デジタルコラム

女性のパソコンニーズ開発法

プリンティングインフォメーション(98.10)


●パソコンブームも一段落で業界は売上の低下傾向に青くなっている。折角のWindows98も今1つ盛り上がらない。これは当たり前で、大体パソコンを動かす基本ソフトみたいな話である。パソコンの魅力を伝えるにはイマイチ説得力がない。



 インターネットはいよいよユーザー人口1千万人に到達したらしいが、まだ男性中心の世界である。女性比率はどのような調査を見ても2割弱程度である。女性比率が半数に達しているアメリカとの違いが目立つ。エレクトロニックコマースなどと偉そうなことを言っても、本質はネット通販である。通販好きの女性がマーケットに入ってこないと伸びる市場も伸びないのだ。
 そこで女性を始めとするビギナーをパソコンの世界にいかに引き込むかということが大問題となっている。パソコンメーカー系のインターネット接続業者の多くは、機械の購入に伴い、当初の設置や設定を代行してくれるサービスに乗りだした。 これはこれで有効だと思うが、問題は何のために買うのか、という根本的な疑問が残る。

●女性のパソコンニーズ
 そこでビギナーの代表例でもある女性のパソコンニーズを上げてみよう。
 まず上がってくるのが「Tシャツ」である。Tシャツが何でパソコン需要と関係しているのかというともうお分かりだろう。パソコンとカラープリンター、専用のアイロンプリント用紙、それにデジタルカメラを使えば、オリジナルのTシャツが簡単に作れる。
デジカメで子供の写真を撮りパソコンに取り込む。適当に加工して専用用紙に打ちだしてアイロンを当てれば、立派なオリジナルTシャツが出来上がる。こう書くと難しいようだが、実際は子供でも出来る簡単さだ。
 友人のお母さんは近所や親戚一同のTシャツ政策を請け負い、ちょっとした「パソコン博士」とあがめたてまつられている。
従来この種のオリジナル品の作成はかなり値が張るものであったのだ。店に頼めば数千円はする。それが今では数百円で作成可能となったのだ(ちなみにTシャツ自体もアメリカ製の立派なものが3百円程度で入手できる)。価格に敏感な女性にはこれがウケている。
こうしたオリジナル品の作成といったコンセプトをちと難しく表現すると「カスタマイズ」あるいは「パーソナル化」といったところで、昨今のマーケティング界では重要なコンセプトである。

 さて女性のパソコンニーズの2番目は「省スペース化」である。これがまた愉快である。「パソコンなんてウチではいらないわ」と広言していたお母さんたちが飛びついている。
 かってはどこの家庭でも百科事典が居間に飾ってあったものだ。子供の教育に役立ちますなどと騙され、泣く泣く月賦で購入したものである。結局大して役には立たず、子供は漫画の方を好み、情報は古くなり、かといって捨てるには捨てられず、この場所ふさぎの代物は家庭内の邪魔者として扱われていたのだ。
 パソコン及びCDROM百科事典の登場はこの事情を一変させた。音や画像をふんだんに駆使して、紙の事典に比べ数倍も楽しい商品に仕上がっており、子供がただ眺めていても飽きさせない。しかも手のひらサイズである。お母さん達は喜んだ。辞書、電話帳といった場所ふさぎのものが軒並みCDROM化されていると知り、家庭内の省スペース化にはげんでいる。大体女性は実利的だから、目に見える役に立たなければモノは購入しないのだ。

 さて女性のパソコンニーズの3番目は「一旗揚げる」である。順位としては実はこれが1位であるかもしれないのだ。
 男の40代は最も忙しい時期である。これに対して女性の40代はリスターティングの時期である。子供の手は離れ、旦那はちっとも家に帰ってこない。そこで彼女達はモンモンとするわけだ。「このままでいいのかしら・・・。」これをたそがれ不安と呼ぶ。人生80年の折り返し時期に突入し、お母さん達は自分自身の人生に疑問を持つのである。大概の旦那は自分の妻がこんなすごい不安を持っていることを理解していない。
 このたそがれ不安はパソコンにより解消することができる。
 自分のために人生を再設計したいと考える女性たちは自分のことをまず考える。ここで出てくるのが「一旗揚げたい」なのだ。インターネットショップで手作りのビスケットを販売し、金持ちになった米国女性の話などをしてあげると目をらんらんと輝かせている。これ以外にもボランティア活動をしたい、仲間を作りたいといったニーズがある。
 女性のニーズは様変わりしている。昔は百貨店巡りをした人は今では個人輸入の方が知的プロセスが刺激されるという。かっての仲間作りの代表PTAはすっかり敬遠され、子供の成績やだんなの給料がわからないような仲間を作りたいという。
 カルチャーセンターやスポーツクラブでの暇つぶしより、何かのNGOにでも参加して社会貢献したいという。
 こうしたニーズにパソコンとそれを介したネットワークはうってつけである。仲間づくりにもよし。一旗揚げるにもよし。40代位のオバサンにパソコンを勧めるのは意外と簡単である。
後はビギナーにも優しい機械とサポートが必要なだけである。

 さてメーカー側であるが、どうもニーズの喚起にはあまり想像力が働かないらしい。ビギナーには年賀状ソフトや家計簿ソフトなどと相変わらず寝言を言っている。だが敵もさるもの。こうしたフレーズには目もくれない。
 大体メーカーは視点がずれている。パソコンのファミリー需要開発という会議に出たことが有るが、出る意見皆家族団欒をイメージしたものばかり。実態を理解していない。
 家庭内のパソコン需要とは実は、家庭内の精神的疎外感を解消することに求められる。お母さんに相手にされなくなった定年後のお父さんが自分だけの仲間を求める。リスターティング時期にさしかかったお母さんが、自己実現を求める。
 こうした疎外感を解消する道具としてパソコンはうってつけである。ビギナー市場開発に向けてのコンセプトとは「疎外感解消」なのだ。そこでのパソコンの役割とはネットワークである。

 さて話は数年前に飛ぶ。とある喫茶店で同僚風のオジサンが2人で話をしていた。
「パソコンを買ってパソコン通信に入ったんだけど、メール送る相手がいないんだ。お前もパソコン買って相手になってくれよ」
「それはいいけど、毎日顔を突きあわせているのに、何をメールするんだ?」
「・・・・・・・」
パソコンビギナー市場開発の男性版では仲間もセットしてネットワークづくりを考えた方がよさそうである。


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