトに結びつくオンラインメディアならではのメリットをいかんなく発揮できるのも事実なのだ。営業ツールとして見たとき、これほどのメリットはない。
また目下は実験段階だが、バーゲンファインダーというサイトがある。ここでは価格調査を行ってくれる。今週のヒットチャートベスト1のCDの一番安い店を探して、といった依頼が可能なのだ。図ー1はこの価格調査の結果が示されており、各店での価格が明示されている。もちろん各店の名前とはリンクが張ってあり、その店には瞬時に赴ける。「秋葉原で一番安い店探し」と同じ趣旨ではあるが、違いはその情報が瞬時にアクションに結びつくことなのだ。こんなメディアはこれまで存在しなかった。
4)圧倒的に低コストなバイネームアプローチ
DM一通あたりのコストは郵送費含めれば100円弱はかかっている。それに比べればオンラインメディアのアプローチコストは圧倒的に安い。既に電子DM公害の兆しもある中でそれが果たして顧客満足を高めるかどうかの議論は別にして、かってのメディアに比べバイネームアプローチのコストは圧倒的に安いのだ。これをいかに上手く活用するかがやはり営業戦略の決め手である。ニーズにマッチした提案型のアプローチの道具として利用しない手はない。
5)SPの参加率の高さ
ウェブでは様々なセールスプロモーション(SP)が花盛りだ。懸賞、クイズ、コンテスト・・の類である。優れたビジネスサイトには必ずこうした参加型のセールスプロモーションが豊富にちりばめられている。現実世界でも多いこれらのプロモーションは、ウェブのようなサイバースペースではその本質が変わる。とにかく参加しやすい。かつインターラクティブだ。現実世界であれば、葉書を探しに行く、ポストに投函するなどということをしている内に参加率はどんどん低下していく。これがウェブであれば、参加したい人はものの数秒もあれば、参加が可能。サイバー空間では営業のためのSPもその質を変えることに留意が必要である。
6)その他のメリット
その他のメリットはもういうまでもないだろう。ウェブであれば動画や音声を駆使したマルチメディア的発信ができること、情報更新が容易であること、24時間対応可能であること、といった内容だ。
営業ツールとしてみたとき、ウェブは単にマルチメディア的であるということ以外に様々な特性を持っており、これらの特性を使いこなせるかが、営業活用の決め手でもある。
●ウェブを営業ツールとしてどう活用するか
一口に営業活用といってもそこには様々な内容がある。次にどのような視点が可能なのか、先行する事例を見てみよう。
1)企業PRとしての活用
ウェブの営業活用としては基本中の基本である。マス媒体に比べ圧倒的にコストも安く、情報の鮮度も維持できる。地方企業、中小企業にとっては格好のメディアが登場した。さらに優れた技術を持っており、それを世界に向けてアピールしたい、などという企業にとっても利用価値が高い。従来であれば、東京に進出して、それから世界に・・などというステップがあったものだが、地方発世界へのPRをウェブは可能にする。目下行政の後押しもあり、地方レベルでの情報化が急速に進んでいる。その目玉がウェブによる地方企業の情報発信になってきた。地域別のモールとしての情報発信形態が多いが、その中には、海外からの問い合わせが舞い込むケースも増えてきたという。
ウェブによるPRに企業の大小による格差はない。旅行業界を例に取ればメガエージェンシーと呼ばれる大手旅行代理店も小さな個人のペンションも同等にホームページを開いている。小さなペンションの中には、通常の媒体では考えられないようなアクセス数を誇っているところもある(図2)。
むしろトップページから階層構造の中を情報を掘り下げていくメディアであることを考えれば、専門性があり、トップページでの情報が絞り込まれている小さな企業の方が、総合サービスを歌い文句にする企業より有利でさえある。ウェブでの企業PRは「百貨店型」の企業より専門領域が明確な「専門店型」の企業により適性がある手段でもある。
日本では企業がホームページを開く動機の第一はまずはPR目的だ。だが実際にその目的を達成しているかは疑問である。特に金融機関に目立つが、不要な挨拶、トップの写真、会社概要等が長々と続き、情報の絞り込みが行われていない。またウェブならではの特性をいかした展開も少なく、電子メールの宛先さえかかれていない場合もある。比較検討が容易なウェブで、日米銀行のホームページを比較すれば、日本の金融機関のサイトの弱点やセンスのなさは一目瞭然である。比較型のメディアであるウェブを介すると、折角の企業PRも実際にはマイナスPRになってしまうことに日本の金融機関は気付いていないようだ。ウェブでの企業PRは両刃の剣でもある。
2)営業窓口の設営
従来は人的チャネルで行っていた営業窓口をウェブ上で代替する活用法である。ここではいくつかのバリエーションがある。
・パートナー募集
・資材調達、供給業者募集
・FCチェーンでのオーナー募集
等の事例が見受けられる。またクレジットカードや消費者金融の受け付けをウェブ上で行うケースもあり、これも一種の営業窓口設営の形である。
