サイバービジネス関連寄稿

―中小企業のホームページ活用―
創業200年老舗和菓子店のインターネットノウハウ


近代中小企業:99.5(B1−21)


■インターネットの女性ユーザーの割合は2割強といったところだ。これが既に45%は越えているアメリカとの大きな違いである。アメリカでは2000年には女性比率が6割になるという予測もあり、完全に女性主導型マーケットになりつつある。
日本ではインターネットで短期的な成果を目指すには、若い男性をターゲットに商売をせざるを得ないという制約条件がいまだつきまとう。こうした中で、女性の支持を確実に集め、実店舗の商売にも貢献させている老舗企業がある。



 愛知県岡崎市で和菓子店を営む備前屋は天明2年(1782年)に創業した、地元では誰でも知っている老舗である。銘菓「あわ雪」を始め、数々の伝統ある菓子で有名な店だ。
この備前屋がホームページを開いたのは1995年9月である。95年といえばほとんどの大企業もホームページを所有しておらず、日本のインターネット活用の歴史の中でも飛び抜けて早い、いわば先駆け企業でもある。これを始めたのが若き9代目中野邦夫氏だ。
和菓子とインターネット、あるいは創業200年の老舗企業とインターネットといえば一見ミスマッチのようだが、同社のホームページを見ると、何の違和感もなく、和菓子の世界に溶け込むことができる。和菓子の紹介や地元の歴史の紹介も充実しているが、もちろんネット上から注文することも可能である。既にホームページを開いて4年目を迎え、成果も定着してきた。そのノウハウを見てみよう。

1)女性ユーザーでの絶大な支持を受ける
同社のホームページは女性のアクセスが極めて多い。主要な顧客プロフィールは、大企業のOL層である。インターネットでは一端女性ユーザーの評判をかち得ると、それはネット上の口コミでじわじわ広がっていく。同社の場合もその典型で、女性同士のメーリングリストなどで評判が伝わっていった。
女性ユーザーの支持をかち得るにはそれなりの仕掛けや努力も必要である。備前屋では注文の備考欄にコメント等があった場合には、お客様の書かれた分量以上に返事を書くように心がけているという。これがハイタッチなコミュニケーションにつながっている。また単なる挨拶メールでなく、中野氏が自分で返答を書いているが、結果的にこれが「ネットワークの向こうにいる人」が「店の主人」やそれに準ずる人であるという一種の安心感を与えているようだ、とのことだ。
こうしたやり取りが続く中で、顧客が結婚することになり、その結納や引き出物の注文も受けることもあったという。

2)本業あってのインターネット
備前屋のポリシーは「リアルの店舗や店がしっかりしているからこそ、バーチャルの店が生きる」というものだ。本業あってのインターネットというスタンスである。事実様々な季節の和菓子の丁寧な紹介やうんちくなどは見ているだけでも楽しく、「さすが老舗の貫録」といった印象を与えている。
一方でインターネットならではのマーチャンダイジングにも踏み込んでおり、インターネット専用の和菓子のクリスマスケーキなどは注文が殺到するほどの人気商品になっている。また中元歳暮期には、法人関係からはエクセル等の添付ファイルで注文が入るようになり、店サイドも送り状、伝票などをパソコンで打ち出せば済むようになるなど、互いに省力化に役立っている。本業重視の視点を貫きながら、インターネットの特徴をうまく利用しているのが、備前屋の特徴でもある。

3)結局は顧客対応が基本
ホームページを開き3年以上が経った現在、中野氏の感想は「ホームページを開いてからリアルの商売がうまくなったような気がする」というものだ。顧客へきちんと対応すること、コミュニケーションを大切にすること、という点で同社のインターネットビジネスは現実の商売と重なるところが多い。この点が単にデータベース的な商売が目立つ書籍やパソコンのネット販売とは決定的に異なるところだ。「結局は顧客との直結という点で商売の本道への回帰を図っているのかもしれない」(中野氏)という点がまさに中小企業のインターネットビジネスの1つの方向性を示しているようだ。

4)誇り高き中小企業店主として、しっかりした内容を作ること
インターネット活用の先駆け企業として総括すると、結局は「誇り高き中小企業店主としてしっかりした内容を作ること」であるという。インターネットがブームとなる中で、中小企業にも様々な企画が持ち込まれる。分不相応な高い金額で単なる会社案内づくりを持ちかける例も多く、果たしてそれが役に立つかは疑問の残るところだ。
中小企業へのアドバイスとして中野氏は、
「ホームページを公開する以上、それで店のレベルが測られるという強い自覚を持つこと」「仮にも誇り高き中小企業の店主であるなら、コンテンツの作成や更新に深く関わり、自分の思い入れを表現するこ」「単に業者に金をかけて頼んでも、それがしっかりしたした内容でないならば逆効果であるという自覚がが不可欠であること」「仕事としてのホームページの運営に、何か楽しみを見つける」ことをあげてくれた。

ネット上の通信販売として見れば備前屋より多くの売上げを上げている中小企業の事例は増えてきた。だが誰もが悩む、女性ユーザーの吸引、実店舗との連動、リアルとバーチャルの商売に関する考え方、といった点で、同社のホームページには様々なヒントがある。最近では商工会議所と連携し、地域活性化の視点も取り込んでおり、数々のイベントも行われている。



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