サイバービジネス関連寄稿

こりゃ、だめだ!ホームページ講座
ー第1回「顔の見えるサイトづくり」ー


この連載は全く不定期である。気が向けば書くし、向かなければ書かない。何しろ原稿料というものを頂かない全くの書き下ろしなんだから、何を書こうと自由だ。ただ一応タイトルは「こりゃ、だめだ!ホームページ講座」ということにしましょう。これには本家があって、「だめだ、こりゃ!ホームページ講座」というメルマガ連載をしているNCネットワークから正式にのれん分けをしてもらった。というわけで、このバリエーションは色々ある。「こりゃ、何だ!」「こりや、ヘンだ!」「こりゃ、大変だ!」と様々に想定できるので、これらのテーマで書きたい人は、本家に一応申請してください。



●評価基準は第一印象である

偉そうにサイト評価をしていますが、何か評価規準があるのですか?」とよく尋ねられる。答えはNoだ。全くもってありません。大体、日ごろから主観の世界に生きていて、特に仕事上不自由も感じない。おまけにネット社会がこれを後押しした。ネットの本質とは、一見大衆民主主義のように見えるが、主観、独断、意見なきものは去れ、ということだ、と前々から思っているからだ。

 かくして、評価規準の最大の要素は第一印象だ。「あ、いいな!」「やる気があるな!」という印象を与えているか、である。不思議なことに、ウェブは会社の事情、姿勢、体質を浮き彫りにするメディアなのだ。口先だけの顧客志向を唱える会社のウェブは、すぐその姿勢が露呈してしまう。ウエブとは「社内事情を見透かされるリスクをはらむメディア」「企業の姿勢を反映するメディア」でもある。雑誌記者の人に聞いた話だが、ウェブマーケティングでそれなりに成果をあげている企業のウエブ担当者は異口同音にこのことを口にしたという。ワタクシの主観も当たらずとも遠からずである。

 この恐さを知っている企業と知らない企業との差を、消費者は一目で見抜いてしまう。 一頃「ファーストインプレッション理論」というのが流行ったが、これも結構真実を付いている話だ。

 この第一印象を形成する要素は沢山ある。ページタイトルやサブタイトルももちろんそう。情報デザインの巧拙も影響する。なぜか第一印象という言葉を勘違いして、一部業界ではフラッシュを駆使した動きのあるウェルカム画面がもてはやされているが、これなどは、デザイナー、担当者の自己満足以外の何ものでもないだろう。

●顔を見せるということ

 第一印象を形成する最も重要な要素の1つが「顔を見せる」ということだ。これは恐らくネットビジネスの永遠の課題だろう。今は消滅したが、ワインの名店Virtual Vineyardは創業者のピーター・グラノフあっての店だった。
 「顔を見せる」とは何なのだろう。文字通り売り手、作り手の顔を見せるということ。非対面のバーチャル空間で、フレンドリーさをイメージしてもらうということ、中小店ではまさに「顔写真の掲載」により、信用保証の仕掛けとして利用しているところもあった。「顔写真を見せている位の店なのだから悪いことはしないだろう」と思わせる仕掛けである。これはなかなか効果があって、その後制定された「オンラインマーク」や各種のエムブレムよりはるかに効果があった時代もある。

 だが本質は違うだろう。売り手の主義主張、こだわり、個性を見せるということである。中小オンラインショップはノウハウの共有が進みすぎて、こだわりがない店の癖にやたらに顔写真が登場。こうなると、逆に店の価値が低減して見えるから不思議だ。

 もっとも上手に顔を見せている店もある。セクシー下着専門店プチメリーは、トップ頁にボンデージだの、ゴスプレだの刺激的な言葉が並ぶ店。だが売り方はいたって真面目だ。セクシー下着だけで2万点の品揃えを誇り、ユーザビリティのレベルも高い。「実店舗では少々気が引ける商品を心ゆくまで選ぶ」というコンセプトもネット向きだ。バレンタインの頃、なぜかセブンドリームでもセクシー下着を売っていたが、いかにも付けたしという感じ。専門店の厚みには到底かなわない。ここではファッションアドバイザーの亜美さんが「今日はお店で取り扱っている商品を着てみました。皆様にお見せするのはチョット恥ずかしいですが・・」なんて書いてある。ここを読んだだけで思わずクリックする人も多いはずだ。

