●定性情報とは何か
統計的、あるいは情報学の分野では定性データ(qualitative data)とは、
・名義尺度(性別、職業など)
・順序尺度(○○が一番好き・・、赤より黒が好き)
・態度尺度(○○についてどう思う・・・)
の3つに区分する。この定性情報、とりわけ顧客のニーズや意見に関する定性情報をいかに経営判断の情報にするかが、今の1つの焦点である。
具体的には「お客様の声」「顧客クレーム」といったいわゆる「お客様の声」関係の情報の他、メーカーであれば、開発系の業務で収集される様々な「顧客定性情報」が存在する。だが企業内での定性情報の活用状況を見ると、次のような問題がある。
・定量情報重視体質
・定性情報を経営判断のベンチマークとして見る習慣がない
・開発系(プロジェクトベース)の活用中心
・部門横断的活用視点薄い
・相談、クレーム情報は待ちの姿勢で収集されており、潜在的な不満が判明しない
・潜在的かつ根本的な不満を汲み取る手法がない
つまり、企業内には山のような定性情報が存在するが、それをシステム的、横断的に分析する手法が存在していないことが多い。
多くの企業では顧客クレーム情報やお客様意見といった情報はデータベース化され、それなりのキーワードで検索できるようなシステムになっている。だが顧客クレームなどの日常のルーチン業務系の情報分析手法と、キーワードやひらめきを重視する開発系の情報分析手法との整合性がとれていないことが多く、折角の宝の山も単なるデータベースで終わっていることが多い。
ところで最近のナレッジマネジメント関係の考え方では、経営判断(問題解決)のための情報を次のように分類している。
・事実(データ/定量・定性)
・法則・原則
・経験則
・推定・推測
・意見
・想像
この6項目の内、定量データ以外は全て定性情報ということになる。日本の企業体質からみれば、経験則、推定、意見、想像といったものは、「個人の意見」ということで排斥されがちだが、優れた経営者あるいは管理者というものは、これらの6つの情報を均等かつ十二分に活用できる資質をもたねばならないとされる。この点からみれば、判断の場においては、実際には定量情報のウェイトは極めて低いということになる。金融マーケティングの現場でも、定量情報至上主義からの脱皮が求められるところだ。
●定性情報の分析手法
顧客調査を行った場合でも、定量的な手法と定性的な手法を併用する形が望ましい。何故なら定性手法の併用により、次のような点が明らかとなるからだ。
・顧客の生の意見から自社の問題点を象徴するキーワードが出てくる
・ユーザーのものの見方や表現がわかる
・定量調査で浮かび上がった問題点をより完全な形で定義することができる
・問題の広がり、範囲がわかる
・定量調査での「特にない」「不満はない」の内容がわかる
だがこうした分析はかなり属人的なスキルが要求され、それなりのトレーニングが必要である。
こうしたトレーニングにはいくつかの方法がある。最も基本的な形はKJ法、特性要因図(フィッシュボーン)といった手法で、定性情報の整理を行う方法だ。
また基礎的な訓練としてツリー図を描くことも重要である。ツリー図とは、問題の所在と、その優先順位を洗い出し、整理する手法で、デシジョンツリー、イシューツリー等に分けることもある。優れた定性情報分析者とは結果的にはこのツリー図の作成に優れた人と言い換えても言い過ぎではない。
最近ではこうした定性情報をいかにコンピュータで分析するかが1つの焦点で、様々なアプローチが見られるが、実際にはそれを使いこなす、あるいは結果を読み込むのにかなりの資質が必要で、結局は定性情報の分析力に優れたマーケターの存在が不可欠である。
金融サービスの顧客接点の現場でも、様々な定性情報が存在する。損保であるなら
・直接本社に届く顧客クレーム、顧客意見
・代理店や営業社員が入手する顧客の生の意見
・商品開発の現場でのグループインタビューや意見収集
・モニター等から得られる情報
等があるだろう。だが現実には、他業界に比べ、
・クレーム等は「問題処理」の姿勢が強く、開発業務、判断業務に活かされる仕組みになっていない
・体系的、横断的に顧客ニーズ、不満をくみ取る手法が存在しない(例えば顧客満足度調査、あるいは不満足度調査はこの唯一の手法である)。
・定量分析マーケターさえ人材不足であるのに加え、定性情報分析に優れた人材が育っていない
等の問題点が存在している。 |