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サイバービジネスとオンラインショッピング展望
東急総研TriView:97.3(B2−03) |
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■つい2年ほど前まではインターネットを知る人はごく少数であった。それが今ではインターネットを使わないものは人にあらず。ホームページをたち上げない企業は企業にあらず、といった風潮である。
インターネットに代表されるネットワーク社会の到来は確かに生活を変える。だがその本質は何なのだろうか。例えば生活に極めて密着した「ショッピング」はどう変わるのか。新聞を眺めている限り、21世紀には全てのショッピングはオンラインで行われるような幻想が渦巻いている。こんなことがあり得るのか、もう少し地に足のついた議論が必要である。ネットワークの消費行動に与える影響とは何か、それは流通をどう変えるのか、あるいは変えないのか、といった洞察が不可欠である。残念ながら今の日本でマーケティング、リテイリング、あるいは心理学の立場からネットワーク社会を論じている人は極めて少ない。技術、決済、セキュリティといった議論が先行し、妙なエレクトロニックコマース(EC)神話が蔓延している。本稿ではこうした誤解、幻想に対する問題提起をし、その中で通販の一形態であるオンラインショッピングの展望を行うものとしたい。 |
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1)米日バーチャル事情比較
常識的に考えればコマースばかりが電子的になることはあり得ない。商業も社会システムの一部である以上、社会全体のバーチャル化が進んで始めてコマースもバーチャル化するだろう(こうした意見は日本では異論に属する)。社会全体のバーチャル化の状況はアメリカに比べ日本は格段に遅れている。
アメリカではバーチャル化は働くことの流動化という形でまず進展した。一説には自営含めホームワーカー(企業所属も含む)は4800万人という調査結果もある。日本ではせいぜい数百万人も存在しない。こうした働くことの流動化がアメリカのインフラでもある。お父さんやお母さんは手に手にパソコンを持ち、家に戻ってきたのだ。家庭に入り込んだパソコンは仕事以外にも様々な用途に使われる。これがオンラインショッピング市場の基盤である。日本では急速にパソコンの普及が進んではいるが、それは必然性と結びついていない。
アメリカのインターネット人口の調査数字がつい最近発表された。それによれば、既に5千数百万人がインターネットを利用しており、その内女性比率は42%である(ニールセン調査)。一方、日本の最新数字では540万人説(郵政省:1997年初頭)がある。ただし女性人口はいずれの調査結果を見ても十数%である。要するに9割近くは男性で、それもまだ技術系の20代、30代が主流を占める。これらの層はインターネットでアクティブであっても一般の消費行動でアクティブである保証に乏しい。日本ではインターネットユーザーと一般市場との乖離が激しく、ここが調整されない限り、市場の急速な拡大は望みにくい。これがまたアメリカ市場との大きな違いなのだ。
とりわけ日本の通販市場の85%は女性が担い手である。一部のオンフライトショッピングや、深夜のテレビショッピングを除き、男性は通販のターゲットとしてはまだ影が薄いのだ。このターゲット問題はECの最大の難問の1つでもある。
さらにアメリカの通信販売は都市型のショッピングスタイルの受け皿として変貌することで発展を遂げたが、日本ではまだその転換は十分ではない。様変わりはしているにせよ、ロープライス、ローテイストの「おばちゃん通販」のイメージがつきまとう。通販市場自体の性格もまだネットワーク社会に調整できていないのだ。アメリカではウェブリテイラーのリーダー格としていくつものカタログビジネス展開企業の名前があがってくる。彼らはこれまで培ってきたモノを触らせないで購入させるノウハウをいかにサイバースペースで展開するか競い合っている。結果的にウェブのホームページのレベルは他業種に比べ格段に高い。一方日本ではこのリーダー格となる通販企業が存在しない。ターゲットのミスマッチの問題もあり、日本では大手企業ほど懐疑的でさえある。
2)オンラインショッピングの定義と範囲
こうした米日の事情の違いを踏まえた上で、オンラインショッピングなるものの概念を明らかにしてみよう。オンラインショッピングに関する明確な定義は存在しない。敢えていえば「電話回線などを通じ遠隔地から販売業者のコンピュータにアクセスし手元の端末装置で商品選択から決済までをする買い物のこと」である。従ってネットワークはパソコン通信サービスでもよいし、インターネットでもよい。また端末もパソコン、テレビ等双方向性が確保されるものであれば何でも良い。ただ現実的には、パソコンを端末とするインターネットショッピングが急速に台頭しつつあり、オンラインショッピングといえばインターネットのウェブを利用する形式が代表例とみなされるようになった(本稿でも以下ウェブを前提に論を進めていく)。
