サイバービジネス関連寄稿

全く新しい独自のコンセプトをインターネットで展開するハンコヤ・ドット・コム」
近代中小企業99.11(B1−135)


印鑑は私たち日本人の生活に不可欠なものだ。それでいて、それを買う、あるいは作るということになると、意外と関心は薄い。最近でこそ価格破壊の波が押し寄せているが、印章業界自体も体質が古く、閉鎖的な印象さえ受ける。こうした中で、インターネットで印鑑の販売を開始。斬新なアイデアや新しい用途提案で注目されている中小企業の事例を紹介しよう。



「ハンコヤ・ドット・コム」は印鑑を販売するインターネットショップだ。運営するのは藤田優氏(30才)。もともと印章店を営んできた家柄の4台目だが、今はオンライン販売に専念している。
 印章業界はここ数年フランチャイズ化が進み、価格破壊が浸透した。だが低価格化も一巡し、新たな節目を迎えている。品質やトータルなサービス、話題性といった一貫した戦略なしには、将来の道を拓きえないといった状況に来ている。いわば商売の方法を根本的に変えざるを得ないわけだ。ここで藤田氏はインターネットに着目した。インターネットならではの提案や売り方も可能。しかも小さく運搬に簡便で単価も相応に高いという商品特性も通販に適しているという読みもあった。
 ショップの設立は平成9年と電子商店の中では後発だが、ユーザーの選ぶベストショップにも認定されるなど、ここにきて「ハンコヤ・ドット・コム」の名前は急速に浸透しつつある。

 印鑑は一生に1度購入すれば十分だ、というのがいままでの常識だ。したがってインターネット印章店の成功の秘訣は、この常識を打ち破ることにある。だが最近はネット上の印章店も増加し、競争は激化している。単なる低価格競争では生き残れないし、かといって市場自体はそんなに大きなものではない。ネット上のビジネスとして考えると、商品適性は抜群だが、戦略的には難問を抱えている業界だ。
「ハンコヤ・ドット・コム」のホームページはこの難問に次のような視点で正面から取り組んでいる。

1)「話題性」「思わず欲しくなる」商品提案:ハンコの購入で楽しい思いをした人は滅多にいないはずだ。だが「ハンコヤ・ドット・コム」の商品は実に楽しいものばかり。最近話題のiMacf風のカラーバリエーションを持つiHanko、あるいは携帯電話に反応するモバイル対応印鑑「Pica-inピカイン」など、思わず買いたくなる商品が並ぶ。もちろん従来の印鑑も充実しており、それは「起業家・SOHOを支援する会社設立セット」といった切り口でも提案されている。こうした柔軟な発想が第一の差別化点だ。

2)「すっきりはッきり分かりやすい、ショッピングが楽しくなる店づくり」
 「ハンコヤ・ドット・コム」のページデザインのレベルは中小電子商店の中でも格段に高い方だろう。トップページを開けたときには、まず目玉商品が配置され、またその他の商品への誘導も実にうまく工夫されている。デザイン面でも「リクルートのISIZEの色調を参考に、あたたかさ、ソフト、淡い、目が疲れないことをキーワードにデザインしています」(藤田氏)とのことで、すっきりした、また使いやすい工夫がなされている。

3)インターラクティブなメニューや提案情報の重視
 
これもまた「売れる電子商店ノウハウ」の定番の1つだ。「ハンコヤ・ドット・コム」の場合は「お返事定期便」というコーナーで、ユーザーとのコミュニケーションコーナーを展開。ユーザーからの疑問や指摘にショップマスターが丁寧に答えている。結果的にこれが店に対するお客様の共感を他の人に伝える役割を果たしている。さらに「印鑑うんちく事典」「お役所手続き事典」では印鑑にまつわる役立ち情報が入手できて便利だ。「Webマスター訪問記」は先輩有名ショップのインタビュー記事だ。これはEC市場に関する価値の高い情報を提供することで、店のポリシーを伝えようとするものだ。

4)満足度向上で客が客を呼ぶ仕組み
 
このビジネスはリピーターなしには成立しない。その仕掛けの1つは楽しい商品提案だが、もう1つはオーソドックスではあるが、購買時点での満足度の向上だ。「購入時点でいかにお客様の満足度を引きだすかを心がけています。その結果それがお客様がお客様を呼んで下さることを期待しています。品質、早い対応、ご注文内容確認、特別なご指定に忠実に対応等を必ず守っています」(藤田氏)。誠意、正直、スピーディが座右の銘とのことだが、一見当たり前のこの言葉をネットで実際に展開するのは実は非常に難しいことなのだ。

「ハンコヤ・ドット・コム」はまだ歴史の新しい店だが、ブランド(ストア)イメージが浸透しつつあること、消費者の評判が確立しつつあるという点では、そのノウハウは参考になる。今後参入する中小企業に向けたアドバイスとして藤田氏は次のように語ってくれた。「
ただの実店舗の丸写しではオンラインで印鑑は売れない。従来の印鑑の概念を捨てて、全く新しい独自のコンセプトを編み出せなければ、ウェブショップは成功しないといことです。印鑑は商品にオリジナリティを持たせるのが非常に難しい商品です。結局どこの店にも同じ商品が並び、品質の良さを訴えてもウェブ上ではなかなか確認頂けません。となると価格競争になりますが、すでに価格の底は打っています。結局生はんかな気持ちと生はんかな投資で関われば、思った以上に早期に店を閉めざるを得ない結論に達するはずです」。差別化の難しい商品を扱う中小企業や価格競争に巻き込まれている業界の企業にとって、「全く新しい独自のコンセプト」への努力は参考になるはずだ。



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