サイバービジネス関連寄稿

「サイバービジネスコミュニティ」をどう運営するか

(B-137)近代中小企業99.12



消費者向け商品やサービスを手がけている中小企業の場合は、インターネットの活用方法はかなり明確になってきた。だが生産財関係の場合はまだ試行錯誤だ。実際には、市場規模やその有望性はB to B(企業対企業)と言われる企業間取引の方がはるかに大きいのだ。そんな中で、生産財に関わる中小企業がスクラムを組み、情報交流や技術交流を行っている例を紹介しよう。



B to Bのコミュニティサイトを運営するエヌシーネットワーク

 エヌシーネットワークは葛飾区の2世、若手経営者が共同で設置した、製造業、ベンチャー企業の技術交流、情報交換を図るためのホームページとして、スタートした。
こうした形式を
ビジネスコミュニティといい、米国では多くの先行例がある。例えばプラスチック業界や金型業界のサイトなどがあり、情報交換の他、入札や見積もり提出なども始っている。これらのコミュニティサイトを通じての実際の電子商取引も始っているが、ホームページの収入源は主として広告収入である。

 この日本版、しかも中小企業版がエヌシーネットワークだ。設立の趣旨には次のようなことが書かれている。「大企業を頂点としたプラミッド社会の中にいる下請け企業は従来はピラミッドの上だけを見て仕事をしていました。しかし今、プラミッド社会の外に新しい景色が広がっていることに気づいた多くの中小企業は、果敢に外の社会との交流を深めようとしています。手軽になったインターネットを情報受注発信の道具として積極的に使うことで、それらのピラミッド外の交流を求めている中小製造業のネットワークをインターネット上に作ることが出来ると考えています」
 系列や下請けの枠が崩れ始めている今、その中にこだわっている限り、新しい展望は開けない時代になってきた。この中で中小企業同士の情報交流や、協業の形を模索しようというものだ。既に企業データベースには千社以上が登録されており、全国の中小製造業の交流の場となり始めた。

地に足の付いた情報の提供
 コミュニティサイトを運営する場合には、ポイントとなることが3つある。1つはその コミュニティのニーズに応じた、
質の高い情報を提供し続けること。2つ目は、文字通り「交流」「意見交換」の仕組みを確立することである。3つ目は企業情報、製品情報に関する使いやすいデータベースを構築し、情報の有用性を高めることだ。

 まず情報面から見ると、エヌシーネットワークの場合、中小製造業にとって、有用な情報が満載である。ビジネス情報としては、最近増えてきたメーカーのネット経由の資材発注情報にリンク出来る。また中小製造業の経営情報として「中小製造業のための知的所有権戦略講座」といった情報が提供されている他、「金属プレス技術講座」「鉄鋼の基礎知識」「電気メッキ講座」「CAD/CAM用語集」といった技術知識情報も充実している。同じ立場の中小企業の主催であるだけに、地に足の付いた質の高い情報が提供できるところが強みでもある。「金属プレス技術講座」では業界経験30年の超ベテラン技術者が担当するなど、日ごろ、なかなか入手できない実務的な技術情報がネットで公開されているわけだ。

 ユニークなのは「プラスチックの知恵袋」のコーナーで、プラスチック用語や関連サイトの紹介、品質管理に関する情報、プラスチック成形金型の情報などプラスチックの関連する情報のデータベース検索コーナーだ。このデータの出所は参加企業のメールであり、個々のノウハウや情報がこのデータベースで一元化される仕組みだ。これもネットならではの、情報蓄積と共有の形だ。

掲示板で意見交換
 もう1つの特徴は掲示板が充実していることだ。「金型掲示板」「材料掲示板」「機械加工掲示板」「中古工作機械売買掲示板」「モノづくり営業掲示板」「モノづくり求人/求職掲示板」がそれぞれ展開されており、参加企業の特色のアピールや情報交流、あるいは調達したい技術や技術者等の情報が公開されている。

データベース機能
 データベース機能については、「工場検索エンジン」「加工分類検索」「地図検索」「社名検索」等検索方法が多種類用意され、目的情報へ容易に到達する仕組みが整備されている。結果的に、中小企業同士が系列や下請けの枠を越え、技術や人材の所在を確認することが出来るわけだ。

 ややもすれば、インターネットでは消費者向けビジネスが脚光を浴びがちだ。だが実際には、最も有望なジャンルはB to Bに関するマッチングビジネス(売り手と買手をつなぐビジネス)やコミュニティビジネスである。B to Bのマッチングビジネスに関しては、21世紀の有望ビジネスという声もあり、企業間取引を有効につなぐ仕掛けこそ、最もインターネットらしいビジネスであるという予測が一般的だ。一方コミュニティビジネスに関しては、ホームページの性格が絞り込まれていればいるほど、広告収入も期待することができる。エヌシーネットワークの場合も、バナー広告が付き始めており、単なるコミュニティ機能から収益確保への道が開け始めているようだ。
日本では中小企業のインターネット活用支援に向け、様々な試みが行われている。行政、商工会議所等が支援して立ち上げるホームページも数多い。だが情報が中途半端なこと、コミュニティ機能が乏しいことなど、当初の目的を達成していないところが目立つ。この意味では、中小企業連合が自ら立ち上げ、運営し成果をあげているという点で参考になる事例だろう。



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