金型部品を中心にカタログビジネスを展開しているミスミはオープンでユニークな経営で有名だが、そのインターネット活用法もユニークで資材調達に絞っている。日本での該当業者を探しつくしたという事情もあり、海外の事業者に向けた新たな資材調達メディアとしてウェブを展開中だ(図3)。もっとも今のところ華々しい成果をあげたとはいいがたいようで、試行錯誤の段階ではある。ウェブでの営業窓口設営には技術的な問題がつきまとう。例えば
・ネットワーク内でのプレゼンスをどう高めるか
・発信者の「信用」をどのような手段で確認するのか
といった課題である。ウェブ営業の歴史も浅い中、ここでのノウハウはまだ構築されていないのが実状だ。
3)顧客対応窓口の設営
顧客相談、クレーム受け付け、コールセンターといったいわば顧客との直接接点をウェブ上に設営する形だ。昨今のCS理論でいえば、こうした顧客接点こそ、営業の最先端ということになる。先端企業では単なるアフタサービスのための後方機関から営業の前線へと変身しつつある。
これは生産財、消費財問わずメーカーにとっては重要な活用法である。事例としてはアメリカのパソコンメーカーのサイトが参考になる。アップル、コンパック、デル等いずれもいたれりつくせりの対応ぶりである(図4)。
こうした顧客対応窓口としての利用には次のようなメリットがある。
・24時間対応が可能
・時間や距離の問題を解決する
・情報の共有化がたやすい
・即時性がある(トラブル、バージョンアップ、リコール等の告知がたやすい)
・双方向性を利用すればCS向上への手が打ちやすい。
・FAQ(頻繁に尋ねられる質問とその回答)の公開が容易。
・人的対応範囲の縮小によるコスト減
4)商品カタログの展開
ウェブの強みの1つは画像や音声を駆使したマルチメディア的情報発信が可能なことだが、この機能を活用すれば、商品カタログはもっともウェブ向きの活用法の1つでもある。
商品カタログは営業のポイントだが、これを紙で作っている限り、印刷費は高いし更新もままならない。ウェブを利用すればこの弱点が克服できる。もともとウェブはカタログの提示に向いたメディアだが、これに検索機能を付加することにより、一層パワーを発揮できる。
この点ではアメリカのメーカー、ヒューレット・パッカードのホームページが参考になる。600点以上のアイテムがわかりやすく提示されており、検索機能も親切で使いやすい(図)。また変わったところでは、日本のタレントエージェンシー「オスカープロモーション」のタレントやモデルの紹介ページも一種のカタログ機能ではある。ウェブに乗せたことにより、地方にも商圏が広がったとのであるから、これも立派な商品カタログである。
5)ブランド力強化
ブランドエクィテイという言葉が使われるようになった。エクィテイとは「資産価値」のような意味でいわばブランドの力とでもいうべき内容だ。ネット上でいかにブランドエクィテイを高めるか、これが米国企業の間では新しいテーマになりつつある。これを実現する手段としてブランド別にホームページを作るといったことが行われている。考えてみればこれは当たり前の話で、顧客はそのブランドや商品に関心があることが多く、企業に関心が高いわけではない。パジェロに関心があっても三菱自動車に興味があるわけではないのだ。スーパードライが好きでもアサヒビールに関心が高いというわけでもないだろう。
日本では原則1企業1アドレスが指定されており、ブランド別にホームページを開くことは事実上難しい。アメリカでは比較的ルールが緩やかで、ブランド別、目的別にホームページを開くことができる。パソコンメーカーアップルのホームページ体系は全てこの形で、企業本体のサイトは各ホームページ群の案内は企業紹介に徹している。
Zimaは早くからクールサイトとして名を馳せていた有名なページだが、元はといえばビールのブランド名である。ニューエージビールのコンセプトのもとに、Zimaとニューエージに関心のある人に絞った情報発信と会員組織等の展開を行っている(図5)。ネット上でのブランドエクィティを高めるには、この方法は有効な形の1つである。企業のホームページから階層構造を追って特定ブランドにたどりつかせるより、はるかにターゲット層が絞れるし、密度の濃いコミュニケーションが可能となるからだ。
6)ショーケースストアの展開
もっとも中小企業に向いた形の1つがこれである。ショーケースとは文字どおり陳列ケースのことで、陳列ケースを主体にしたショールームストアのようなものである。商品販売も行うが、基本は情報発信だ。自社商品の由来、蘊蓄はもとより、あらゆる関連情報を発信する情報ショップでもある。好例はチョコレートのゴディバで、このサイトの充実ぶりは群を抜いている。チョコレートの歴史やレシピがふんだに盛り込まれ、かつインターラクティブさにも優れている。日本でもこうしたショーケースストアの好例は数多い。広島の漬け物さんが展開していた「漬け物オンライン」、岡崎や水戸の和菓子屋さんの優れた和菓子サイト等、花火についての蘊蓄が傾けられた花火屋さんのサイト等盛りだくさんだ。日本ではこれらのサイトは店主がウェブマスターを兼ねていることが多い。これがまたサイトをおもしろくしている理由の1つで、思い入れや情熱がパソコンという無機質なメディアを介しても伝わってくるところが好評の背景にもなっている。
