サイバービジネス関連寄稿

日本企業のe-brandingが下手な理由

(B-149)〔Jagat Info 00.05)



最近はマーケティング業界ではブランドがホットなテーマだ。ブランドはパワーである、というような議論が台頭してきて、ブランド関係の本も沢山出版されている。要するに、ただの名前、商標、マークのことではなく、そこに内在する価値そのものがブランドであるという考え方なのだ。



 例えばベンツと聞けば、誰もただの車の名前だけとは思わない。そのスタイルやコンセプトを思い浮かべる。ベンツ、グッチ、ベネトンといったブランドは、スタイルやコンセプトを内在したパワーブランドということになる。
 これはリアルコマースの世界の話だが、e-コマースの世界でもブランドは重要だ。これを
e-ブランディングと呼んでいる。
 このe-ブランディングであるが、インターネットでは、
ブランドが全て、全てがブランドになっているのだ。

 理由は簡単である。商業サイトだけでも300万近くになった今、ビジネスの成否はとにかく「アウェアネスの確保」(気づいてもらうこと)になっているからだ。これがとんでもなく大変で、金がかかるようになってきた。マスメディアとの連動が不可欠。おまけに最早ネットユーザーだけではだめだ、ということでいかに「プロアクティブな客」(顧客化する以前の客)を取り込むかの競争になっている。当然リアルの世界での「存在感」を高めねばならない。

 もう1つの理由は、ネットでのブランドとは「リッチな体験」「明確なソリューション」から構成されるということだ。例えば、リアルコマースの世界では、日本の流通業はかなりブランドイメージが希薄である。三越、高島屋、あるいはダイエーという名前は企業名としては有名だが、特定のスタイルやコンセプトをイメージさせるものとはなっていない。一方あの美男子膝ま付き作戦で有名ナノードストロームは、名前を聞けば、ハイタッチなサービスを連想する。結局リアルコマースでは流通業のブランドとは「スタイル」や「コンセプト」のことなのだ。
 ネットになるとさらに条件が加わる。これが「リッチな体験」と「明確なソリューション」ということなのだ。

 ネットでのブランドとは「まず気づいてもらうこと。さらに来店したらそのサイトがその人の悩みや具体的なニーズにどのように貢献するのか明確に理解してもらうこと。さらにサイトを探索したり、購入したりした後、ああ、よかった、また来てみよう」と思ってもらうことなのだ。要するにネッとではブランドが全て、全てがブランドである。

●日本企業のe-ブランディングは何故下手か

 このネットでのブランディングが日本企業はとても下手である。それは次のような点だ。

1)
ブランドとは口にするが、ブランドの中身を理解していない

 多くのウェブ関係者はブランドが大事だ、ということを口にするようになった。だがその中身はかなり曖昧だ。広告費を投入して、名前を覚えて貰うことだ、程度の認識である。これもブランド戦略の重要な点だが、一部でしかない。

2)サイト名称の原則からかなりはずれている。:

 ブランドディングの第一は「アウェアネスの確保」(まず気づいてもらうこと)である。このためには、サイト名称は「覚えやすく良い状態にある」ことが不可欠である。 「良い状態」とはサイト名称、あるいはそれを象徴するキャッチコピーに、サービスコンセプトが内在されていることだ。
 例えば「楽天市場」は名称としては秀逸だ。「何だかよくわからないが、ごちゃごちゃしていて楽しそうなところ」というイメージを喚起している。中小優良店の集合体「逸品」も合格だ。優れた店の集まりであることを想像させるネーミングだ。旅行関係の予約サイト「旅の窓口」もいいだろう。誰が考えても、旅に関する予約窓口であることが連想できる。
 逆に大企業に多い、V−mall、P-mall、b−store,といった名前は何を意味しているかわからない。意味不明であり、かつサービスコンセプトを内在していない。e-ブランディングをネーミングという視点から見るとき、サービスコンセプトを内在しているというのはかなり重要な点である。
 オンライントレーディングの企業では「マネックス」も一歩先行している。誰が考えても「マネー」に関連する商売だとわかる。ライバル企業には「日興ビーンズ」であるとか「DFJディレクトSFG證券」等がある。だがほとんどの日本人はビーンズとは何か、SFGとは何かを理解していない。

3)キャッチコピーあるいはタグラインに無神経

 サイト名称に加え、それを象徴するキャッチコピーは不可欠である。例えばあのアマゾンは今では引っ込めたが「地球一大きい書店」を標榜していた。「逆オークション」で有名になったpricelineは「name your price」(あなたの価格を言って下さい)がキャッチコピーだ。これに対し、日本企業にはサイトコンセプトを端的に表現する言葉がほとんど見当たらない。ある大企業のサイトは「商品数2万点のメガストア」であるとか「安心と信用の店」などと書いてある。大体数百万点の品揃えを誇る専門店が多い中、2万点でメガストアを標榜する感覚が変である。おまけに「安心と信用の店」が今更キャッチコピーになるわけはないことくらい、気づくべきだろう。

4)ひとりよがり

 ある鉄道企業のバーチャルモールは「美しい時代へ・・に象徴される次世代を担う生活者の皆さまにお応えする・・」などとショップコンセプトが書いてある。だがいくら眺めても、何が美しい時代なのか、どこが次世代を担うスタイルなのか、さっぱりわからない。この種のきれいだが意味不明な言葉はウェブでは通用しない。ウエブでの表現形態は「言語明瞭」が要求されるのだ。

●ブランディングの法則

 これからはブランド競争の時代が訪れるだろう。そこでの原則は次のようなものだ。

1)ユニークかつ新しい価値の提供:これなしには、ブランド形成はありえない。
2)
リッチな経験の提供:とにかく満足度の水準を高めること。これがブランド印象形成の根幹をなす。
3)
デジタル口コミに最大源に気を配り、その質の維持に留意:店の評価のほとんどはデジタル口コミで決まってしまう。ネットでは「客が店を盛り立てる」といったことが通常に出現する。これが店のブランド形成に大きく関わってくる。
4)
パートナーを厳密に選ぶ:リンクを張りあうような場合、あるいはネット上の協業体制を作るような場合、自社のブランドの性格への影響を厳密に検討すべきだ。
5)
ブランドのパーソナリティに気を配る:性格を維持すること、コンセプトやスタイルを変えないことである。
6)
カスタマーの声に耳を傾ける:これは基本中の基本。ネットでは客がブランドを形成していく。
7)
eを止める:これは逆説的だが、単なる「電子的な商売」と見るかぎり、ネットでのブランドは作れない。商売の本質はeの世界もリアルの世界も変らないということなのだ。
8)
売るだけではない、買うだけではない:more than buyingという。再来店を促し、良質なデジタル口コミの生成を期待するための鉄則。単に商品を並べただけでは、ブランド形成は出来ないことに留意すべきだろう。



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