ある意味でこれは当然だ。ネットでの競争のポイントは「フロント」から「バック」に移っている。フロントとは店構え、品揃え、使いやすさといった顧客の目に見える部分だ。これに対してバックとは物流、決済、システム等インフラ部分だ。バックオフィスが充実していることこそが、高い顧客満足度の背景になるという共通認識になってきた。クリック&モルタルはバックオフィスへの投資コストが相対的に少なくて済む。
それでは、日本版クリック&モルタルも同様に好調かというと、話はそれほど簡単ではない。小売業を例に取ると、成果は見事に二分されている。
どうも日本では小売業は「保守本流組」と「新興勢力」に分かれるのだ。保守本流組の代表例は百貨店だ。大手流通グループや大型量販店などもここに入る。自己評価では保守本流だが、実態は「守旧派」である。かっては新しい勢力の代表であったコンビニも最近はどちらかといえば体質は守旧派になっている。
小売業界の新興勢力とは、ディスカウンターや専門店チェーンなど。ユニクロ、マツキヨなどが代表例で、家電量販店の大手などもこのグループだ。消費者からみると、どちらも立派な小売業だが、業界内では暗黙の対立の構図もある。守旧派は「ただの安売り屋じゃないの」などと相手をけなしていたりする。
さてECであるが、この2つの勢力のどちらが成果をあげているか、というと圧倒的に「新興勢力」だ。ことECに関しては見事に成果の差がついてしまった。理由は3つだろう。
保守本流型の多くは「百貨」や「総合」を標榜する店だ。だがネットではこれがさっぱり効果を発揮しない。実店舗と同様に「ワンストップショッピング」を狙うが、これまた発生しにくい。用が済むととっとと帰ってしまう。おまけにネットには立派な専門店が無数にあり、総合店の品揃えはどうしても見劣りがする。ネットのオキテは「スペシャルイズスマート」(専門的であることが賢い)なのだ。
2つ目の理由はサービスのレベルだ。保守本流組は、「対面販売によるハイタッチなサービス」を標榜するが、実際の実店舗のサービスレベルはかなり低い。つきまとわれるのをいやがる消費者は多いのだ。ネットとは実店舗のこうした「プレッシャーセールス」から解放される場だ。つまり保守本流組は自らの現状を自己否定しない限り、ネットでの成功は覚束ないということになる。
3つ目の理由はトップの理解度や熱意の違い。日本で成果をあげているクリック&モルタルの代表例はパソコンリテイラーや家電量販店のサイトだ。トップクラスで年商100億円規模に達している。彼らは小売業界では新興勢力だが、ことECに関しては5年近い経験を有している。トップクラスの店の共通点はトップがECを理解し、熱心であることだ。結果的にヒト、モノ、カネをきちんと投下している。コールセンターなどバックオフィスの充実が不可欠だが、これも先駆けて充実させた企業もある。
これに対して保守本流組のトップは単なる「ネット通販」程度の理解度しかないところが多い。実店舗よりはるかに顧客満足獲得競争のレベルが高いこと、ネットならではの売り方やノウハウがあることをまず理解していない。ECの推進体制は社内の通販事業部の別動隊のような程度。既存のノウハウをネットであてはめることしか考えていないようだ。
さてイソップ物語ではないが、ここから得られる教訓とは「ネットでは保守本流のノウハウはあまり通用しない」「ネットビジネスの成果はトップの理解度と相関する」ということなのだ。 |