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間違いだらけのカード戦略
保険毎日新聞:97.9(C2−06) |
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■保険業界は7〜8年前は非常にカードに関心が高かったものである(今もあるかもしれないが)。実によく勉強していたが成果はさっぱりで、次第に尻すぼみになっていったような記憶がある。
筆者は一方でカード戦略を専門とするが、過去10数年カードの歴史を見ていて、断言できることが2つある。それは「カードは向かない業界には全く向かない」ということと「カード戦略の耐用年数は3年である」ということだ。保険業界は今の業容である限り前者に相当する業界である。
さて昨今はまたカードブームである。百貨店等の流通業、最近では航空業界が大騒ぎだ。その戦略は客観的に見て間違いだらけだ。多くはトップマネジメントの判断ミスである。 保険業界にはカードは向かないが、他山の石として、そのエラーの内容を見てみよう。なおここで取り上げるカードとは、クレジットカード会社のカードではなく、マーケティング手段としてのカードである。 |
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●百貨店業界のエラー
百貨店の一部が大きな間違いを犯している。その最たる例が、某老舗百貨店の事例だ。ここではクレジットカードをカード会社と提携で発行している。カード客には一律5%割引を提供する。さらに現金購入時でも5%割引が受けられる。
何故これを戦略ミスとするのか、理由はいくつかある。今はやりのカードサービスは大きくは割引サービスとポイントサービスに分けられる。これは似て非なるものなのだ。一般論として一律割引をサービスとして付けるのは間違いである。割引とは時と場合、あるいは顧客を選んで提供すべきもので、ベタに提供したのでは、単に5%割引業態への業態転換に過ぎない。
一方ポイントとは「良く買う客こそ良い客である」ということをシステム的に展開できる唯一の手段である。これを最近のマーケティング用語では「フリークェント・ショッパーズ・プログラム」(FSP;多頻度顧客プログラム)という。要はたくさん利用してくれる優良客に重点的にサービスを還元し、結果的に自社を支持してくれる固定客づくりを目指す戦略なのだ。割引カードとポイントカードとは全く性格の異なるものなのだ。ただこれを理解している人は少なくて、経済誌や経済新聞の記事でも混同して比較したりしている。
●航空業界のエラー
エアラインは今ポイントカード競争で大わらわである。これが例のマイレージサービスである。国際線では当たり前だが、国内線でもマイレージの導入が始まってしまった。
これも明らかなミスである。大体三社しかない国内線でカード競争をすること自体が矛盾である。利用者の方は三枚持てばよいだけで、固定化にも差別化にもなりはしない。
「おかげさまで250万人になりました」などと言っているが、エアイランという業態で単なるポイントカードの顧客が250万人も必要かという問題も残る。膨大なデータベースが必要なだけで利用価値は少ないとみるべきだ。
エアライン側の理屈としては国内線利用顧客を国際線需要に吸引するとの言い訳がなされている。これも理屈としてはナンセンスで250万人ものいわば一般大衆顧客が海外利用する場合は、エアラインの選定権はほとんどないに等しい。国際線を正規料金で乗る可能性は低いと見るべきだ。
となると国内、国際ともに頻繁に利用するようなビジネスマン層の吸引策となるわけだが、これについてはエアラインでは今のような大騒ぎの前から手を打っていたのだ。すでに固定化すべき客は固定化されており、ここに今更、一般大衆の顧客情報を加える意義は見いだせない。
一頃羽田では、カード獲得競争で大わらわであった。二度と飛行機に乗りそうもないおばあさんや、とても優良客候補とは言いがたい修学旅行生などがカードカウンターで申し込みを行っていた。これらの層を含めて250万人云々を誇るなどというのは、愚の骨頂である。
おまけに某社などはこのキャンペーン期間にストライキを打っており何をかいわんやとはこのことである。
要するに今の航空業界のマイレージカードとはこと国内線に関する限り、単なる割引の提供にすぎない。こうした明らかなミスを犯したのは、一社が国内で始めてしまい、競争上追随せざるを得なかったという事情があるのだろう。
●カードの本質
目下話題となっているのはいずれもポイント系、マイレージ系のカード戦略である。この背景には、「顧客シェアの最大化」を企業目標とするマーケティング戦略の変化がある。顧客シェアとは、その顧客が生涯に利用する特定需要を最大限一社で取ってしまうという戦略である。業界シェアで競うのではなく、生涯需要の最大化を図るという戦略なのだ。 このためにカードは非常に有効なツールである。なぜならば息の永いつき合いをするためには、顧客のあらゆることを知って置いた方がよい。また顧客が利用すればするほど得になる固定化策が伴っていた方がよい(これがFSPである)。
この基本理念は正しいが、いざ戦術論になると、日本ではゴチャゴチャに混乱してしまうのだ。結果的に業界内で競い合い、サービス競争を繰り返し、消耗し、見直しが始まる。このサイクルが約3年なのである。おまけにカードは企業内で戦略業務とはいいがたく専門家は養成されにくい。結果的に企業内でノウハウが持続しないという特徴もあるのだ。 |
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