金融サービスのマーケティング

Viral Marketingを考える

保険毎日新聞:00.08(C2−30)


マーケティングの世界にも「拡大法則」というものがある。典型的な事例は○○マーケティングという新たな名称を開発することだ。これでしばらくはこのジャンルの本が売れ、セミナーが潤う。
 古くはターゲットマーケティング、データベースマーケティング、リレーションシップマーケティング・・。目新しいものでは、パミッションマーケティングなどがある。この「○○マーケティング商法」のほとんどは本稿で紹介してきたような気がするが、今回は
ウィルス性マーケティング(viral marketing)というのを紹介しよう。



 これはネットの世界で流行ってきたものだ。強力なユーザーの口コミ伝播力を利用する体制を整えること。これをバイラル・マーケティングと呼ぶことがある。要するに口コミ利用だ。事実これを利用して成功した事例が沢山ある。1人の人が感激すると、それを2人に伝え、さらにそれがネズミ算式に増加するというわけだ。リアルコマースの世界でも、口コミは重要なプロモーション手段、と位置づけられてきた。だがネットの世界は伝播力が異なる。今日1人が伝えると、翌日には数万人が知っている、といったことが起こりかねない。

●デジタル口コミの役割とは

 ネットの世界では、まずAwareness(存在の認知)ということが最大の課題である。とにかく知ってもらわないことには話にならない。このアウェアネスの確保に無茶苦茶金がかかるようになってきた。オフラインの広告投資が不可欠なのだ。だが最大にして最良のプロモーション手段は、「デジタル口コミ」である。多くの日本の優良ECサイトはこれまでのところデジタル口コミを基盤として成長してきた。要するに「あれはいいよ」という顧客の評判がネット中に伝わるということなのだ。ただここには限界があって、アウェアネスの確保はもはやネッとの世界だけに限らなくなってきたのだ。先行的に顧客を確保するためには、オフラインの世界の知名度も高めねばならない。日本のECも今、このステップにさしかかろうとしている。

 一方、ネットにはコンバージョン(転換)という考え方がある。多くは来店者を購買者に転換させる比率、といった意味で使われる。この転換率は通常は2%程度だ。アマゾンのような優良店で8%位と言われている。このコンバージョン率を高めることが成功のヒケツなのだが、ネット特有の考え方がある。つまり買わないで帰ってしまった98%の人の満足度を高めるということだ。ここがリアルコマースの世界とは異なるところである。この98%の人の満足度を高め、「あの店はいいよ」と言ってもらうこと。これが成功の方程式となるというわけだ。ネットならではのビジネスの考え方である。

 もちろんリテンション〔顧客維持)というステップも当然ある。ここはリアルコマースと共通で、全体の8割の利益を生み出す2割の優良客をいかに作り出すか、ということがポイントになる。そしてこの優良客は、他人に対する影響力が大きく、口コミ効果が大きいというのが定説である。この効果がネットではさらに増幅される、というわけだ。

●バイラルマーケティングの中身

 バイラルマーケティングが口コミの伝播力を基盤としていることはこれでおわかりだろうが、手法的には、様々なものがある。プロモーションでは、受け取ると誰かに送りたくなるグリーティングカードみたいなものが流行っているし、また「これをお友達に伝える」という欄を商品欄に設けることは定番メニューの1つになっている。実際に伝えると、伝えた友人ともどもポイントがもらえる仕組みもある。システムとしては色々有るが、基本は「これって、いいじゃない!」と思ってもらうことがミソで、そのような印象を与えれば、必ず誰かに伝えたくなる、ということなのだ。これがウィルスと呼ばれるゆえんで、次々に伝わっていくということなのである。

●顧客間インターラクションの存在

 顧客を通じたこうしたコミュニケーションや情報伝播の形を「顧客間インターラクション」という視点から見ることも有る。顧客間インターラクションとは、顧客の間を伝わっていく情報や評価が、そのビジネスの成否や顧客満足を規定するという、ことを示している。この顧客間インターラクションをいかに上手く活用するかが、ネットビジネスのヒケツというわけだ。実際にネットでは「顧客の声」をコンテンツに盛り込むことが当たり前になっている。1つの商品に対する実際のユーザーの声や評価を生の意見として掲載するのだ。また顧客のつけた評価(レイティング)や、実際の売上げ順位が同様の役割を果たすこともある。
 こうした活用法もある一方で、顧客の声に対する感度が悪く、対応を誤るようなケースでは、逆にCSは低下し、成果もあがらない、ということになる。ネットビジネスが壮絶な顧客志向の戦いである、というのはもはや常識だが、その背景にはこうした理由もある。
 さて保険業界だが、リアルコマースの形で見るかぎり、バイラルマーケティングの要素はまだまだ少ないようだ。確かに保険の選定には口コミ要素は大きく関わっているが、それをシステム的に利用する形は見受けられない。またネット以外の場でも「顧客間インターラクション」は様々に発生しているはずだが、それに対する感度は良いとは言えないのが実情だろう。

 自社のビジネスにおいて、それがオンラインであろうと、オフラインであろうと、バイラルマーケティングの活用可能性があるかどうかは点検してみる必要があろだろう。
 



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