サイバービジネス関連寄稿

情報システム部に求められるリデザイニング


もう5年以上前の話である。ある大手金融機関に男性新入社員が入社した。これが飛び切りのオシャレ。あるファッション誌の編集長に言わせると、男子学生は相当オシャレな子でも、就職するといきなりファッションレベルが低下するという。会社とはかくもアンファッショナブルな場である、というのが編集長の主張である。



 それはともかく、このオシャレ青年のセンスは入社後も低下しなかった。真っ黒なスーツにピンクのシャツ。足下はといえば魔法使いみたいなとんがったブーツを履いていた。困ったのは人事部である。「こんなヤツは客の前には出せないぞ」と思ったらしい。彼氏は外部から隔絶された「情報システム部」、それもクリーンルームみたいなところに配属された。我慢できたのは2年ほど。今では音楽産業でイキイキと働いている。大体オシャレな子が金融機関を志望するというのもヘンな話だが、オシャレな若者を隔離する場として「情報システム部」が選ばれるというのもヘンな話だ。

 さて無駄話をもう1つ。ここにきてeコマースの勝ち組はクリック&モルタルということになっている。だがクリック&モルタルの全てが上手くいっているわけでもない。勝ち組の条件の1つは、「実店舗で最も接客レベルの高い社員をネット部門に抜擢する」ということなのだ。裏返せば最先端のジャンルだからといってシステムや技術に強い人間を配置してもダメヨ、ということでもある。現実にはネットビジネスの現場は、実店舗を上回るサービスや顧客満足レベルで勝負している。当然、最高の接客技術を持つ人間が不可欠というわけだ。

 eコマースの恐いところは、サイトを一目みると、出来栄えがわかってしまうところだ。品揃えの幅等から勘案すれば、およその年商も推測できる。ついでにいえば、「ネットの商売がわかっている人の目が加わっているな」ということも見えてくる。逆に、情報システム畑の人間が主導権を取ったな、という店も一目みれば大体分かる。この反省から、戦略構築、システム設計、クリエイティブワークまでトータルにこなせるシップス(SIPS)企業が一頃脚光を浴びたものである。だがこれも名前だけで実力のない「自称シップス」が横行し、神通力が低下してしまった。

 重要かつクリエイティブな業務のはずなのに、情報システム部の評価はなぜかくも一面的なのだろう。「商売を知らない」「センスが悪い」等々。これを事実と見るのか、固定観念と見るのか、議論は分かれるところだ。

 2〜3年前まだITバブルがはじける前、アメリカで流行っていた言葉があった。「リデザイニング」である。まあ再設計すると言った意味だろう。
 特に対象となっていたのはコンテンツデザイナーであった。。単なるデザインからHTML→ JAVA→サイトマネジメント→e-commerceと業務領域は多面化する。この時デザイナーはどう自らをリデザインするのか。ここでの仮説は2つだ。1つはデザイナー自身の能力はそんなに変わるものではない。だから
ソフトウェアの方でここをカバーしようとする考え方。もう1つはデザイナー自身が自らの資質、能力を調整すべきだという考え方だ。この後者が「リデザイニング」である。

 同じことは情報システム部門にも要求されるはずだ。時代に合わせた「リデザイニング」が果たして行われたのか疑問は残る。
 デザイナーは自らの資質を高度化しなければ生き残れなかった。それはe-commerceやマーケティングの知識はもとより心理学や哲学でもあった。
 この状況を分析した「デザイナーの自殺とサバイバル」と言う論文を読んだことが有る。結局ウェブとはあらゆる職務にリデザインを要求する。「
情報システム部の自殺とサバイバル」という論文も早晩登場しそうだ。



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