一方その範囲をどうとらえるかはかなり曖昧である。広義にはECの中の「Electronic Storefronts」(電子店舗)で扱うジャンルを全てとらえる見方もある。そこでサービスを扱おうと、商品を扱おうと、あるいはデジタルコンテンツ(音楽、画像、ソフト等ダウンロードにより「商品」が入手できるもの)を扱おうと一切構わない。要するにネットワークで店を構え、そこで商品選択と購入意志の表示ができる形式をオンラインショッピングととらえる見方である。
一方狭義には「ウェブリテイリング」ととらえる視点がある。物販とデジタルコンテンツを対象とし、サービスは除くという考え方である。さらに絞ってデジタルコンテンツは除く視点もある。商品を販売する限り、物流は現実世界に依存せねばならず、これがサービス系、コンテンツ系との大きな違いでもある。それだけビジネスの難易度は高く、特有のノウハウが必要である。筆者は物販とコンテンツ系を対象とする立場をとっている。
ところでウェブでの商品販売を何か新しい付加価値を付けてとらえる視点が蔓延している。例えば大手広告代理店では「それは新しいコミュニケーションスタイルであり、新しい価値の創造である」などと称している。また妙なエンターテイメント性を売り物に、遊びながらモノを買うスタイルを訴求しているところもある。極めて個人的見解であるが、これらはビジネスコンセプトとしては多額の金をクライアントから徴求できるであろうが、通販としての成功確率は極めて低いことが予想される。ウェブでの商品販売とは単なる「ネットワーク通販」以外の何物でもない。そこに必要なのはまずは通販のノウハウである。それは商品と価格、それに特有の商品プレゼンテーションのノウハウである。さらにダイレクトマーケティングのノウハウやフルフィルメントのノウハウでもある。妙な美辞麗句にまどわされることなく、この厳然たる事実に早く気づくべきであろう。
3)市場展望
郵政省は通信白書において96年度のEC市場規模(商品とサービスを対象とするウェブビジネスの規模)を270億円弱と発表している。店舗数は約2000店であるので、1店あたりに直せば月平均113万程度の売り上げを上げている計算になる。アメリカの調査結果では「売り上げを上げている店の平均月商は7千ドル」であり、日本の計算根拠はアメリカを上回る水準になり、かなりのどんぶり勘定である。個人的には96年のウェブリテイリングの市場規模は70億円程度と見ている。どのような調査数字を見ても平均月商は30万円程度で、100万円の月商を上げている店は「大成功店」であるからだ。ただ70億であろうと270億であろうと実は大差がない。これは大型店単店の売り上げ規模であり、日本中のウェブショップを総合しても、まだその程度でしかない、ということであるからだ。
問題はこれがどの位伸びるかである。筆者の試算では2000年時点で悲観論では600億円弱、楽観論では1800億円程度と予測している(図)。仮に楽観論としても同時点の通販市場規模を2兆5千億円とみればそのシェアは7%程度。同じく小売業の規模を150兆円とすれば、0.1% 強でしかない。要するにオンラインショッピングは少なくともここ数年では既存の通販市場のメディアの多様化の1つでしかない。また流通構造に与える影響は少なく、店や卸が無くなるような事態はまず考えられないということなのだ。仮に2050年であっても、通販市場のシェアは2〜3割程度に増えるかもしれないが、それが従来の通販を駆逐するようなシナリオは持っていない。オンラインショッピングには克服すべき課題が多すぎる。次のその内容を見てみよう。
4)オンラインショッピングの特質
ウェブを前提とするオンラインショッピングにはいくつかの弱点がある。それは次のような点である。
●アクセス型である
アクセス型又はプル型という。自ら強烈な意思をもってアクセスしない限り目的の情報には到達しない。これが寝ころんで読めるカタログや真面目に見る必要のないテレビショッピングとの大きな違いである。目的買いの商品の受け皿には適性があるが、そうでない商品の売り方が難しい。事実今の売れ筋商品はほとんどが「サーチ&バイ」(検索して購入する)型の商品ばかりである。消費者自らが検索をいとわない商品には適性があり、それは今のところ、書籍、CD,パソコン関連商品、ワイン等に限定されている。
●関連購買が行いにくい
カタログは複数の商品購入に適性のあるメディアだ。一方テレビショッピングは1つの商品を強烈に訴求する売り方に適性がある。それではウェブとは何なのか?今のところこの答えは出ていない。今の技術では「さっきのスカートとこのブラウス」といった極めて当たり前の購入が行いにくい。比較購買、関連購買に向きにくい特徴を持っている。となると客単価は上がらず、ビジネスとしての効率が悪い。米国のカタログビジネス企業の多くはこの実験を必死になって行っている。今の解像度ではファッション商品は売りにくいが、ファッションが売れ始めなければ市場は育たず、ファッションを売るためにはコーディネート販売の技術が不可欠であるからだ。
●ビジネス効率の悪さ
今のところ、オンラインショッピングの利用者平均年間購入額は5千円程度である。1回は購入するがリピートしない。またアクセスはするが購入確率は低い。この効率の悪さがどうしてもつきまとう。これは商品販売技術が向上すればある程度は克服できるが、ウェブの持つ根本的弱点でもある。特に日本のユーザーはまだビギナーが多い。この点欧米の成功店の多くは、ビギナーからリピーターへ、サーファー(ネットで遊ぶ人)からシーカー(目的をもってアクセスしてくる人)へとターゲット設定を変えている。ビギナーやサーファー相手ではただでさえ悪いビジネス効率が一層低下するからだ。結果的にそれはウェブページの作り方に大きな影響を与えている。ビギナーの喜びそうな3Dのグラフィックや動画などはどんどん姿を消し、検索システムの充実した店が増えている。日本に多い、エンターテイメント志向のモールは撤退し、モノをきちんと売る店が勢力を伸ばしている。