●インターネットを活用したプロモーションシステムの可能性
インタネット営業の可能性は何もホームページでの情報発信にばかりあるわけではない。ウェブや電子メールの仕組みを新しいプロモーションシステムとして利用することでも、その可能性は開ける。プロモーションシステムとしての可能性を見てみよう。
1)ウェブ広告:ウェブがメディアである以上当然広告としての利用が模索される。これは現状では人気のあるサイト、あるいは利用者数の多いサイトへの「バナー広告」という形で行われることが多い。米国の調査会社ジュピターコミュニケーションの調査では、96前半のウェブ広告出稿額は6700万ドル程度となっている。これは従来のマス媒体に比べればまだまだ小さい規模でしかないものの、コンピュータ関連企業、テレコミュニケーション関連企業にとっては、ウェブは既に魅力的な広告メディアとなりつつある。もっとも問題もある。自動車、住宅といった高額商品や、現状のウェブユーザープロフィールにマッチした商品(パソコン等)では企業側の判断も、「効果あり」に傾き始めている。一方で石鹸、ジュース、歯磨きといった単価の低い消費財ではまだ疑心暗鬼であるのが実状のようで、現状の広告費予算をウェブを含めて案分するといった状況にはなく、実験段階でしかない。
2)電子クーポン、電子ポイント
アメリカ市場ではクーポンの利用が一般的である。日曜版の新聞などにクーポン広告を出し、それを切り抜いて消費者がスーパーなどに買い物に行く。この紙のクーポンのウェブ版が次々に登場している。またロイヤルティマーケティングの流れが高まる中で、多頻度利用顧客を創出するのに効果的なフリークエント・ショッパー・プログラム(FSP)(より多く買い物する客に対するインセンティブプログラム)をサイバー空間で導入する動きもはじまった。
電子クーポンでは利用者の選択が可能だ。あらかじめ興味のある分野を選んでおけばその分野のクーポンが入手できる。もちろんこれはクーポン発行会社のサイトに自らアクセスし、プリントアウトし、スーパー側のスキャナーで読みとる仕掛けである。
バーチャルモールの1つサイバースペースモールでは、モール全体での電子ポイントの発行を行っている(図6)。これも当然の流れで、バーチャル空間ではまだ固定客の比率がきわめて低い。アクセス数は多くともその購買確率は低く、さらにそれが固定化する率が低いのだ。ビジネス空間としてはリアルワールドに比べ、まだまだ非効率である。この弱点を克服しようと、様々な固定化の試みが始まっている。会員制にする、名前を登録しDMを送るといった形の他に、FSPの導入が1つの流れとなりそうだ。
3)電子DM
ウェブリテイラーの中にはいくつかの成功店が出現した。その中の代表例Amazon.comやCD Nowでは、電子DMによるシンプルなone to oneが奏功している。希望するジャンル、あるいは普段よく購入する領域のジャンルについてDMが送られる。例えば立花隆氏の本を購入した人に対しては、次回立花氏が新刊を出した時には、DMが送られてくる。きわめてシンプルなone to oneである。何もデータベースを駆使して、前回大根を購入した人は次回は人参を購入する確率が高いなどという予測をする必要はないのだ(日本では一時これが小売業のサクセスストーリーともてはやされた)。前回の履歴やニーズに基づいたシンプルな需要喚起こそ、サイバーならではの特徴が生かせる。情報がアクションに結びつきやすい一方、不要な電子DMに対する拒否感が強く、一歩間違えば「大きなお世話」とみなされてしまう危険性もあるからだ。
●ウェブ営業活用のポイント
何もウェブで直接的金儲けを目指さなくともその活用法は様々にある。それは何も都会の大企業の専有物ではなく、むしろ適性は中小企業、個人、地方企業にある。そのチャンスを活用しない手はないだろう。その時のポイントとして次のような点に注意すべきであろう。
1)情報を点呼盛りにせず、顧客に優先的に伝えたいことに絞る
2)企業PRの場合を除いては、まず商品、ブランド情報をトップページできちんと伝え、階層構造のステップをできるだけ短縮化する
3)絵や写真の利用も結構だが、ウェブの本質は「文字情報」にあると割り切り、ビジュアルは「きれいに、小さく」を原則とする
4)たまたまアクセスしてきた人(サーファー)、目的をもってアクセスすてきた人(シーカー)どちらも中に引き込むような工夫を行う(前者では様々なイベントやプロモーション、後者では検索システム等がキーとなる)
5)ウェブ営業の基本は、ネットワークプレゼンスの確保であることをわきまえ、オフライン、オンライン双方での告知活動を徹底する |
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