サイバービジネス関連寄稿

早くも大型店問題に直面する「中小電子商店」の生き残りのシナリオとは

(B-145)近代中小企業



インターネットは中小企業に新しい可能性を開いてくれる。事実上今年は日本のインターネットビジネスの元年だ。インターネット上でも、先発する中小電子商店と、大企業サイトとの競争が激化することも予想される。せっかくこれまで頑張ってきた中小企業が早くも大型店問題に直面する。ここをどう突破するか、中小電子商店には「生き残りのシナリオ」が必要だ。



  地場商品や特化した商品を扱う店は別にすれば、機能やメリットの差別化を行いにくい商品を扱う中小企業は今後は苦戦も予想される。
 ただし今のところ一部を除いて、「大型店」の出来はかなり情けないものがある。品揃え数の多いだけの店、アメリカのノウハウを真似しているだけの店を作っても、個性や主張がない限り、それはネットでは価値を生まないからだ。
 中小電子商店には、大型店の出来が悪い内に、生き残りのシナリオづくりを始めておこう。まずは次のような点に留意すべきだ。


1)目的を明確に

 まずはこれである。自社のホームページに何を期待するかを明確にしよう。オンライン上で販売を行うEC(電子商取引)ならば、一目で「販売を行う」ホームページであることが分かるようにすること。これを3秒ルールという。「ここのホームページは何を目的にしているのか」「私はここでウェルカムなのか」を瞬時に分からせることが鉄則だ。

2)ECだけが活用法ではない

 もちろん単なる会社案内ではもったいないのも事実。見込み客の開発、取引先との商談の発掘、等ホームページは直接販売以外に、マーケティングに貢献する手段だ。この場合も出来るだけ具体的な目標を掲げた方が良い。見込み客をホームページで開発し、既存の営業チャネルで商談を進める。こんな利用法が広がっている。

3)広報部主導では成功しない

 広報的なセクションがホームページを管轄することが多いが、出来るだけ、現場の営業や開発に携わる部門の担当者が関わること。個人企業に近い形であるなら、事実上の経営責任者が携わることだ。

4)訴求商品をできるだけ絞り込む

 ホームページの鉄則は「引き算」である。これもある、これもある・・とたし算の発想で展開しているホームページは、中小企業の場合は成功確率は低い。ECであるなら、名物と強みを持つ店を展開しよう。徹底的に絞り込んだ店のことを「ウルトラカテゴリーショップ」という。この好例が沢山出てきている。ユニークなところでは、磁石の紹介と販売に焦点を合わせている滋賀県の中小企業「株式会社二六製作所」の「マグネットワールド」などが参考になる。
 ECの場合は、品揃えの規模で勝負する大型店が今年あたりから続々登場しそうだ。これに対抗する手段は、実店舗と全く同じ。「
小回りと専門性」である。

4)インターネットらしさを何で表現するか

 日本のECは事実上中小電子商店が市場をリードしてきた。彼らの成功要因はインターネットらしさを「親切、丁寧、迅速、ハイタッチ」で表現したことだ。ネット上でも事実上の対面販売を実現した。これは基本中の基本である。ただし、これを人間系で行っている限り、規模の限界は存在する。年商1億までというところだろう。

5)誇り高き中小企業のこだわりや思い入れを表現すること

 一見無機質なメディアに見えるが、ホームページの本質は、かなりハイタッチな情報表現に適していることだ。誇り高き中小企業であるなら、自分の思いやこだわりを素直に文章で表現すべきだろう。消費財であろうと、生産財であろうと、あるいはサービスであろうと、これは変わらない。インターネットは「個性と自己主張」の表現の場でもある。結果的にこれが大企業との差別化のポイントにもなる。

6)「顔の見える」ホームページづくり

 文字通りこれは顔を見せるということでもある。売れている電子商店のトップページには必ず、店主の写真が現われる。これは「顔を見せる位なら、信用のおける店だ」と消費者に思わせる、一種の信用付与の仕掛けでもある。別に顔を見せなくとも良いが、誰が、何を語りかけようとしているのかは、明確にした方が良い。ウェブマスター(ホームページ担当者)がいるなら、名前を明記した方が良い。これも大企業ホームページとの差別化要因だ。ユーザーは、顔の見えるホームページを好む。

7)ブランド力のなさを何でカバーするか

 ECを展開する際には、中小企業では知名度のなさが最初の障害になる。これはコツコツ努力するしかないが、例えば、ユーザーの意見を公開する、マスコミで取り上げられた事実を公開する、過去のホームページの歴史を日記風に紹介する、といった色々な手法がある。これは姫路の製造ハムメーカー「播州ハム」のホームページが参考になるだろう

8)リピートしたくなるコンテンツづくり

 これは大企業、中小企業関係なく、ホームページづくりの鉄則だ。「今日は何が載っているのだろう」「今日の新しい情報は何だろう」と思ってもらうことが原則。毎日は無理にせよ、月1回更新の「ウェブマガジン」方式を取り入れる、掲示板等で意見の交換を行う、単に会社案内ではない専門情報が豊富にあることを示し、ブックマークしておいて、後でまた来てもらう、といったことだ。自社で何の情報がこれに値するかをまず検討すべきだ。電子商店の運営者には雑誌の編集者の感覚が不可欠なのだ。スティッキー(粘着質)なウェブづくりを心がけよう。

9)トライアル&エラー

 日本の中小電子商店が成果を上げた背景は、これである。コツコツと一からノウハウを積み上げてきた。結果的にこの積み重ねは、アメリカの人気ホームページと変わらない位のレベルになっているところもある。例えばトップページの作り方、商品選択の方法、ナビゲーションというページのめくり方。これは自分が「ここだ」と思う先発企業のケースを徹底的に研究すればよい。インターネットでは「模倣は創造の母」でもある:

10)成長シナリオの見極めと環境変化の認識

 ECの環境は1999年秋あたりから激変してしまった。初期コストもランニングコストも低額で、口コミで成長したような、中小企業にハッピーであったような状況は2度とは現われないだろう。既に「中小電子商店」にもいくつかのパターンが現われ始めている。

「年商1億円クラブの仲間入りをし、さらに10億のシナリオを目指す」「その予備軍」「1億をハッピーモデルと考えるタイプ」「商品適性の限界から1億には遠く及ばず天井が見えているグループ」「月商100万の壁を突破できないその他大多数のグループ」等だ。中小電子商店の情報共有が進む中、「似た店」の増加が著しく、当初の感動が消えうせているのも事実だろう。中小電子商店の人には、ここを正念場と考えて欲しい。どのような成長シナリオを持つのか、今後予想される大型店との差別化のシナリオをどう考えるのか、事業拡大の「投資」や「基盤整備」をどう考えるのか、これまでとは異なった事業環境が訪れていることの認識が必要だろう。



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