●ビジネスモデルが不明確
ウェブにおけるビジネスモデルは図のように類型化できる。第一が「単発型」でこれは売り手と買い手が単独で結びつく形だ。2つ目は「マッチング型」で需要と供給を結びつける仕掛人の存在が前提だ。第3はモール型であるが、日本ではモールが本来持つべきハブ機能を持っているところは少なく、単なる場所貸しのモールが存在するだけだ。単発型に関しては、今後店が増えれば増えるほど、ユーザーが増えれば増えるほど、売り手と買い手がハッピーに出会う確率は低下する。何故なら膨大なサイトの中からお互いのニーズを満たす出会いが出現する確率が低下しているからだ。今のところこの出会いを作り出す仕掛は「検索エンジン」位しかなく、これはモノを買うときの情報源にはなりにくい。
第2のマッチング型はアメリカでは成功例があるが、クローズドな流通構造の日本では限界がある。例えば全ての自動車ディーラーを登録して、消費者には「車の百貨店情報」を提示するような考え方なわけで、車種別系列にがんじがらめになっている日本ではほとんど不可能に近い。
第3のモールに関しては、日本は世界的に見ても異質なモールを作っている。米国のモールは現実世界のショッピングセンターづくりのノウハウをかなり踏襲している。モールにはきちんとしたコンセプトがあり、それに合ったテナントが入居している。だが日本では無目的な企業の集合をモールと称しており、小売り集積としての意味はほとんどない。またモールのトップページには企業名の看板が張り付いているが、こうした例も米国のモールには少ない。何故なら階層構造を前提とするウェブでは、前面には「商品分類」や「パワーテナント名」(店の名前を聞けば商品が想記できるようなテナント)が配置されており、中を覗かねば商品がわからないような企業名は削除されている。要するに売り手と買い手をいかに結びつけるかが全てのウェブビジネスにおいて、日本のモールは単なる障壁の役割しか果たしていないのだ。
●階層構造を有する
目的商品に到達するステップが長いのがウェブショッピングの弱点である。優れたショップはトップページから2クリック、3ステップで目的商品に到達できるように設計し始めた。要は2回クリックしさえすれば、目的のアイテムに到達できるのが「良い店づくり」なのだ。この点日本のほとんどの店は失格である。トップページからのステップは5〜6回もあり、途中で飽きてしまう。ウェブの階層構造をいかに短縮するかには多くのノウハウが出てきたが、特に日本ではこの点に対する無理解が目立つ。
●オンラインメディアならではのマーチャンダイジングとは何か
何故わざわざ面倒なパソコンを介して買い物をするのか。この点に対する無理解が目立つ。ウェブにはウェブ向きのMDがあるのだ。それは次のようなものである
・サーチ&バイ型の商品群
・サーチ&ファインド型の購買行動をとる商品(価格、相手、商品群等いくつかのニーズを入力して探す方法)
・グローバルニッチ(日常商圏では入手しにくいもの)
・いつものあれ(食品雑貨のように、定型化した買い物)
・パーソナル・カスタマイズ商品(自分好みの仕様変更が可能なもの)
原則としてウェブはサーチ&バイ型にむくメディアであり、サーチ&バイ型に対応したスーパーストア(品揃えの幅が広くかつ深くかつ安い専門店)がトップリテイラーとなっている。また専門店には適性があるが、百貨店型商売には向きにくいメディアでもある。
5)成長規定要因は何か
な制約もあるオンラインショッピングであるが、通販の1つのメディアとなることは間違いないところだ。更なる発展のためには次のような課題解決が不可欠である。
●特有のプレゼンテーションノウハウの確立:カタログと同様のクリエイティブノウハウの確立が必要である。例えば商品写真と説明文章の割合、トップページからのナビゲーションノウハウといったことである。
●小売業としてのノウハウの蓄積
一部には、オンラインショッピングの成長には決済の安全性の確立が不可欠だとの議論がある。だがこれは本質をとらえていない。人は買いたいものがあれば何とかして金を祓うものだ。決済システムの確立は重要な条件ではあるが、オンラインショッピングの成長を規定する条件ではない。その成長は、小売業、通販としてのノウハウの確立がポイントで
・商品
・価格
・商品のサーチプロセス
・特有のプレゼンテーションノウハウ
・インターラクティブ機能の演出方法
といったものに集約される
●マチュアな消費者の吸引
少なくとも今のインターネットユーザーでは市場の拡大は期待しにくい。消費者としてアクティブでマチュアな層の吸引が不可欠である。端的に言えばこれは女性層である。よく女性をどう吸引するかとの議論が見受けられるが、これはそれほど難しい話ではない。今の女性にウェブのショップを見せると、あまりの稚拙さに笑い出すほどで、要は売り手のノウハウとレベルが低いことが背景にあることを忘れてはならない。 |
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