●ステキな節約生活の実現
経済環境はイマイチぱっとせず。可処分所得も実質マイナスの家計が増えている。当然「節約」がキーワードになるところだが、豊かな時代を経験した私たちの価格心理はそう単純でもない。
節約といえば貧乏臭い印象を与えかねないが、今のトレンドは「ステキな節約生活の実現」といったところ。節約達人の様々な技がテレビで紹介され、評判を呼んでいる。家族4人で予算200円の夕食などというと、いかにも困窮世帯の食卓を思い浮かべるが、実際は違う。工夫次第でステキなメニューが再現される。節約は21世紀に習得すべき「先端ライフスタイルの1つ」になってきている。そう考えなければ暗くなるばかり、という一面もあるが、1円、10円、100円の価値が新たに見直されたという側面も無視できない。何も考えずに千円札、1万円札を取りだすスタイルは「時代遅れ」というところなのだ。
「激安」はすっかり時代のキーワードになったが、消費者側の意識といえば「激安ショッピングは快楽だ」といった側面もある。何しろ100円ショップ、99円ショップの品揃えと品質の充実ぶりは半端でない。思わず買い物カゴを一杯にしてしまう誘惑にかられる。これが「節約ライフ」かといえば矛盾するが、何しろカゴ一杯の買い物でも、購入額は千円もしない。高額所得者に激安アウトレットや100円ショップのファンが多いのも、「快楽だ」と思えばうなずける。
一方、割安一辺倒というわけでもない。価格政策には2つの考え方がある。1つは品質はそのままに価格を下げるというもの。デフレ時代の主流はこちらの方だ。その下げ幅が「驚き」「楽しみ」を演出する仕掛けになっている。
もう1つは価格実額は変えずに、品質価値を高めるというもの。いわゆる付加価値政策だ。実額は高いが、自分なりに価値のあるものは購入するという視点だが、こちらも捨てたものではない。いわゆる「産直グルメ」「取り寄せグルメ」はブームだが、価格は安くはない。これに生鮮品、冷凍品の送料を加えれば、結構な額になる。それでも購入者が増えるということは、一方でグルメの質も変わっているということなのだ。「有名グルメ」から「こだわりグルメ」へのニーズが台頭している。例えば「漁師の誰それが釣り上げた阿久根の真鯛」「静電気選別方式の幻の棒茶」「幻の美味魚、えんざらの一夜干」といった具合。こうした超こだわりグルメを集めて販売しているインターネットショップの1つが「ウマイモンドットコム」(http://www.umai-mon.com)だが、月平均購入額数万円の客、中には20万円を越える客もいるという。
この一見矛盾する購買行動が1人の消費者に併存するのが今の特徴だ。結局は2つの価格政策をシーンに合わせ上手く取り入れるのが勝利の方程式ということになる。
●消費者が価格決定に踏み込む時代
ネットの登場は価格のあり方を大きく変えた。一番大きな変化は消費者が価格決定権を握ってしまったことだろう。例えば今ではすっかり当たり前になったオークション、共同購入といったネットならではの販売形態は、価格を事実上消費者が決定する。消費者が希望価格を指定して、その価格に業者が逆に応札する、「逆オークション」といった販売方法も従来の価格政策の常識を一変させた。何しろ、これまで踏み込むことが出来なかった価格決定に、消費者が参加してしまうのだ。これがネットの商売が「バイヤードリブン」(買い手主導)といわれる由縁でもある。
価格比較もネットの得意技の1つ。日本での価格比較サイトの草分けは「価格.com」(http://www.kakaku.com)だが隠れたパソコン初心者の主婦ファンが多い。始めてネットの世界に入ってきた彼女達にとって、価格比較は最も魅力あるコンテンツの1つなのだ。家族の大きな買い物の前には、まずお母さんが価格比較サイトにアクセスし、価格の現状をチェックする、といったシーンが浸透し始めたのだ。
一見消費者に価格決定権がないような商品にも、価格チェックの波が押し寄せている。好例は自動車保険だ。各社の見積もり一斉比較が可能なサイトがアクセス数を伸ばしている。これまでいわば「言値」で契約していた商品、サービスに消費者のチェックの目が及び始めている。
消費者が商品開発に参加できることをうたい文句にするサイトも増えているが、当然価格は「消費者の納得価格」が前提だ。仕様、価格の幅を決定しておいて、作成メーカーを募るケースもある。これまた価格決定権は消費者側にある。
●中小企業への影響
消費者意識の変化、ネットの影響と中小企業が考えることは多い。ここで価格政策を見直す必要もありそうだ。単なる安さでは勝負が出来ない時代が来ている。
例えば価格政策の手法の1つには「心理的価格政策」というものがある。代表例は「マルチプルプライシング」(複数価格政策)というもの。つまり3缶88円といった売り方のことだ。「端数価格政策」というものもある。これは当たり前の手法だが、90円で売るより、かえって98円の売価の方が売れたりする現象を価格政策に反映させたもの。いわゆる「端数」が割安さを心理的に刺激するということだ。この「心理的価格」は業態、業種により微妙に異なる。「こんなことは商人の常識だ」というなかれ。意外に単純かつマンネリの価格設定をしている店は多いのだ。
オークション、逆オークションといった手法も実店舗で採用できる可能性はある。購買希望者を募り、人数が増えれば価格が下がっていく手法などは、店のにぎわいの演出にも役立つ。
ネット通販になれた消費者は送料無料、消費税込みで3千円といった「ポッキリ価格」が大好きだ。もちろん送料は結局は売り手負担なのだが、価格に含めることで、ネット通販に対する抵抗感を減少させる効果は果している。もちろん単なる「送料無料」より、「5千円以上お買い上げの方は無料」が適切であることは言うまでもない。客単価をアップさせることにより、少しでもコスト吸収を図ることができる。価格についてまだまだ考えることはあるはずだ。 |