サイバービジネス関連寄稿

eコマースと顧客満足の関係〔JagatInfo2001.03)


一頃CS(顧客満足)ということが流行ったことがある。今でもこの概念はあるが、当時はまず「顧客満足度指数」を測定することが重要とされたのだ。日本では何でもすぐブームになるので、調査会社などはこの「顧客満足度調査」でずいぶん潤ったものである。
 さてブームは過ぎて、ただのCS調査はすっかり下火となった。単なる「満足」を測定しても、経営改善には役立たないということで、今は「顧客不満足」をいかに明らかにするか、という考え方が台頭している。



 実は内緒の話だが、この「顧客不満足」の抽出と測定を随分前から手伝っている。
不思議なことに何十社と行っているうちに次第にハナが利いてくる。会社の玄関を入り、会議室か何かに通され、打ち合わせでも始めるうちに、この会社の「不満足度」は何点かが見えてくるのだ。大体不満足度の高い企業には共通の特徴がある。
社内用語を平気で使う」「会議時間にルーズ」「女子社員がプロジェクトに参加していない」「形ばかりのCS推進部などが作られている」「すごろくのアガリみたいな人が役員になっている」「部長、課長・・と呼びあう」といった具合だ。部長や役員クラスがネックのケースが非常に多い。従来の営業手法が実は顧客不満の温床である、という事実に気づいていない。過去の成功体験を否定できないのだ。

 金融機関などはこれに加えるに、やたらに理屈っぽい。調査手法などを根掘り葉掘りたずねてくる。「多変量解析はどの手法で行うのか」などという質問が出る。
 付け焼刃でCSなどと叫んでみてもほとんど役に立たないということでもある。CSとは企業の体質や風土そのものであるからだ。これが顧客の潜在的な不満につながるという構造だ、
 さて話はここからが本番である。ネットはこのCSのレベルがとんでもなく高いのだ。

● ネットビジネスと顧客満足の関係

 ネットビジネスが壮絶な顧客満足獲得競争になっていることは周知の事実だ。大体そもそもネットとは「顧客が選ぶ」「顧客が働く」場である。主体性はすべて顧客側にある。ここでCSのレベルが低ければそもそもネットビジネスは成り立たない。

 加えてCS獲得自体が目的化したという理由もある。あのアマゾンはリピーター率8割という驚異的な水準を誇っている。その背景には賛否両論だが、物流まで自前でコントロールしはじめたという事実がある。物流を他社に依存していては、顧客へのサービス水準が維持できない、という判断があったわけだ。これは金食い虫となる戦略だが、一方ではCSの水準をとんでもない高いところに引き上げる効果ももたらした。ネットではライバルに比べ顧客満足が高くなければ生き残れないということが常識化したのだ。

 このCS獲得競争はとどまるところを知らない。おまけにCSにスピードの要素が加わってくる。今まで私たちは注文した商品が1週間位で届けば満足していたのだ。だがネットではここが差別化の軸となってくる。2日後、1日後とスピード配送競争は激化し、ついには1時間後に届けるところまで行き着いた。 

 かくして、ネット上の顧客満足獲得競争は一層過熱している。結果的にコストもかさむ。だがここで勝たないことにはネットビジネスの勝者にはなれないのだ。実店舗では不満として顕在化しないことでも、ネットではそれが顧客不満になってしまう。

● 日本業サイトのCSレベル
 このとんでもなく高いところに設定されてしまったCS獲得競争に多くの日本企業サイトは追いついていない。というよりも、顧客不満を創出していても、鈍感な事例が目立つ。

1)振り込み失敗でも手数料だけはちゃんととるオンラインバンキング:

 ネットや携帯を利用したバンキングは、サービスの中でも有望なものの1つ。プレーヤーもネット専業、既存銀行と多様化してきた。流通業母体の銀行や家電メーカー系銀行の参入も予定されるなど、激戦区にもなりそうだ。だが実態は横並びで、オンライントレーディングのように「手数料削減競争」など起こりそうもない。振り込み手数料はATMと比べても大差はない。

 ATMとネット振り込みの大きな違いの1つは初めての場合、相手先の名前の入力が必要かどうか、ということだ。ネットではこれが一字一句正確に要求されるのだ。ここがいやに厳密で、機械的にエラーをはじいてしまう。恐らく振り込みエラー率はかなり高いはずだ。だが例え振り込みが失敗しても手数料だけはちゃんと引き落とす。あるネット専業バンクの場合は142円、ある大手都銀の場合は何と620円だ。顧客にとっては、振り込みには失敗するは、手数料は取られるはで、ふんだりけったりである。だが銀行側にしてみれば、当然の権利なのだろう。少なくとも3回の失敗までは許容する位の融通性はあってもよさそうなものだ。もっとも銀行は手数料収入が生命線であるので、ここの「値崩れ」や「取りっぱぐれ」は死んでもいやなのだろう。

2)会員制を強要するショッピングサイト

 最近のショッピングサイトは何故かトップページから会員番号とパスワードを要求する。一体これが何のメリットがあるのかというと顧客サイドにはほとんどない。自社の都合だけである。そもそもオープンを特質とするネットで、何をもってクローズドな視点を取るのかが明確でない。
 会員番号やパスワードの入力とは顧客に負荷を与える行為の最大のものであり、しかもその管理が面倒なのだ。
 ID化を要求するのであれば
明確なメリットを提供すべきだ。その内容とは日本アマゾンのように1度登録さえしてしまえば文字通りワンクリックでのチェックアウト、あるいはエクスプレスチェックアウトのシステムが代表だ。だがエクスプレスでなくとも良いという人には、ID不要のインターフェースを残しておくべきだろう。

 さらにはID化することで、画面がパーソナライズされるのであればまだ我慢はできる。家電やPC販売のムラウチのサイトはIDを入力することで、画面の価格はすべて会員限定価格に変わってしまう。同じくPCリテイラーのソフマップでは、「お買い物帳」なるものが表示され、過去の購入商品とそれを売った場合の「買い取り価格」が明示される。
 安くなるのでもない、便利になるのでもない、パーソナル対応されるのでもない癖に、妙な会員化はしないでもらいたものだ。

3)意味不明な会費の請求
 最近オープンした金融サイトは月額維持管理料を
200円も取るらしい。だが金を払うと何か良いことが有るかというと大したことはない。ほとんどが無料サービスで行われていることばかりだ。200円の意味はサイト内の銀行で口座を作った人(維持管理費用は無料)との差別化の意味でしかない。

 さらには老舗の書店サイトの入会金も意味不明だ。何のメリットが還元されるのかが不明で、単なる赤字補てんにしか見受けられない。参入企業も増え、明らかに格差が目立ってきた。

 要はネットでは企業の都合で物ごとを考えてはいけない、ということなのだ。



to section index  to previous  to top  to next