内職で「顧客不満足度調査」というリサーチを長年しているのだが、大体数十社も実施していると、第一印象で「この会社は何点だ」というのがほぼわかってくる。これは、一歩会社に足を踏み入れた時の、ありようだとか、会議の進め方、使っている社内用語等からわかってくるもの。第一印象とリサーチの結果はほとんど誤差はない。
このリサーチ結果をトップマネジメントに報告するわけだが、この状況で「この会社は再生するな」「リサーチどまりだな」というのも大体わかってくる。
一方、eコマースの話を聞きたいとかで、これまた呼びつけられることがある。eコマースの成否はほとんどが「トップの資質」に影響される。業種適性のある業界で、A社は成功、B社が伸び悩んでいる理由は、B社のトップの理解度が低いからだ。
大体顧客不満の高い会社、eコマースが伸び悩む企業のトップには共通要因がある。
次のようなところだろう。
●情報源が狭い
eコマースに関しては、これが大きい。大体業界内やトップマネジメント同士の情報チャネル位しか、もっていない。後はせいぜい「日経ビジネス」というところだろう。現場、あるいはエンドユーザー情報のチャネルを持っていない。自ら体験もせず、eコマースの何たるかは、さっぱり理解していない。大体、この種の企業は何をやるにしても「追随型」で、先行することは滅多に無し。まれに開始時期は先行企業と変わらないケースもあるが、その成果には大きな差がつく。理由は、トップが適切な時期に適切な判断をしなかったからだ。人、モノ、金を投じるタイミングを逸したことが、低迷の背景にある。
●怒る
「お宅の会社はこんなに顧客不満を招いている」といっただけで怒るタイプ。「調査方法がヘンだ」とか、「過去の社内調査ではこんなに良かった」などと反論する。だが大体過去の社内調査なるものは、「自己満足調査」であることが多く、役に立たないものだ。
怒る理由は2つ。自らの無能力を指摘されるのがイヤだという、本人の感情論の問題と、社内から情報が適切にあがっていないという組織上の問題。後者に関して言えば、役員クラスが「情報の関所」になっており、イヤな情報を上げない仕組みが確立しまっている。もっとも、怒り心頭だが、怒りつつも「怒りを行動に結びつける」というタイプもまれに存在する。これなどはまだ救いようがある。
●やたらに謙虚に反省する
「いや〜、全てはワタシの責任だ」とか「ワタシが悪かった」などと謙虚に反省するタイプもたまにいる。だが成果には結びつかず。反省どまりで実効策がない。
●マゾヒスト
「謙虚に反省」の亜種である。「もっとぶって!」の世界で、厳しいことを言われれば言われるほど身をよじって喜ぶ。もっともこれは社内向け演技であることが多く、概してこの種の会社のボードメンバーは無能だ。無能な部下への「刺激」を演出するという意図もないわけではない。
逆に、担当部から「激辛でお願いします」などと言われることもある。これまた無能なボードメンバーへの刺激を期待するわけだが、一過性に終わることが多い。担当部としては苦難の日々が続く。
●外の声大好き
何か、新しいことがやたらに好きなタイプ。eコマースであれば、コンサルティング会社や、著名な虚業家の言うことを重視する。社内の人材養成より外の声を重視するから、社内は役立たずのコンサルティングレポートの山。本業では実績も見識もある経営者が、ことeコマースとなると、コロっと外の声にだまされるようなケースも最近目立つ。本業もeコマースも経営判断の中身に違いがあるわけではなし。eコマースだからといって、自らの判断を曇らせる必要は全くないのだ。先日ぶちあげていた某ハンバーガーチェーンのeコマース構想は一体どうなったんでしょう?
●自己否定せず
流通業や、金融サービス業に多いタイプ。現場での叩き上げで、偉くなってきたトップが多い。これが悪いわけではないが、従来の営業ノウハウで偉くなったわけであるから、それが通用しなくなってきていることを「本能的」に拒否する。
この種の企業は「お客様第一」であるとか、「顧客志向」などと叫ぶのが好きだが、その中身は「お客様は神様なのだから、無理難題にも誠実に対応」といったレベルで、顧客マネジメントの戦略が存在するわけではない。既存の販売ノウハウ、既存の営業政策、既存のチャネル政策の温存が第一目的となるわけで、ある意味で自己否定から始まるeコマース分野のパフォーマンスは極めて低い。まず既存政策との調整が重視されるからだ。某社のeコマース会議とやらに呼びつけられたことがあるが、何と100人も出席していたのにはびっくり。互いに名刺交換していた。これでは社内調整で日が暮れてしまうわけだ。
●自称柔らか頭
自分以外の役員や部下は皆頭が堅いと思っているタイプ。外資系企業のトップを経た人などに目立つ。要するに自分だけは頭が柔らかく、発想もユニーク、川下のことも十分に熟知しているなどと自負している。もっともeコマースの講演会で話していることを聞いていたら、事例は古いしいつも同じ。大してユニークでもない。情報源はかなり狭いと見た。この種の自称柔らか頭は、周囲の人にとってはもっとも始末が悪い。
●別世界
業界トップ、業績もそこそこ。株価もまあまあ、というこの不況下実にしあわせな会社だ。だが社内に危機感はなし。「この幸せは永遠に続く」と思っている気配だ。この種の会社が、一歩間違えると転落の歴史をたどることになるのは、過去の数例が証明している。
社内の空気も世の中とは全然違うが、地方の工場、営業所レベルになると、さらに輪をかけている。概して、トップ人事は営業、技術の順送りであったりして、権力争いも希薄。要するに世の中とは相当に温度差のある会社。平和時はそこそこに勤まるトップも、いざ臨戦態勢になると、全く機能しないことがばれてしまう典型である。
いずれのケースも結果として起る事態は「消費者、顧客との視点のズレ」である。記者会見に話は戻るが、一般の主婦は本社と子会社の違いなど理解していない。「社内調査をする」などというが、なぜ社内調査に何日もかかるのかも理解しない。なぜトップに事情が伝わっていなかったのかも一般消費者の理解を越えるところだ。要するに、「企業の事情」なるものは、内部事情にしか過ぎず、消費者とは全く無縁であることを認識すべきなのだろう。
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