 DVDは今やネット上の戦略商品。書店でもCD店でも家電店でも売っている。この中で専門店として気を吐くディスクステーションは店長の鎌田さんの存在感がそここに見える。
 ワインや書店はもっとも「顔」を見せやすいジャンルだ。中小企業の希望の星、ワイナリー和泉屋は文字どおり「ハルさん」(新井治彦さん)がうんちくを語る店。同じく根強いファンを持つ小仲酒店は、小仲律子さんの半端じゃないセンスが強烈な印象を与える店だ。一方サントリーのeワインは情報こそ多いが、さっぱり顔が見えず。第一印象理論でいくと、「
活気がないな」という印象を与えてしまっている。

 書店で顔の見せる店といえば、bk1がトップクラス。eショッピングブックスもそれなりに工夫しているが、bk1の安藤店長の眼力にはかなわない。情報デザインが見事だ。もっとも玄人受けしすぎのような気もするが。
 これに対し、オンライン書店の老舗紀伊国屋は、これほど頑固一徹、オンライン書店としての変身を拒否しているようなところも珍しい。ここは店ではなく検索データベースサイトだろう。だが最近はなぜトップページの文字量が格段に増え、何やら
ヤケクソ気味。今のままでは売上げは永久に公称数字の40億どまりのような印象だ。

 要するに、顔の見せる店とは「オヌシ、出来るな!」という人の気配でもある。それが店の個性、勢い、活気、第一印象に反映してくる。
 さて「顔を見せる」は中小企業の専売特許のように言われるが、アメリカのサイトでは結構中堅サイトも顔が出ているケースが多かった。サイトに出ずとも、メルマガ、顧客サポート、相談等のインターラクティブセクションでは、担当者がきちんと顔を出すケースも多い。

 百貨店サイトは総崩れだが、個人的には西武百貨店はいいと思う。ヘンテコなオンラインショッピングに踏み込まないのも見識だと思うし(本当はやりたいのかも?)、売り場の目利きがそこここに顔を出すコンセプトも良い。

こりゃ、だめだ大賞

 さて、今回の「こりゃ、だめだ!大賞」は日立のパソコンBTOショッピングサイト、日立インターネットショップに捧げたい。「くま店長」が文字通りトップ頁に写真付きで登場。中小企業で通用するノウハウが日立のような企業で通用するか、というと答えはノーだろう。何やらわざとらしい。日立のパソコンをメーカーサイトで買うユーザー層が限定されているという苦労はわかる。だがヘンな中途半端なコラムだの、インターネットビジネス入門だのたいしておもしろくもない情報が多すぎる。「人気のFLORA」を売っているサイトだが、FLORAにすごい人気があるとは誰も思っていない。そうであれば、変な付加価値情報や店長の顔を引っ込めて、機能に特化した直球を投げるべきだ。

 もっとも日立の名誉のために言っておくが、パソコンメーカーのBTOサイトはどこもイマイチである。戦略、コンセプトが明確なデル、ソーテック、ブランドイメージが確立しているソニー、アップルを除くと、総崩れという感じ。大体NECの121は意味がわからない。よくよく見たらワンツーワンの意味らしい。お客にはどうでもいいことだろう。東芝に至っては、5月28日に見たのに、「連休中の休業のご案内(4月22日)」が載っていた。東芝はBTOに関しては先駆けのはずだったが、社内にノウハウが全く蓄積されていない印象。情報鮮度の感度の悪さはそのままやる気のなさの反映であることが多い。

 IBMも想像するに、マーケティングリサーチだの、膨大な資料だの、会議だのを経た「戦略サイト」なのだろうが、情報は見にくいし、よほどの根性のある人でないと買いにくい作りだ。第一印象でピンと来るものもない。恐らくはセンスのある担当者を1人連れてくれば解決する話のように思われるが、そういうわけにもいかない会社なのだろう。

 センスといえば、松下のパソコンは「公式ecサイト」パナセンスの中で売っている。だがこれはネーミングに無理がある。松下にセンスなんて言われたって、フフフ・・と思うのは性格の悪いワタクシ位なのかもしれないが。パナセンスではその昔「センスアップした特選商品」というコーナーがあって期待して覗いたら、なぜか消火器を売っていた。これが松下流センスなのかしらん?

 というわけで、実名があがった方はごめんなさい。まったくもって無視して頂いて構いません。



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